超高精細CTなど次世代イメージングを追究する第19回CTサミット開催
2015-7-27
新たに会場となった
日本教育会館一ツ橋ホール
第19回CTサミット〔共催:CTサミット/第一三共(株),協力:インナービジョン〕が,2015年7月25日(土),日本教育会館一ツ橋ホール(東京都千代田区)を会場に開催された。東京都内での定置開催となって3回目となる今回は,前回までの笹川記念会館から会場を移した。当番世話人は,梁川範幸氏(東千葉メディカルセンター)。テーマには,「Exploration of next generation imaging techniques─次世代イメージングへの追究」が掲げられた。
開会に先立ち挨拶した代表世話人の辻岡勝美氏は,CTサミットはCTが大好きな人たちが新しいことに取り組み,その情報を共有する場であると,会の意義を説明。今回も興味深い発表が多いので,最後まで楽しんでほしいと述べた。
この辻岡氏の言葉の通り,今回のサミットでも新しい研究や技術,取り組みをテーマにしたプログラムが構成された。午前中には,ニューベーシックセッションが3題,午後からはランチョンセミナーを挟んで,ニューチャレンジセッションI(次世代へつなぐ最新臨床研究)が4題,特別講演1題,ニューチャレンジセッションII(次世代CT画像への探求)が5題用意された。さらに,ニューチャレンジセッションIIでは,プログラムには記載のなかった特別講演もサプライズで行われた。
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ニューベーシックセッションでは,平野 透氏(札幌医科大学医学部附属病院),大沢一彰氏(済生会中和病院)が座長を務めた。このセッションでは,2010年に日本放射線技術学会が発行した『X線CT撮影における標準化~ガイドライン GuLACTIC』が2015年に改訂されたことに伴い,その内容などが報告された。1番目に登壇した高木 卓氏(千葉市立海浜病院)は,改訂班の班長を務めた。高木氏は,GuLACTICの改訂のコンセプトとして,「エビデンスレベルの高い撮影プロトコルの構築」だと説明。そのため,各種の診断・診療ガイドラインに記載されたCT検査に関する内容との整合性を図ることに注力したと述べた。なお,今回の改訂に当たり,GuLACTICは,「GALACTIC(Guideline for ALl About CT exams: Imaging Concept)」へと名称が変更された。次いで登壇した吉川秀司氏(大阪医科大学附属病院)は,「エビデンスに基づいたCT撮影技術」をテーマに,GALACTICにおける体幹部領域でのCT-AECの設定方法,造影剤投与量・注入方法とbolus trackingの設定方法について解説した。3番目には,西池成章氏(りんくう総合医療センター)がGALACTICの救急撮影領域に関する改訂内容を報告した。救急撮影領域は,新たに「頭部・顔面外傷」「頸部外傷」「胸部・腹部外傷」「外傷全身」に分けられており,西池氏は,これらの撮影プロトコールを紹介した。
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この後,ランチョンセミナーが行われた。辻岡氏と石風呂 実氏(広島大学病院)を座長に,GEヘルスケア・ジャパン(株),(株)日立製作所,(株)フィリップスエレクトロニクスジャパン,シーメンス・ジャパン(株),東芝メディカルシステムズ(株)の担当者が最新技術を解説した。
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休憩を挟んで行われたニューチャレンジセッションI(次世代へつなぐ最新臨床研究)では,小川正人氏(産業医科大学病院),村上克彦氏(福島県立医科大学病院)が座長を務めた。最初に,井野賢司氏(東京大学医学部附属病院)が,「3Dラボの運用と臨床画像への取り組み」と題して発表した。井野氏は,同院放射線部に設けられたイメージラボの役割を説明した上で,3D画像作成の実績を紹介。技術の進歩などによりCT検査と画像解析の件数が増加傾向にあると述べた。また,呼吸器外科と取り組んでいるVAL-MAP法について解説した。次いで,「腹部領域における仮想単色X線画像と物質弁別画像の有用性」をテーマに,黒木英郁氏(久留米大学病院)が発表した。黒木氏はGE社製装置によるdual energy CTでの仮想単色X線画像と物質弁別画像について解説し,診断に有用な情報を提供するだけでなく,造影剤量の低減など被検者の負担を軽減する可能性があると述べた。3番目の発表では,久冨庄平氏(山口大学医学部附属病院)が登壇した。発表テーマは「胸部領域のDual Energy CT」。久冨氏は,シーメンス社製装置での急性肺血栓塞栓症の評価について解説し,dual energy CTのアプリケーションである“LungPBV”を有用性を示した。さらに,このセッション最後の発表では,能登義幸氏(新潟大学医歯学総合病院)が登壇した。能登氏は,「Iterative Model-based Reconstruction(IMR)の臨床利用とその可能性」をテーマに,フィリップス社の被ばく低減技術である“IMR”の物理評価や,同院での運用方法などを解説した上で,症例画像を供覧した。
