ユーザー訪問 
あかいし脳神経外科クリニック 
APERTO Lucent Plus 
高速撮像技術IP-RAPIDを画像の高精細化に応用し脳卒中診療のハブとして地域に貢献
救急診療にも適したオープンMRIのさらなる普及に期待

2023-5-25


あかいし脳神経外科クリニック

あかいし脳神経外科クリニック(千葉県千葉市)は,家庭やかかりつけ医と専門施設をつなぐハブとして地域の脳神経外科診療に取り組んできた。開院時から活用してきた富士フイルムヘルスケア社製のオープンMRIを,2022年8月に同社製の0.4TオープンMRI「APERTO Lucent Plus」へと更新し,高速撮像技術「IP-RAPID」の応用で高精細化した画像を日々の診療に役立てている。脳卒中を中心に,脳神経外科領域の初期診療におけるオープンMRIの有用性について,赤石江太郎院長とスタッフの皆さんに取材した。

赤石江太郎 院長

赤石江太郎 院長

MRIオペレーターの皆さん。前列左から反時計回りに真汐紗耶香氏,神戸咲穂氏,関口龍之介氏,花島 望氏

MRIオペレーターの皆さん。前列左から反時計回りに真汐紗耶香氏,
神戸咲穂氏,関口龍之介氏,花島 望氏

 

かかりつけ医と病院の中間に立ち脳卒中の死亡率低減をめざす

あかいし脳神経外科クリニックは,脳神経外科領域と救急医療に長く携わってきた赤石院長が2009年に開業した。外来患者数は1日あたり50〜60人ほどで,新患の約15%はかかりつけ医や他院からの紹介で来院する。同院では,専門的な精査を実施して紹介元に返すことで,地域全体の脳卒中への対応力を向上することをめざしており,赤石院長は,「脳卒中の兆候をとらえて重症化を防ぐことで,地域の脳卒中死亡率の低減に貢献したいと考えています。症状が脳神経外科的なものか,入院加療が必要かを迅速かつ的確に判断し,必要に応じて病院へ転院搬送したり,かかりつけ医に専門的なアドバイスをして在宅管理できる幅を拡大することが,当院の役割です」と説明する。
脳卒中の超急性期や前兆,リスクファクターをとらえるためにはMRIが必須であると考える赤石院長は,開院時に富士フイルムヘルスケア社製の0.4TオープンMRI「APERTO Eterna」を導入。診療と脳ドックで年間6000〜8000件の検査を施行してきた。

高速化・自動化技術を搭載したAPERTO Lucent Plusに更新

検査件数の多い中でもAPERTO Eternaは安定稼働を続けてきたが,耐用年数を過ぎたことから,2022年8月にAPERTO Lucent Plusへと装置更新が行われた。APERTO Lucent Plusは,アンダーサンプリングと繰り返し再構成により画質を維持しながら撮像時間を短縮する高速化技術「IP-RAPID」や,検査自動化ソリューション「AutoExam」など,人工知能(AI)を活用したワークフロー向上技術「SynergyDrive」を実装した最新型オープンMRIである。
更新では装置の入れ替えだけでなく,同院が面するバス通りからの影響を抑えるためのノイズキャンセラーの導入や換気装置の強化なども実施した。また,画像については,より高精細で診断しやすい画像を提供するため,アプリケーション担当者がIP-RAPIDを応用してスライス厚を薄くするなどの調整を行った。赤石院長は,「開院当初から,サービス担当者が診察終了後に遅くまで熱心に装置のメンテナンスをしてくれるなど,富士フイルムヘルスケアの担当者の尽力により満足できる検査環境を維持してもらい,全幅の信頼を寄せてきましたが,更新においても速度や検出能の向上など,リクエストに応じた提案をしてもらえました。脳卒中疑いのスクリーニングでは感度が重要であり,更新の際には,より診断しやすい画像についてアプリケーション担当者と協議を重ねたことで,特にFLAIRの画像が格段にきれいになりました」と話す。
現在は,スタッフの働き方改革のために1日の検査件数を25件程度に抑え,高速化よりも解像度向上を重視してIP-RAPIDを活用している状況だが,今後は小児や不穏の強い認知症患者への対応のために,撮像スピードの向上にも取り組むことを予定している。

