展示会に見るCT技術の変遷(ITEM in JRC 国際医用画像総合展)(富士フイルムヘルスケア)
●2005
2003年のデビューから3年が経過したマルチスライスCT「ROBUSTO」。2004年には大学病院でのルーチン,救急で広く使用され始め,評価が高まっている。今回は“進化する「ROBUSTO」”をテーマに,アプリケーションの新製品を紹介。穿刺支援用「guidesHOT」や,検診アプリケーションとして生活習慣病などで重要な内臓脂肪などを測定する「fatPointer」(体脂肪測定)・肺気腫などの測定が簡単にできる「riskPointer」(肺野の低吸収性領域観察)などを搭載した。
●2007
●施設にあわせたオーダーメイドが可能なマルチスライスCT「ECLOS」
CTでは,2007年6月から発売される4/8/16スライスの全身用X線CT診断装置「ECLOS」が展示された。「ECLOS」は,被検者,医師,技師,経営者,すべてのユーザーが満足できるCTをめざして,"Multi-Fit CT"をコンセプトに掲げた製品。「Patient Friendly」(患者様に優しい),「Easy Operation」(操作が簡単),「Custom-made」(オーダーメイド)を特長としている。なかでも,施設の検査数,検査内容,設置スペースなど個別のニーズに合わせて装置のカスタマイズが可能な「Custom-made」は大きな特徴である。3.5MHUと5.0MHUの2種類のX線管球,4,8,16の3種類のスライス数,ショートとロングの2種類の寝台,ネットワークの構築を最適な組み合わせで選択することができる。また,導入後に施設の状況変化に合わせてアップグレードが可能。このほか,被検者の体厚や部位に応じて管電流を制御する「Adaptive mA」や低線量撮影時の画像ノイズを効果的に除去する「Adaptive Filter 」を搭載し,被検者の被曝低減を実現。また,視覚的にわかりやすい色分け表示をする「fatPointer」や「riskPointer」により,インフォームドコンセントや検診を支援する。さらに被検者セッティングから撮影・解析までの一連の操作を簡素化し,被検者に対してだけでなく,操作する医師や技師にも優しい装置となっている。
(取材協力:北野 仁さん CT・MR営業本部主任)
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●2008
● あらゆるユーザーにフィットするMDCT「ECLOS」
“Multi-Fit CT”をコンセプトに開発された「ECLOS」は,各医療機関の検査数や検査内容,設置スペースなどに応じたカスタマイズの自由度の高さが大きな特長となっている。近年,心臓CT検査は16列から64列MDCTへと移行するなか,心臓CT検査に必要なハイスペックな機能は極力カットし,臨床での使いやすさと検査効率を追究している。検出器列数は4,8,16列の3種類があるほか,3.5HUと5.0HUの2種類のX線管,ロングテーブルとスタンダードテーブル,ネットワーク構成を自由に選ぶことができ,導入後の変更やアップグレードも可能で,昨年6月の発売から今年3月末までの納入実績は,全世界で約200台を誇る。
このECLOSに今回,CT検診アプリケーション“Pointerシリーズ”の2つの機能が新たに追加された。“wallPointer”は肋骨よりも内側の特に胸膜部分の高吸収領域を抽出する機能であり,抽出箇所を2D/3D画像上でカラーマッピングすることにより,その分布状況を容易に観察することができる。また,“osteoPointer”は,頸椎および胸椎の海綿骨のSV値(Sparse Value)を算出する機能であり,脊椎のRaySum画像上にSV値を表示して解析することにより,脊椎の脆弱性を推定するツールとして期待されている。
●2009
● 患者さんへのやさしさを追求した64列マルチスライスCT「SCENARIA」を発表
やさしさと使いやすさを追求した64列マルチスライスCT「SCENARIA」を発表した。白を基調とした装置は,ガントリのシルバーリングを境として、リング外側にセレーナホワイト,患者さんが検査中に目にするリング内側は清潔感のあるセレーナホワイトライトと異なる色を採用するなど,外観のデザインから患者さんへのやさしさが追求されている。ガントリは,開口径75cm,奥行きが88cmで大開口径かつ薄型であるため,患者さんに開放感を与え,検査に対する不安感を取り除く効果が期待できる。また,操作者にとっては患者さんにアクセスしやすいというメリットがある。さらに,寝台には47.5cmの幅広の天板を使用しているため,体格の大きな患者さんや高齢の患者さんなども安心して検査を受けることができる。寝台のマットの両端には,内側に折りたたまれたフラップと呼ばれるマット部分があり,必要に応じて引き出して患者さんの体全体を包み込むことも可能である。このほか,ガントリ前面上部に多目的液晶モニタを搭載。スキャナと寝台の位置情報を表示するだけでなく,検査の流れを説明するガイダンス,手話アニメーションによる聴覚障害者へのガイダンス,息止め練習機能など,患者さんとのコミュニケーションツールとして役立つ機能も搭載している。
