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医療法人博仁会 福岡リハ整形外科クリニック 
ECHELON SynergyのワイドボアとAI技術がもたらすスループットの向上で検査環境の改善を実現
Synergy DLRとIP-RAPIDによる高画質画像でチーム医療に貢献

2024-9-25


医療法人博仁会 福岡リハ整形外科クリニック

福岡市西区の医療法人博仁会福岡リハ整形外科クリニックでは,2023年9月から富士フイルム社製1.5T超電導MRI「ECHELON Synergy」が稼働。ガントリ開口径70cmのワイドボアやワンタップ操作の撮像アシスト機能などの特長が検査のスループット向上をもたらしている。さらに,ディープラーニング画像再構成技術による高画質画像でチーム医療を支えている。ECHELON Synergyの導入で検査環境はどのように変わったのか。検査部の布川洋一部長と吉浦佑哉技師の声を交え報告する。

布川洋一 検査部部長

布川洋一 検査部部長

吉浦佑哉 技師

吉浦佑哉 技師

 

400年以上にわたり福岡の地域医療を担う

医療法人博仁会は,福岡市西区で福岡リハビリテーション病院,福岡リハ整形外科クリニックのほか,福岡リハ西都クリニックなどサテライトクリニック3施設,訪問看護ステーションを展開する。同法人の歴史は,1600年,初代・原 三信氏が,黒田長政により黒田藩の藩医として召し抱えられたことまでさかのぼる。以来,400年以上にわたり,この地で地域医療を担ってきた。2010年には,本院の一部の外来機能を移して,福岡リハ整形外科クリニックを開設。膝・肩・腰,スポーツ整形を中心に,整形外科領域の外来診療を提供している。隣接する本院とシームレスに連携し,両施設の医師をはじめとしたスタッフが医療チームとして,診療に当たっている。特に,リハビリに関しては,広い室内や設備,ロボットスーツなどの機器も充実。理学療法士など約200名のスタッフが対応している。
この中で,検査部は医療チームの一員として質の高い画像を提供することで,診断から手術,リハビリまでの診療を支えている。現在,本院,クリニックの検査部に9名の診療放射線技師が在籍しており,MRIとCT,トモシンセシスやSLOT撮影も含めたX線などの検査を担っている。布川部長は,「9名の技師がローテーションで検査を担当します。ただし,MRIとCTについては,高機能を使いこなすために専任者を配置して,その担当者を中心にすべての技師が装置を扱えるようにする体制としています」と説明する。そして,検査部では,診断,治療,リハビリに役立つ質の高い画像を提供するために,ECHELON Synergyを導入。2023年9月に稼働させた。

ワイドボアとAI技術を条件にECHELON Synergyを採用

整形外科,リハビリに力を入れている本院とクリニックにとって,MRIは重要な存在である。2004年には本院にオープンMRI「APERTO Inspire」を導入。2010年にはクリニックの開設に合わせて,同じくオープンMRIの「APERTO Eterna」を稼働させた。さらに,2013年には本院に横幅74cmのワイドボア1.5T 超電導MRI「ECHELON OVAL」を設置して,3台体制で運用してきた。
オープンMRIとワイドボアMRIは,ポジショニングや体位などの観点から,整形外科での撮像でメリットも多く,この3台の装置は,まさしく三銃士のように健闘し診断,治療,リハビリのための画像を提供し続けてきた。しかし,オープンMRIの老朽化が進み,一方で患者数の増加によるMRI検査のニーズが高まりスループットの良い装置が求められるようになってきた。そこで,クリニックに設置していたAPERTO Eternaをリプレイスすることにした。
新しい装置の選定に当たって最重視したのは,「ワイドボア」であった。布川部長は,「本院のECHELON OVALで,ワイドボアの良さを実感していました。肩や手首などの検査でも,広い開口径を生かして目的とする部位を撮像中心にポジショニングをすることが可能で,何度も『助かった』と思うケースがありました。また,ガントリが『広くて良かった』という患者さんの感想を耳にする機会もあり,ワイドボアは絶対に外せない条件でした」と強調する。それに加えて,「AIや自動化技術などを搭載している装置であることも譲れなかったです」と言葉を続ける。
この2つの重要要件を満たす装置として,70cmのガントリ開口径を有し,ワンタップ操作の撮像アシスト機能や検査自動化ソリューション「AutoExam」,ディープラーニングを用いたノイズ除去技術「Synergy DLR」,高画質画像を得られる高速撮像技術「IP-RAPID」といった先進の技術を搭載したECHELON Synergyが有力候補に挙がった。そして,10年以上にわたって安定稼働するECHELON OVALの信頼性の高さも評価して,採用を決定した。

■症例1:腰椎椎間板ヘルニア

T2強調画像,TR/TE=3540/80,スライス厚:4mm,FOV:180,マトリックス:320×256,DLR:Medium,VIVID:2,Mode:iRCM,撮像時間:2:18

T2強調画像,TR/TE=3540/80,スライス厚:4mm,FOV:180,マトリックス:320×256,DLR:Medium,VIVID:2,Mode:iRCM,撮像時間:2:18

 

■症例2:右大腿二頭筋腱損傷

T2*強調画像,TR/TE=2900/75,スライス厚:5mm,FOV:360,マトリックス:320×256,DLR:Medium,VIVID:2,Mode:iRCM,撮像時間:2:16