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この後,梁川氏が座長を務め,森 一生氏(東北大学大学院教授)による特別講演が行われた。テーマは,「CTにおける画質の物理指標について」。森氏はイントロダクションとして,物理指標と実際の画質は異なると述べた上で,解像力と雑音の問題などを説明した。また,非線形画像の問題点なども解説した。
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続く,ニューチャレンジセッションIIでは,「次世代CT画像への探求」として「超高精細CTの開発と臨床評価」をテーマに,国立がん研究センターなどが開発に取り組んだ超高精細CT(QDCT)に関する発表が行われた。座長は,宮下宗治氏(耳鼻咽喉科麻生病院)。まず,中屋良宏氏(静岡県立静岡がんセンター)が,「0.25mm×128列の超高精細CTの空間分解能評価」と題して,2001年に開発された超高精細CTの1号機や2013年に開発された5号機の特徴などを説明し,物理評価結果を解説した。次いで登壇した長澤宏文氏(国立がん研究センター中央病院)は,「胸部領域における末梢血管や細気管支の描出能評価」をテーマに,模擬気管支やGGO周辺の末梢血管,細気管支の描出結果を報告した。長澤氏は,超高精細CTの画像を供覧した上で,従来のCTを大幅に上回る画質であるとまとめた。3番目には,野村恵一氏(国立がん研究センター東病院)が,「胸部CT撮影の被ばく線量の検討」と題し発表した。野村氏は,超高精細CT5号機では,従来のCTと同等以下の線量で超高精細な画像が得られているというシミュレーション結果を示した。4番目に登壇した鈴木雅裕氏(国立がん研究センター中央病院)は,「微細脳血管描出能に関する検討」をテーマに発表した。鈴木氏は,脳神経外科医による視覚評価試験の結果を示し,従来のCTや3T MRIと比較しても良好な画像が得られており,手術支援にも有用な情報を提供できると述べた。5番目には,石原敏裕氏(国立病院機構埼玉病院)が登壇。「冠動脈描出評価」をテーマに発表した。石原氏は,超高精細CTにより狭窄度診断,ステントの内腔評価,治療方針決定などにおいて,心臓カテーテル検査を上回る情報を提供できる可能性があると説明した。
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すべての発表が終わった後,超高精細CTに関するサプライズゲストとして,片田和広氏(藤田保健衛生大学)が紹介された。片田氏は,「超高精細CT―初期経験とその位置付け―」と題し,同大学に設置された超高精細CTの6号機の使用経験を報告し,空間分解能向上により,より細かな構造を見ることができ,パーシャル・ボリューム・エフェクトを減少させ,見にくかったものがはっきり見えるというメリットがあると説明した。さらに,症例画像を供覧した上で,現状はヘリカルスキャンのため撮影時間が長いこと,緊急・小児・肥満者への適応が不十分であること,データの膨大化によりネットワークやストレージなどの技術進歩も必要であることなどを課題に挙げた。その上で片田氏は,超高精細CTの威力は圧倒的であり,その画像を目にすれば後戻りできないとまとめた。
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超高精細CTのような最先端技術が紹介されたこともあり,今回のサミットには587人が参加。最後まで席を立つ参加者もほとんどおらず,充実した会となった。次回,記念すべき20回目のCTサミットは,2016年7月9日(土)に開催される。会場は,同じく日本教育会館一ツ橋ホールを予定しており,当番世話人は平野氏が務める。平野氏は,20回の節目となるCTサミットについて,新しいことを追究していく場としたいと抱負を述べている。
協賛企業(順不同)
アクロバイオ,アミン/ザイオソフト,AZE,根本杏林堂,フィリップスエレクトロニクスジャパン,GEヘルスケア・ジャパン,第一三共,東芝メディカルシステムズ
●機器展示
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金賞
X線CTにおける「らせん穴あきファントム」を用いたスライス厚測定
(愛知県)藤田保健衛生大学・鹿山清太郎氏ほか
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銀賞
吸収体を使用したDual Energy Scanによる画質特性の基礎的検討
(宮崎県)宮崎県立延岡病院・藤本一真氏ほか
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銅賞
Ring ROI法を用いた不均一CT値領域の新しい体積算出法の提案
(愛知県)藤田保健衛生大学・伊藤雄也氏ほか
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デザイン賞
線質硬化補正法の違いによる画像への影響
産業医科大学病院・北岡亮太氏ほか
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●問い合わせ先
第19回CTサミット
http://ctsummit.jp
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