また,コンソールに横長の24型ワイドモニタを初めて採用し,患者の情報や画像,操作ボタンを効率良く表示することが可能になった。さらに,キーボードとCT検査で使用するスピーカーやマイク,テーブル移動のボタンなどを一体化してコンパクトにまとめたことにより,コンソール周りのスペースを確保した。
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●2010
● オープンデザインと高速・高画質スキャンの64列CT「SCENARIA(シナリア)」
CTコーナーでは,昨年発表された64列マルチスライスCT「SCENARIA(シナリア)」を展示した。SCENARIAは,日立初めての64列のマルチスライスCTということで,同社ならではの機能やアプリケーションの開発を進めており今夏の発売を予定している。特長のひとつは,パールホワイトとシルバーリングでの明るい概観とコンパクトなデザインだ。64列では最大の75㎝の開口径と47.5㎝の天板幅など開放感や安心感をもたらすオープンデザインで,安心で患者にやさしい検査を提供する。また,ガントリの正面中央に設けられたTouch Vision(多目的モニタ)は,10か国語による検査ガイダンスなどの機能のほか,小児用のアニマル表示や検査の際の患者確認のための患者情報の表示を可能にした。さらに,コンソールも24型ワイドモニタの1モニタで検査スタートボタンなどを統合した一体型キーボードでコンパクトになっている。
SCENARIAでは,1回転0.35秒で撮影するためビューレートが高く,心臓だけでなく全身を高速スキャンが可能で,広範囲で高精細な画像を得られる。体幹部で65㎝の範囲を約8秒で撮影できる。その他,二次元散乱コリメータ(2D-ASC)やCORE法(三次元画像再構成)などによる高い検査能力を提供する。また,同社がCTで開発してきたfatPointerやriskPointerなどの解析ソフトウェアにCT ColonoscopyやwallPointer(胸膜厚さ解析)などを新たに加えて充実を図っている。
同社では,心臓を特別な検査と位置づけるのではなく頭部,腹部などを含めた全身の高速で高画質の検査が可能な64列CTと位置づけて販売を展開していくという。
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●Spring of 2011
64列マルチスライスCT「SCENARIA」
● 新機能IntelliCenter
心臓だけでなく全身を0.35秒/回転で撮影できるSCENARIAが,新たにIntelliCenterを搭載しました。IntelliCenterとは,左右に最大80mm移動する寝台横スライド機構*とX線補償フィルタ切り替えを組み合わせた機能です。心臓撮影の例では,低被ばく用X線補償フィルタを用いてX線を関心領域に絞り,寝台横スライド機構によってX線が絞られた関心領域に心臓を位置決めします。心臓がスキャナの回転中心に来るので空間分解能の向上が期待でき,X線を絞ることによって被ばく低減も可能です。
*オプションです。
●2012
● 新しい心臓撮影技術と被ばく低減技術をアピール
CT装置は,0.35s/rotの高速回転と全身撮影が可能な64列マルチスライスCT「SCENARIA」が展示された。被ばく低減,高画質にこだわって開発された同装置だが,今回,新しい心臓撮影技術と被ばく低減技術を搭載し,さらなる進化を遂げている。
従来より搭載されていた,ノイズ低減,被ばく低減を可能にする逐次近似法を応用した“Intelli IP”が,統計学的処理の精度を向上させ,“Intelli IP(Advanced)”として搭載された。ノイズ低減レベルを7段階に変更可能で,約40~50%のノイズ低減効果を実現し,より低線量での撮影が期待できる。なお,真の逐次近似再構成を現在開発中で,実用化に向けソフトウエアとハードウエアの両面から演算時間の短縮に取り組んでいるという。
心臓撮影技術として,「SCENARIA」には従来から“IntelliCenter”を実装している。左右に各8cmスライドする寝台と専用のBow-tieフィルタを組み合わせることで,撮影対象である心臓をFOVの中心にセットし,心臓以外の周辺部への被ばくを最小限に抑える。そして今回,最新技術として“CardioConductor”と“CardioHarmony”が搭載された。CardioConductorは,息止め練習時の被検者の心拍変動から,心臓撮影時の再構成タイプやピッチなどを自動設定し,撮影時の作業効率を向上させる。また,CardioHarmonyは,心臓撮影後に,動きが最も少なく,診断や解析に適している心位相を自動で探索した上で再構成するため,作業時間を短縮することができる。