救急車も積極的に受け入れMRIでスクリーニングを実施

同院は積極的に救急車を受け入れていることも特徴で,2021,2022年は千葉市消防管内において無床診療所として最多の受け入れ実績を持つ。装置更新に合わせてMRI棟に隣接する駐車場に2台分の救急車専用スペースも確保し,受け入れ態勢の強化を図った。赤石院長は救急診療について,「患者の大病院指向やコロナ禍,病床不足など複合的な背景により医療崩壊が現実のものとなっていることから,MRIによるスクリーニングが可能な当院で軽症と思われる患者を受け入れ,必要な場合に病院へ転送することで,地域医療の崩壊を少しでも食い止めたいと考えています」と述べる。
2023年に入っても2か月ですでに19台と,年間100台を超えるペースで受け入れている。救急搬送の9割は軽症だが,中にはMRIによるスクリーニングが迅速な治療につながり,予後の改善に寄与するケースもあると,赤石院長は次のように言う。
「言葉が出たり出なかったりを繰り返していて,認知症やてんかんも疑われて搬送されてきた患者さんは,MRIで右中大脳動脈の閉塞とDWI-FLAIRミスマッチが確認されたため,待機していた救急車で近隣病院へ転送してもらいました。搬送先では再検査はせずに,そのままカテーテル室に入室して血栓回収療法を行い,転送から約50分で迅速な治療ができました。救急の現場には超電導型MRIが多く導入されていますが,永久磁石型の0.4TオープンMRIでも治療方針の決定に役立つ画像を得られますし,患者の状態を目視しながら検査できるため急変にもすぐに対応できるという利点もあるので,オープンMRIはもっと救急の現場で活用されるべきだと思います」

■症例1:右中大脳動脈閉塞

症例1:右中大脳動脈閉塞

80歳代,女性,救急搬送例。失語症状が見られ,認知症やてんかんも疑われたが,MRIで右中大脳動脈閉塞が確認されたため,すぐに近隣病院へ転送。転送から約50分で血栓回収を実施することができた。
a: FLAIR(RADAR),TR/TE/TI=11865/75.0/2000,スライス厚:6.0mm,スライス枚数:24,FOV:220mm,撮像時間:5:57
b: DWI(b=0),TR/TE=6538/126.8,NSA=8,スライス厚:6.0mm,スライス枚数:24,FOV:220mm,撮像時間:2:57
c: DWI(b=1000),TR/TE=6538/126.8,NSA=8,スライス厚:6.0mm,スライス枚数:24,FOV:220mm,撮像時間:2:57
d: DWI(ADC),TR/TE=6538/126.8,NSA=8,スライス厚:6.0mm,スライス枚数:24,FOV:220mm,撮像時間:2:57
e: MRA(MIP),TR/TE/FA=32.5/7.2/33,スライス厚:1.2mm,IP-Scan=1.1,FOV:160mm,撮像時間:7:08

 

クリニック裏手に位置するMRI棟の隣に,救急車専用駐車場を増設

クリニック裏手に位置するMRI棟の隣に,救急車専用駐車場を増設

 

患者にやさしいオープンな構造が検査適応の拡大を可能に

同院のMRI検査は,検査担当が1人,ワークステーションでの画像処理担当が1人の2人体制で行っている。検査の大部分が頭部MRI,MRAで,導入時に40ほど作成した検査メニューを現在は約20に最適化した。頭部外傷では1分程度でT1強調画像,T2強調画像,FLAIRを撮像可能なメニューを用意するなど,富士フイルムヘルスケアのアプリケーション担当者とともに検討を行い,撮像スピードと画質のバランスをとった検査の実施に努めている。
操作を担当する真汐紗耶香氏は,「APERTO Eternaと操作性は大きく変わりませんが,GUIが改良されて操作の一部を省略できる機能が搭載され,操作性がシンプルになりました。まれにオーダがある脊椎の検査で活用しており,慣れていない領域でも安心して検査できるようになりました」と話す。
患者にやさしい検査を提供できることもオープンMRIのメリットの一つである。同院には閉所恐怖症などで超電導型MRIで検査ができなかった患者も多く来院するほか,シングルピラー構造で横が広く開放しているため,小児検査では保護者が付き添うことで安心して検査を受けられる。また真汐氏は,「円背や腰痛で仰臥位が難しい患者さんもいますが,オープン型では側臥位や斜位での撮像も可能とのことなので,対応の幅を広げるために検討していきたいです」と,検査適応の拡大に意欲をのぞかせる。

医療課題の解決にもつながるオープンMRIの普及に期待

日々の診療にオープンMRIを活用し,その有用性を実感している赤石院長は,永久磁石型は消費電力が少なく,ヘリウムも必要ないことから,エネルギーや資源供給の観点からも社会に必須のツールであるとし,富士フイルムグループの販促力でオープンMRIが救急の現場に普及することに期待を示す。
また,地域に根ざした専門医としての立場から,救急医療の課題解決をめざして行政への働きかけにも取り組む赤石院長は,「スタッフと富士フイルムヘルスケア担当者とともに作り上げ,維持してきた救急診療にも対応可能な検査環境は,当院の強みです。これからもAPERTO Lucent Plusを活用し,地域の救急医療への貢献に努め,脳卒中診療のハブとしての役割を全うしていきます」と語る。同院のAPERTO Lucent Plusの活用例は,地域医療を再構築するための一つのカギとなりうるだろう。   

(2023年3月1日取材)

*集合写真前列左は受付担当の清野淳子氏,後列左より,富士フイルムヘルスケア サービス担当の俵 友輔氏,アプリケーション担当の船造寿光氏

 

あかいし脳神経外科クリニック

〒262-0045
千葉県千葉市花見川区作新台1-5-8
TEL 043-441-4141
http://www.akaishi-cl.com
診療科目:脳神経外科

 

  モダリティEXPO

 

●そのほかの施設取材報告はこちら(インナビ・アーカイブへ)


【関連コンテンツ】
TOP