フィリップスが「Parallel Imaging Symposium」を開催
2014-12-16
多くの参加者が集まった会場
(株)フィリップスエレクトロニクスジャパン(以下,フィリップス)は2014年12月13日(土),ベルサール八重洲(東京都中央区)にて「Parallel Imaging Symposium」を開催した。「新たな診療を目指したMRIアプローチ」をテーマに,2部5題の講演が行われた。代表世話人を中島康雄氏(聖マリアンナ医科大学)が務め,参加者は約150名に上った。
高いSNRで高速撮像が可能なParallel Imagingは,2000年頃から使用され始めた撮像法で,フィリップスMRIではいち早く“SENSE”の名称で実装され,広く用いられている。Parallel Imaging Symposiumは,2002年に第1回が開催されて以降,回が重ねられてきた。
開会の挨拶に立った中島氏は,第1回のParallel Imaging Symposiumを振り返り,「当時は,他メーカーのユーザーばかりでなく,他メーカーの装置・アプリケーションの担当者も多く参加し,活発に意見が交わされた。Parallel Imagingは,現在はルーチンで用いられる一般的な撮像法だが,この会から発展し,急速に広がった非常にエポックメーキングな技術である」と述べ,今回テーマとなっている最新テクノロジーについての発表,ディスカッションを大いに楽しんでほしいと参加者に呼びかけた。
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シンポジウムは2部に分かれて行われ,第一部は中島氏を座長に3題の講演が行われた。
第1席は,中西光広氏(札幌医科大学)が,「Ingenia 3.0T/1.5T 使用経験」と題し,2014年1月に札幌医科大学附属病院に導入されたIngenia 3.0TとIngenia 1.5Tについて,装置・アプリケーションの特長や使用経験について報告した。中西氏は,Ingeniaは,最適な受信コイルエレメントが自動選択される“Smart Select”や,改良されたパラレルイメージング“ds SENSE”,ds SENSEを利用した局所撮像法“ds Zoom”などにより,高画質・高スループットを両立している装置であると述べた。また,アーチファクトを低減する“LIPO”(3.0T)や高SNRのASL画像を取得する“pCASL”などの最新アプリケーションについて,その原理や臨床画像を紹介した。さらに,ds-32ch head coilについて,従来使用していた15ch coilと比べて分解能が上がり,より微細な構造の描出が可能になっていることを画像を提示しつつ紹介した。
第2席は,天野康雄氏(日本医科大学)が「T1,T2 mappingで評価する心筋障害〜LGEを補い,LGEを超えるか?〜」をテーマに講演した。臨床で用いられている遅延造影(LGE)は心筋評価に有用であるが,いくつか課題があると述べた天野氏は,MOLLI(modified Look-Locker inversion recovery)法を用いることで心筋のT1 mappingを得ることができ,びまん性心筋障害の定量的評価が可能なこと,また,T2 mappingでは心筋浮腫の評価や,正常心筋と浮腫・炎症の鑑別が可能なことを説明。心筋障害を定量的に評価できるT1,T2 mappingはLGEを補うことができるとし,さらには対象疾患や評価基準を選択することでLGEを超える可能性がある手法であると報告した。なお,フィリップスからはT1,T2 mappingのアプリケーションが2015年にリリースされる予定である。
第3席は,新本 弘氏(防衛医科大学校)が「統計学モデルによる前立腺拡散MRI」と題して講演した。拡散MRIにおける統計学的モデルによるアプローチとは,ボクセル内のADCの分布を知ることであると述べた新本氏は,実際のADC分布を求めるのは難しいことから,ADCの分布モデルの測定データと高いカーブフィッティングを示すガンマ分布を用いる方法について解説し,前立腺拡散MRIにおける検討を説明。統計学的モデルにより,拡散データと組織学的所見を関連づけて理解することが可能になると締めくくった。
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休憩を挟んで行われた第二部は,井田正博氏(荏原病院)が座長を務め,2題の講演が行われた。
はじめに,平井俊範氏(熊本大学)が「脳神経領域におけるPADRE tissue enhanced imageとCINEMAの臨床応用」をテーマに発表した。まず,熊本大学で開発されたPADRE(位相差強調画像)について述べ,脳組織においてはより微細な構造を観察できることや,脳アミロイド斑を描出できることからアルツハイマー病を定性評価できる可能性があることを紹介した。また,ASL-MRAが可能なCINEMA法については,FAIRとpCASLを用いた画像を紹介するとともに,臨床応用として硬膜動静脈瘻(DAVF)などの症例を取り上げて画像を供覧した。ASL-MRAはDSAに空間分解能や時間分解能は及ばないものの,非常に低侵襲に頭蓋内血管病変の概略を評価可能であるとし,現時点ではDSAなどにつなげるためのスクリーニングや,治療後のフォローアップとして有用であると述べた。
次に,長畑守雄氏(山形市立病院済生館)が「脳血管障害の診療におけるMSDE法とtASL法の活用」と題して講演。長畑氏ははじめに,造影後でも血管壁を観察できる利点を持つMSDE法について,囊状動脈瘤を対象に行った検討結果を報告し,破裂動脈瘤で高率に壁の増強効果を得られたことから,治療戦略の決定や破裂点の特定に有用であるとした。また,脳血管の灌流域を表示できるtASL法について,マルチフェーズ,マルチスライスのデータから各時相の増加ピクセルを累積したマップを作成し(Accumulated map),さらに血管灌流域の面積を数値化(Perfusion-Territory Area:%PT-A)することで客観的評価を行う方法を解説した。
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すべての講演が終了後,マーケティング本部MRビジネスマネージャーの門原 寛氏により,「RSNA 2014最新情報」として,11月30日から12月5日にかけて開催されたRSNA 2014におけるフィリップスMRIのトピックスが報告された。RSNAで発表された静音化技術と映像・音楽(音声)により患者の検査環境を向上させる「In-Bore experience」や最新アプリケーションに加え,高速化・定量化・独自技術の視点で開発されている先進技術を紹介。加えて,MRIガイド下で放射線治療を行うMR therapyをユトレヒト大学とエレクタ社とともに共同開発中であることも報告した(RSNA 2014取材報告参照 http://www.innervision.co.jp/report/rsna/2014/products/philips_mri
)。
最後にヘルスケア事業部事業部長の滝沢一浩氏が閉会の挨拶に立ち,フィリップスは長年,コングロマリットとして事業を行ってきたが,2014年9月のライティング事業分社化によりヘルスケアに集中して事業を展開していくことになったことを報告し,今後はMRIを中心に据えて研究開発を進めたいと述べ,シンポジウム参加への感謝を表してイベントを締めくくった。
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●問い合わせ先
(株)フィリップス エレクトロニクス ジャパン
ヘルスケア事業部 お客様窓口
TEL 0120-556-494
www.philips.co.jp/healthcare
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