さらにCTエリアでは,異なる角度のCT画像を高速に切り替えて表示し,専用3D眼鏡を用いてステレオ視する画像表示機能「eXtation,3D Realizer」も実機展示された。三次元画像がより奥行き感のある画像となり,血管や腫瘍の前後の位置関係が把握しやすい。診断だけでなく,手術計画などにも活用できるように改良していくとのこと。
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●2013
● 128スライス対応となった64列CT「SCENARIA」を展示
CT装置は,64列128スライスCT「SCENARIA」が展示された。2010年に発売したSCENARIAは,昨2012年7月から128スライス対応にシステムをバージョンアップし,倍密度での画像再構成が可能となった。従来の64列装置を導入している施設でも,システムのバージョンアップで128スライス対応にすることが可能である。バージョンアップすることで,1mmや2mmといった高い空間分解能が求められる耳小骨などの撮影においても,高分解能の画像が期待できる。
左右に80mmずつ,計160mmの移動が可能な横スライド寝台は,心臓だけでなく肩などの撮影の際に,撮影中心により近づけることが可能となる。また,重症患者など自分で身体を動かすことができない患者であっても,横スライド機能を利用してベストポジションで撮影することができる。全身どの部位でも0.35sec/rotの高速撮影を可能とし,三次元画像再構成アルゴリズム“CORE法”の採用で,ハイピッチ撮影を実現。180mm/秒の撮影が可能で,胸腹部であれは3.8秒,胸部だけの場合は1.7〜1.8秒程度で撮影できる。
SCENARIAには,逐次近似法を応用した画像処理技術IntelliIPの第2世代となるIntelliIP(Advanced)を実装しており,低線量撮影時の画像ノイズを低減させることができ,被ばく線量を抑えた検査が可能となる。また,高周波強調フィルタ適用時のノイズを効果的に低減することができ,ステント内腔の評価などにおいて有用である。
昨年に続き展示された専用モニタと専用3D眼鏡でCT画像をステレオ視する,3D Realizer「eXtation」は,大腸内視鏡や気管支内視鏡の表示にも対応するようになった。
●2014
● コンパクト設計の新製品16列マルチスライス「Supria」をPR
「Supria」は,日本国内および,アジアや中東,南米などにおけるCT装置のボリュームゾーンである16列マルチスライスの市場に投入された新製品で,ITEM初展示となった。開口径は75cmと16列装置としてはトップクラスの広さを持ち,ガントリのコンパクトさも相まって,非常に開放感が感じられる。検査室の最小設置面積は12m2,ガントリ,寝台,操作卓の3ユニット構成の,省スペースデザインとなっている。撮影スピードは0.75sec/rot,スライス厚は最小0.625mmで,胸部のみであれば7〜8秒の息止めで撮影が可能。上位機種で開発された技術も標準搭載され,三次元画像再構成アルゴリズム“CORE法”によるアーチファクトの低減や,逐次近似応用再構成法“Intelli IP(Advanced)”によるノイズ低減が可能である。操作ボタンが少なく,文字が大きく表示される簡単操作モードも特長の1つである。導入しやすく,使いやすいCTとして市場に評価され,国内においては昨2013年9月の発売以後,わずか7か月で150台が導入されるに至っている。
上位機種としては,線量最適化のための機能が強化された64列128スライスCTの新バージョン「SCENARIA EX edition」が紹介された。AECとIntelli IP(Advanced)を連動させる変調モードを追加し,目標SDに対して従来より線量を低減した撮影が可能となっている。また,心臓撮影においても,照射する管電流の変調を最大2相まで設定できる“IntelliEC Cardiac”により,心拍が不安定な患者の撮影でも撮影ミスを低減させることができるようになっている。
コーナーの一角では,3Dモニタ「eXtation」が3Dプリンタで作成した臓器モデルと並べて展示され,eXtationを体験した来場者は,eXtationの3D画像が,実際の立体モデルと同じように見えると感嘆していた。
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●2015
● 国産CT40周年を記念するコンパクトな64列マルチスライスCT「Supria Grande」