T2*強調画像,TR/TE=2900/75,スライス厚:5mm,FOV:360,マトリックス:320×256,DLR:Medium,VIVID:2,Mode:iRCM,撮像時間:2:16

 

■症例3:右肘内側側副靭帯画像

T2*強調画像,TR/TE:525/9,スライス厚:3mm,FOV:140,マトリックス:300×300,DLR:Medium,VIVID:2,Mode:iRCM,撮像時間:2:04

T2*強調画像,TR/TE:525/9,スライス厚:3mm,FOV:140,マトリックス:300×300,DLR:Medium,VIVID:2,Mode:iRCM,撮像時間:2:04

 

スループットの向上で被検者とスタッフの負担を軽減し経営にも寄与

本格的な運用が始まってから半年が経過したECHELON Synergyは,富士フイルムの技術の粋を尽くしたハードウエア・ソフトウエアにより大車輪の活躍を見せている。1日の検査件数は約10件で,1か月およそ200件のハードワークを楽々とこなしている。整形外科の検査では肩や四肢などポジショニングの難易度が高いものの,富士フイルムのお家芸と言えるワイドボア設計により,スムーズに行うことが可能だ。加えて,ECHELON Synergyが採用した撮像アシスト機能により,ガントリ前面の左右両側に配置されたタッチパネルの「START」ボタンをワンタップするだけで,寝台が自動で稼働。目的とする部位が撮像中心になるようにセッティングを行う。従来手動で行っていたこの作業が自動化されたことで,担当技師は被検者のケアをしながらポジショニングを行うなど,速やかに検査の準備を進めることができる。専任者としてECHELON Synergyをハンドリングする吉浦技師は,「ワンタップするだけで指を離せて,両手を自由に使えるので,患者さんのポジショニングなどを行えます。これによって検査のスループット向上を図れています。1検査枠を30分としていますが,ECHELON Synergyでは20分程度で検査を完了できています」と説明する。これを受けて布川部長は,「自動化技術はもちろん,ハードウエア・ソフトウエア全体の進化が,検査時間の短縮につながっています」と話す。その代表例として,二人が声をそろえるのが,「FlexFit coil」だ。汎用性が高く,セッティングも容易で,1つのコイルで交換作業が生じずに各部位の撮像が可能となる。
ECHELON Synergyのスループットの高さを生かし60分で3検査を行うこともあり,検査数の増加も図れるという。また,検査時間の短縮は被検者の負担を軽減し,スタッフの残業時間削減にもつながっており,クリニック経営の観点からも「Synergy」の名に恥じないシナジー効果を生んでいる。

Synergy DLRとIP-RAPIDにより3T MRIに匹敵する画像を提供

スループットの良さが際立つECHELON Synergyだが,その画質も侮れない。現在,ルーチン検査では,T1,T2,脂肪抑制を最低2方向から撮像している。加えて特殊な検査として,CTライク画像を得られるBone Imageを撮像している。検査をオーダする整形外科医からの画質の評価も高く,同じくECHELON Synergyを導入しているサテライトクリニックの福岡リハ西都クリニックでその画像を見た医師たちからは3T MRIの画質に匹敵する,と驚きの声が上がっているという。
この高画質は,ECHELON Synergyに搭載されたSynergy DLRとIP-RAPIDの仕事である。吉浦技師は,「Synergy DLRにより,ノイズを抑えた画像が得られるようになりました。この画質を生かすために,医師と相談しながら適用を判断しています」と説明する。また,IP-RAPIDについても,部位ごとに「Light」「Medium」「Heavy」というノイズ除去強度の最適な設定を検討して,医師が読影しやすい画像を提供できるようにしている。このように吉浦技師らによってリファインされた画像は,診断にもインパクトをもたらしている。布川部長は,「これまで,ノイズで見えなかった筋肉の付着部や腱が,ECHELONSynergyでは描出されるようになり,医師からは確定診断ができると評価を受けています。CTライク画像を得られるBone Imageも用いることで,CT検査を省略できる可能性があります」と期待を寄せている。

シーケンスの改善などを図り診断,治療,リハビリに役立つ画像を

富士フイルムの会心作,ECHELON Synergyは,日常臨床の中でその実力を遺憾なく発揮し,検査・診断にメリットをもたらし,クリニック経営にも寄与している。今後に向けて,布川部長は,「専任者を中心に,シーケンスを改善しながら,さらに使いこなして,その性能を最大限に引き出したいです」と次のマイルストーンを語る。
その専任者としての責務を負う吉浦技師は,「ECHELON Synergyの特長の一つはSynergy DLRだと思います。さらにこれを活用して診断,治療,リハビリに役立つ画像を提供していくことが私たちに求められています」と,目標を見据えている。
400年以上にわたり福岡の地域医療を担ってきた博仁会の外来診療を任された福岡リハ整形外科クリニックにとって,ECHELON Synergyは金メダル級の価値をもたらしている。クリニックでは,今後もこの実力派MRIを活用し,地域住民に整形外科診療・リハビリを提供していく。

(2024年6月5日取材)

 

医療法人博仁会 福岡リハ整形外科クリニック

〒819-8551
福岡県福岡市西区野方7-770
TEL 092-812-1880
http://frh.or.jp
診療科目:整形外科,リハビリテーション科

 

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