日本国内におけるCTの歴史は,1975年に英国から輸入されたCTが設置第1号(東京女子医科大学)であるが,国産CTでは同年に日立が藤田保健衛生大学に納入した「CT-H」が第1号となる。CT-Hは,国産初のCTとして重要科学技術史資料(通称:未来技術遺産)にも登録されている。2015年は第1号機の納入から40年の記念すべき年となり,CTコーナーでは40年のCTの歩みを紹介するとともに,国産CT40周年を記念して1月に発売された64列マルチスライスCT「Supria Grande」が展示され,来場者の関心を集めた。
日立では,心臓検査を実施する病院向けに,64列マルチスライスCT「SCENARIA」を2010年に発売。また,オープン&コンパクトをコンセプトにした16列マルチスライスCT「Supria」を2013年に発売し,時とともに変化するニーズに応えてきた。そして今回発売したのが,SCENARIAの技術を継承し,Supriaと同じコンパクトガントリ,少ユニットのSupria Grandeである。開口径75cmのオープンガントリを持ちながら,幅2m,高さ1.85mとコンパクトな装置であり,ガントリ,テーブル,コンソールの3ユニットで構成される。50kVA電源にも対応でき,16列装置などを入れていたCT室にも設置可能で,より速く,高精細に撮影したいという施設の更新ニーズに応える。最小スライス厚0.625mmでルーチン検査が可能で,被検者の体型と目標SDに基づいて管電流を制御する“IntelliEC”やノイズ低減技術“Intelli IP”などの先進技術も搭載し,コンパクトなだけでなく,高画質・低侵襲な検査を実現する。16列から64列への入れ替え需要や,規模の大きい医療機関の2台,3台目の装置としての需要を見込んでいる。
●2016
● 12m2を下回る検査室に設置可能な16列,64列のSupriaシリーズをアピール
CTのエリアでは,患者,操作者,経営,環境に優しい最新の「Supria」シリーズをアピールした。Supriaシリーズは,2013年8月に16列マルチスライスCT「Supria」,2015年1月に64列マルチスライスCT「Supria Grande」,そして2015年11月にそれぞれをリニューアルした「Supria Advance」と「Supria Grande Advance」をリリースしており,すでに国内で600台,海外を合わせて900台を出荷している。Supriaシリーズは,75cmの大開口径ながらガントリは幅2m,高さ1.85mを下回り,ガントリ,寝台,操作卓の3ユニットで構成された小型設計が特長の装置。会場では3m×4mの検査室をイメージした木目調タイルの上にモックアップを設置し,コンパクトさを実感できるように展示した。Supria AdvanceとSupria Grande Advanceは,12m2を下回る検査室にも設置できるように寝台の撮影範囲の変更を可能にしている。また,新機能として待機電力を約30%低減するエコモードを搭載しており,経営と環境に優しい装置となっている。なお,検出器交換により16列から64列へのアップグレードにも対応可能だ。
海外での事例として,プロジェクションマッピングを使って検査室全体を演出する検査室ソリューションも紹介し,今後国内でのニーズがあれば検討していくという。
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●2017
● 128スライスへと進化し新機能を追加した「Supria Grande」をアピール
CTは,開口径75cmのガントリ,3ユニット構成,設置面積12m2のオープン&コンパクトな16列マルチスライスCT「Supria」と64列マルチスライスCT 「Supria Grande」が,最新ソフトウエアを搭載し,さまざまな新機能が追加されたことを紹介した。Fine Recon機能の搭載により,それぞれ16列/32スライス,64列/128スライスのシステムへと進化し,より多くの情報を得られるようになっている。
Supria Grandeは,「Speed」「Quality」「Comfort」の3つのテーマで展示された。Speedでは,全身を0.625mm厚で撮影でき,1回の息止めで体幹部を10秒以内で撮影できるスピードを有することから,高画質かつ短時間のCT検査を提供できることをアピール。また,電源をオンにしてから約4分半で検査を開始できる高速システム起動は,救急病院やクリニックから好評を得ている。
Qualityでは,アルゴリズムを改良したノイズ低減処理“Intelli IP RAPID”の実装により,画像演算時間が約半分となったことで実用性が向上し,ルーチン検査で高画質を取得できるようになった。また,新機能として“軌道同期スキャン”が搭載された。単純撮影と造影撮影を同一らせん軌道で行うことで,サブトラクション画像の位置ズレによるアーチファクトを低減し,明瞭な3D画像の取得が可能になっている。
Comfortでは,被検者,検査者,経営者にやさしい機能を紹介した。新しい機能としては,画像再構成中にボタンひとつで緊急患者の画像を優先的に再構成する“優先リコン”機能と,消費電力を最大55%低減する“Eco mode”が搭載された。Eco modeは,機器の動きを適切に制御するOn-time Standby機能と待機時消費電力を抑制するOff-time mode機能により省エネを実現し,病院経営に貢献する。また,Supriaシリーズが工場からの輸送に鉄道を積極利用することで,CO2排出量低減に貢献したとして,3月に国土交通省のエコレールマークを取得したことが紹介された。
SupriaとSupria Grandeは共通のコンパクトガントリを使用しているため,ユーザーのニーズに合わせて16列から64列へのアップブレードが可能となっている。Supriaシリーズは発売から3年半(2017年3月末時点)で,国内817台,全世界で1291台が導入されている。
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●2018
●逐次近似応用再構成機能IPVを実装したSCENARIA Viewを発表
SCENARIA Viewは,CT検査における課題を解決すべく,1)ルーチンで使用できる被ばく低減機能,2)高スループットやワークフローの改良,3)さまざまな患者対応(高齢・高体重)をコンセプトに開発された,最新の64列マルチスライスCTである。ブースでは,その特長を3つの“みえる”で紹介した。
まず,「低被ばくで“診える”」をキーワードに紹介されたのが,新開発の逐次近似応用再構成機能IPV(Iterative Progressive reconstruction with Visual modeling)である。これは,逐次近似再構成を応用したノイズ低減技術“IntelliIP(Advanced)”を進化させた技術で,X線一般撮影と同等の被ばく線量と自然な質感での画像表現をめざして開発された。オブジェクトモデルと統計学的モデルに,新たに周波数特性を踏まえた物理モデルを組み合わせ,繰り返し処理を行う手法により,FBPと比較して画像ノイズを最大90%低減,被ばくを最大83%低減,高コントラスト分解能と低コントラスト検出能が最大2倍というFull IRに迫る性能を,専用の処理ユニットなしで達成した。また,Full IRはFBPと比べるとテクスチャが崩れることが指摘されていたが,IPVでは低コントラスト帯のMTF劣化を抑制し,周波数特性をFBPに近づけることで,テクスチャの改善を実現した。撮影設定は,部位と強度(9段階)を選ぶだけと簡単で,ルーチン検査や検診にためらいなく使用できる。
2つ目の特長である「ワークフローが“視える”」は,検査工程の自動化や画像処理の高速化によりワークフローを改善し,被検者の入室から退室までを短時間化することをめざした。AI技術を応用した“AutoPose”機能によるスキャン範囲の自動設定,最大60枚/秒の画像再構成処理,また,後処理においてはMPR画像と3D画像を自動作成するといった機能により,検査時間を従来比で約30%短縮可能にする。
さらに,「やさしさが“見える”」では,被検者が快適に検査を受けられ,操作者の負担を軽減する機能やデザインが採用されている。まず,ガントリの開口径は,SCENARIAの750mmから800mmへと50mm拡大し開放感が高まった。これに合わせて,テーブルの横スライド機能も160mm(左右80mm)から200mmへと拡張し,セッティングが容易になっている。なお,開口径は広がったが,ガントリ自体の大きさはSCENARIAとほぼ変わらないことに加え,画像処理ユニットが省略されて,ガントリ,寝台,コンソールの3ユニット構成となったことで設置性が向上した。ガントリ前面に設けられた24インチタッチモニタ“Touch Vision”やブレスガイドは,使用できる言語に新たにアラビア語が加わり,全11か国語で被検者への検査説明や息止めガイドを表示する。操作系も使いやすさを追究し,操作ボタンをまとめた集中操作パネルをガントリ前面の左右に設置した。
SCENARIAの上位システムとして,撮影機能も強化している。金属アーチファクト低減技術“HiMAR”と“Dual Energy Scan”を搭載し,より臨床に有用な画像の提供を可能にしている。日立のDual Energyは,80kVと140kVの2つのエネルギーによる撮影で異なるX線吸収率の画像を得るもので,撮影方法は,同じ位置を2回ずつ撮影する方法と,同一のらせん軌道で撮影する“軌道同期スキャン”を用いて80kVと140kVを別々に撮影する方法がある。なお,解析はザイオソフト社,テラリコン社のワークステーションで可能である。このほか,テーブルを高速移動することで80mm範囲の頭部パーフュージョン撮影を可能にする“Shuttle Scan”も実装されている。
日本国内ではITEM 2018初日の4月13日に発売し,以後,中国・米国を除く海外では2018年第1四半期中,2019年度に米国,中国での発売を予定しており,3年で500台の販売目標を掲げている。
●2019
●逐次近似処理技術“IPV”と大開口径ボア搭載の「SCENARIA View」
CTは,昨年のITEM 2018でアンベールされた64列マルチスライスCT「SCENARIA View」と64列/128スライスCT「Supria Grande」のモックアップを展示した。このうちSCENARIA Viewは,逐次近似処理技術“IPV” (Iterative Progressive reconstruction with Visual modeling)が大きな特長で,FBPと比べ画像ノイズを最大90%低減,被ばくを最大83%低減,高コントラスト分解能と低コントラスト検出能が最大2倍という性能を実現している。Full IRで課題と言われている画像の質感(テクスチャ)についても,周波数特性をFBPに近づけることで改善されている。
また,高速化・自動化のソリューションSynergyDriveも実装し,被検者の入室から退室,画像処理までの一連の検査時間を短縮し,検査スループット向上に貢献する。AutoPose機能では,スキャノグラムから画像処理を行って撮影範囲の自動設定が可能で,操作者は設定された範囲を確認・調整するだけで,すぐに撮影に入ることができる。これにより,従来と比べ高い再現性と時間短縮が可能となっている。
さらに,ガントリは80cmの大開口径ボアを搭載しながら,コンパクト,かつ被検者に圧迫感を与えない滑らかな四角楕円デザインを採用。3ユニット構成で,日立CTの特長である高い設置性も確保している。ガントリ前面の24インチタッチモニタ“Touch Vision”では,11か国語表示,手話表示,また小児向けのアニメーション表示が可能で,適切で確実な検査の実施を支援する。開口径の拡大にあわせて,テーブルの横スライド機能も200mmへと拡大し,さらにポジショニングをしやすくなった。また,体格の大きい被検者の検査もしやすい点が高く評価されており,国内はもとより,ヨーロッパや中南米でも導入が進んでいる。
撮影機能としては,金属アーチファクト低減技術“HiMAR”や“Dual Energy Scan”を搭載。80kVと140kVの2つのエネルギーによる撮影で異なるX線吸収率の画像を得るDual Energy Scanは,同じ位置を2回ずつ撮影,または同一のらせん軌道で撮影する“軌道同期スキャン”の2種類の撮影法がある。ほかにも,テーブルの高速移動で80mm範囲の頭部パーフュージョン撮影を可能にする“Shuttle Scan”も実装している。
●2021
●心臓へのIPV適用など「SCENARIA View」の最新アップデートを紹介
CTは,64列128スライスCT「SCENARIA View」が新バージョン「phase 3」にアップデートしたことをアピールした。展示されたモックアップは,社名変更に伴って,寝台マットやガントリ脚部のカラーが,シックな富士フイルムカラーに変更された。SCENARIA Viewは,逐次近似処理技術“IPV(Iterative Progressive reconstruction with Visual modeling)”による「低線量と高画質の両立」,高速化・自動化のソリューション“SynergyDrive”による「検査効率の改善」,80cm開口径と横スライド寝台による「快適な検査」をコンセプトに開発された装置。今回リリースされたphase 3は,新設計のフルデジタル検出器の搭載により,「SCENARIA」と比べて電気ノイズの最大40%低減,消費電力の45%低減(Off-time mode機能で最大78%低減),信頼性の向上と30%の軽量化を実現している。また,IPVが進化し,新たに心臓にも適用可能になった。冠動脈CT へのIPV適用により,診断参考レベル(DRLs 2020)の半分程度の線量でも明瞭な画像を得ることができる。心臓CTにおいては,自由度の高い心電図同期連動AECである“IntelliEC Cardiac”や,寝台の横スライドと小視野用Bow-tieフィルタを組み合わせた“IntelliCenter”を併用することで,さらなる被ばくの低減と画質向上を図ることができる。
ワークフローを向上させるSynergyDriveについては,撮影範囲の自動設定機能“AutoPose”を,従来の胸部に加えて頭部にも対応するアップデートを行った。OMライン,SMライン,RBラインの基準線をプロトコールにあらかじめ設定しておくことで,スキャノ画像から頭部の撮影範囲を自動認識する。これにより,操作者の作業負担を軽減し,操作者間の設定のバラツキを防ぐことができる。
また,CTに関連した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への取り組みも紹介した。COVID-19の臨床画像を供覧し,SCENARIA Viewでは0.35秒/回転の高速撮影によりブレのないクリアな画像が得られることや,IPVにより被ばく低減にも寄与すること,また,80cmの大開口径により高体重の患者の検査にも対応可能なことなどを紹介した。さらに,ガントリ・寝台・操作卓の3ユニットのコンパクト設計を生かして,COVID-19以前から車載CTとして提供を行っており,2021年3月現在で32台の受注実績がある。コンテナCTとしての提供も可能で,これらをCOVID-19検査用として活用し,患者動線を分離する提案を行った。
●2022
●高速演算能力を生かして心拍動によるブレを低減する“Cardio StillShot”を搭載するSCENARIA View Plus
CTでは,ITEM直前の4月5日に発売されたSCENARIAファミリーの最上位機種「SCENARIA View Plus」と,2021年12月にリリースされたSupriaファミリーの最上位機種「Supria Optica」の64列CT2機種を展示した。両機種とも,AI技術を活用して開発された画像処理機能“IPV”,検査効率向上技術である“SynergyDrive”が搭載され,高画質で低被ばく検査を最適なワークフローの下で提供できる製品となっている。また,富士フイルムのAI技術である“REiLI”の適用によって,さまざまな機能がさらに強化されていることをアピールした。
SCENARIA View Plusは,2018年に発売されたSCENARIA ViewにGPU搭載型コンソールを搭載したモデルである。従来はCPUベースで処理されていた解析をGPUで行うことで,処理のスピードが向上し解析機能が大きく向上した。GPUを活用した演算ユニットとして“FOCUS Engine”を搭載することで,IPV使用時の画像処理速度が従来の演算ユニットに比べて最大で2倍となっている。それを生かしたのが心臓CTにおける拍動によるブレを低減する技術“Cardio StillShot”である(オプション)。Cardio StillShotでは,RawDataで心臓全体の動きを四次元的に推定した“4D動きベクトルフィールド”を用いて,収集したデータの動きを補正することで,動きによる影響を抑えて高分解能の再構成画像が得られる。これによって,高心拍や心拍が不規則な患者でも動きのアーチファクトを低減した画像を得ることができる。Cardio StillShotを適用した場合,SCENARIA View Plusの0.35秒/回転で実効時間分解能は28msecとなる。IPVを適用することでより低被ばくで高画質の画像データの取得が可能で,冠動脈だけでなく心臓の弁の描出なども期待される。
Supria Opticaは,Supriaファミリーのオープン&コンパクトというコンセプトはそのままに,富士フイルムのAI技術であるREiLIで強化されたIPVやSynergyDriveといった機能を搭載した64列CTだ。IPVの適用で従来のFBPの画像処理に比べて最大83%の被ばく低減,90%の画像ノイズ低減を実現した。Supria Opticaでは,16列CTと同等の2MHUのX線管装置と電源容量30kVAが搭載されているが,IPVと組み合わせることで換算値で最大12MHU相当の性能が得られ,ランニングコストを抑えながら幅広い検査に対応が可能になっている。
●2023
●「SCENARIA View Plus」にカメラ映像を解析してポジショニングをサポートする「AutoPositioning」機能を搭載
CTコーナーでは,64列128スライスCT「SCENARIA View Plus」と同じく64列/128スライスCTの「Supria Optica」(富士フイルムヘルスケア)を実機展示した。両装置とも富士フイルムのメディカルAI技術ブランド「REiLI」の下で開発された画像処理機能「IPV」,検査効率向上技術「SynergyDrive」を搭載して画質の向上や検査環境の改善を図っているのが特長だ。SCENARIA View Plusは,2022年4月に発売され昨年のITEM 2022で初めてお披露目された。GPUの搭載で処理性能が向上されており,そのパワーを生かした心臓の拍動によるブレを低減する「Cardio StillShot」(オプション)では,IPVの適用によって低被ばくで高画質の心臓CT検査を可能にする。今回のブースでは,ワークフローの改善を図るSynergyDriveに,寝台上に設けられたカメラの映像を元に患者のポジショニングをサポートする「AutoPositioning」機能が追加されたことを紹介した。AutoPositioningでは,カメラで撮影された映像を元にAI技術を活用して人体の特徴点を検出して,ワンボタンで寝台を最適な撮影位置にセッティングする。寝台の上下方向,頭足方向だけでなく左右(横)方向のズレも自動で修正する。カメラの映像はコンソール(操作卓)で確認が可能で,CT室だけでなく操作室でも映像で患者の状態を確認しながらセッティングできるのが特長だ。さらに,SynergyDriveのAutoPose機能によって撮影したスキャノグラムから撮影範囲を自動で決定できることも紹介した。
また,富士フイルムとのシナジーとして2022年に搭載された画像処理ワークステーション「SYNAPSE VINCENT Core」との連携では,撮影して画像再構成をすると同時に画像データが転送され,平行して処理が行えるようになった。SYNAPSE VINCENT Coreでは,頭部の低吸収域・高吸収域の自動認識,胸部の肺結節や気腫性病変が疑われる低吸収域の自動抽出,肋骨を展開した状態で表示するボーンビューワなどのアプリケーションが利用できる。
Supria Opticaは,2MHUのX線管装置ながらIPVとの組み合わせによって低線量でノイズを抑えた撮影が可能なことや経済性などが市場で評価されており,導入台数を伸ばしていることが紹介された。
●2024
●高画質の提供と検査ワークフローの向上を可能にする“FCT”の新製品「FCT iStream」を大きくアピール
CTではFCT iStreamのほか,体動アーチファクトの低減技術や検査をサポートする自動化機能を強化した64列CT「SCENARIA View Plus」を展示した。
FCT iStreamは,富士フイルムの“F”の文字を冠した“FCT”の第一弾として2023年12月に国内で発売され,RSNA 2023の展示ブースでもお披露目された。日立製作所の画像診断関連事業の買収後,富士フイルムの開発スキームや技術を注ぎ込み,一から設計し直して開発した最初のCT装置となる。FCT iStreamは,CTとしての高画質・低線量・高速撮影の提供はもちろんのこと,富士フイルムグループのCTとして,検査オーダからスキャン,画像解析,読影という検査ワークフローのすべてを,富士フイルムグループの製品やシステムでトータルに提案することで,病院における検査業務に最適な提案が可能になる。その中で,中核となるFCT iStreamのさまざまな機能をブースで紹介した。ハードウエアとしては,6MHUのX線管装置を搭載し最大管電流670mAの高いX線出力が可能で,造影検査を多く行う施設でも運用しやすいスペックとなっている。また,画像処理機能「IPV」,検査効率向上技術「SynergyDrive」を搭載し,3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT Core」を採用して,高速,高精細な画像検査を効率的なワークフローで実施できる。
SCENARIA View Plusは,心臓検査にも対応した64列CTとして2022年に登場した。今回の展示では,適用対象が拡大されたポジショニングサポート機能の「AutoPositioning」やスキャン範囲自動設定機能「AutoPose」の新機能,胸部(肺野)領域をターゲットにしたモーションアーチファクト低減技術「Body StillShot」などを中心に紹介した。
AutoPositioningは,寝台の上に設置されたカメラの映像から患者の特徴点(顔の目,鼻,口や腰,足首など)をAI技術で自動認識して,ワンボタンで最適な位置まで寝台が自動で移動する。SCENARIA View Plusは開口径が80cmと広く,寝台の左右動も可能で正中位まで自動で合わせることが可能になる。さらに,AutoPose機能では撮影されたスキャノグラムから撮影範囲の自動設定が可能で,頭部ではOMラインに合わせた設定など撮影範囲や最適なFOVが推奨条件として設定される。最新バージョンでは,適用対象部位がAutoPositioningとAutoPoseともに14種類に拡大された。
従来のCardio StillShotに加えて,肺野・縦隔・大血管など胸部領域のCT撮影時に適用可能なBody StillShotを搭載した。Body StillShotは,胸部領域の撮影時に適用可能で非剛体位置合わせによって四次元の動きのベクトルを算出して適応することで,体動アーチファクトを低減する。収集したRaw Dataから被写体の動く方向と量を四次元的に算出する際に,体軸方向の連続性を広範囲に維持することでアーチファクトの少ない画像を提供する。心電情報を必要としない演算アルゴリズムを採用しているため,胸部ルーチン検査へ適用でき,IPVとの併用も可能となっている。