ユーザー訪問
医療法人社団正風会 小林病院
ECHELON Smart Plusを導入し地域のゲートキーパーとして患者に寄り添う診療を実践
“予約どおりの検査”を支える高速撮像と自動化機能
2020-4-24
東京都板橋区の医療法人社団正風会小林病院は,1969年の開業から半世紀にわたり,地元に根づいた医療を展開してきた。区内でもいち早く導入したMRIを診療に活用し,2005年からは日立の永久磁石型0.4TオープンMRI「APERTO」を使用してきたが,2019年9月に最新の超電導型1.5T MRI「ECHELON Smart Plus」へと更新した。装置更新のねらいと実際の活用について,小林 匡院長と関本信哉技師長にインタビューした。
クリニックと大規模病院の間の“コンビニ型病院”としての役割
板橋区西端に位置する成増は,東武東上線と地下鉄(有楽町線・副都心線)の2駅を利用可能で,住みやすい町として近年注目を集めている。子どもから高齢者まで三世代が暮らす,今後も人口増加が見込まれるエリアだ。小林病院は,東武東上線成増駅から徒歩2分の場所に小林外科として1969年に開院。1987年に増床して病院となり,ニーズに応じて循環器内科や脳神経外科,透析など診療科を拡充させ,地域に密着した医療を提供してきた。2005年に2代目院長に就任した小林院長は,同院の特徴を一言で表せば“コンビニ型病院”であると言う。
「板橋区は横に広く,大学病院など大病院は東側に集中しています。当院は,病院が少ない西側エリアにおいてクリニックと大規模病院の間にある病院として,複数の診療科と検査機器をそろえ,まずは必要十分な検査,治療を行える環境を整えています。困った時にはいつでも受診できる利便性,そして,必要に応じて的確に専門の病院に紹介し,その後のフォローアップも真心を込めて行うことで,地域に貢献することをめざしています」
同院は,東京都指定二次救急医療機関として24時間365日救急搬送を受け入れており,その数は年間1000件以上に上る。常勤医は専門を持ちながらジェネラリストとして患者に寄り添う医療を実践するとともに,大学病院と連携し,専門医による最新の医療の提供にも努めている。
|
|
機械室を離して配置可能なレイアウトの柔軟性が採用の決め手
同院では,“診断は的確に早く”をコンセプトに画像診断機器を整備してきた。約20年前に区内で他に先駆けてMRIを導入し,2005年にはオープンMRIのAPERTOへと更新。圧迫感のない検査環境と良好なコストパフォーマンスを発揮するAPERTOを診療に活用してきた。CTも含めて紹介検査も行い地域で活用してきたが,院内外の画像検査の需要が増加し,予約待ちの時間が延びつつあった。
そのような中,同院は2013年に病院のリニューアルを実施。これが,最新装置への更新にもつながった。小林院長は,「病院存続の課題の一つである耐震化工事をクリアできたことで,医療を継続していく見通しがつきました。最新装置の導入は,今後も患者さんに選ばれ続けるため,そして,職員のやる気を引き出すためにも有効だと考え,1.5T MRIの導入を決断しました」と話す。
既存のMRI室をそのまま使用することが条件であったが,機械室を設けるスペースがないことが障壁となった。関本技師長は,「病院の構造上,機械室は検査室から少し離れた場所に設置するしかありませんでした。複数の装置を検討しましたが,そのレイアウトが可能なのはECHELON Smart Plusだけでした」と,配置の自由度が決め手となったと話す。そして2019年9月,同時に導入されたMRIボア内映像投影システム「Smart Theatre」とともに,ECHELON Smart Plusが稼働を開始した。
自動化機能や体動補正を活用して紹介検査も予約時間どおりに実施
放射線科には診療放射線技師5名が在籍し,CT,MRI,一般撮影,透視撮影などの検査を担っている。CTやMRIの検査は,頭部以外は基本的に予約制だが,地域からの紹介も含めて当日オーダにもできるかぎり対応する。救急もあるため,放射線科も24時間オンコール体制だ。
近隣にMRIが少ないため地域からの依頼も多く,全体の約4割を占める紹介検査では,整形,内科,耳鼻咽喉科,産婦人科など幅広い領域に対応する。院内検査は,腰椎を中心とした整形が約7割,頭部が2割,ほかMRCPなどがオーダされる。
ECHELON Smart Plusへの更新により,1日あたりの検査数は以前の6件程度から10〜15件へと大きく増加した。MRIとCTは技師一人で検査を行うことも多く,検査業務は非常に過密だ。それでも対応できているのは,自動化機能“AutoExam”の効果が大きいと,関本技師長は述べる。
「自動化機能は,選定理由の一つです。ほぼ全例の頭部検査で自動位置決めのAutoPoseを使用していますが,精度が高いため確認は短時間ですみます。その後はAutoClipによる処理も含めて自動でタスクが進むため,一次読影に集中できますし,次の患者さんへの声かけもしやすいです」
また,高速撮像技術“IP-RAPID”を全身のさまざまな検査に適用し,撮像時間の短縮や画質向上に活用している。どの領域でも10〜15分程度で撮像でき,検査スループットが大幅に向上した。高速撮像による撮像時間の短縮や体動補正“RADAR”の活用により,体動による再撮像が9割以上減少し,予約時間どおりに検査を始められるようになったことも大きなメリットだ。
さらに,“Smart Comfort”による静音性や,Smart Theatreについても患者からの評価は高い。関本技師長は,「患者さんからは,“これならまた受けたい”という声を多くいただいています。ボアに直接投影するため,幅広い領域の検査に使える可能性があると思います」と期待を示す。
全身領域の高画質化で地域のゲートキーパーとして貢献
装置更新で大きく向上した画質に対しては,院内外の医師から高い評価が寄せられている。関本技師長は,「脳神経外科からはMRAと拡散強調画像の画質が非常に良好で,確定診断できると喜ばれています。また,子宮や肩関節の検査では,RADARでアーチファクトのない明瞭な画像を得られるようになり,紹介検査も増えています」と述べる。
整形領域ではDIXON法の水・脂肪分離法“FatSep”により良好な脂肪抑制画像に加え,T2強調画像を同時に取得でき,時間短縮にもつながっている。
消化器外科が専門の小林院長は,「総胆管結石は,肝機能が低下していると造影CTでは診断できないのですが,MRCPを撮像できるようになったことで,診断から内視鏡治療,その後の胆囊摘出まで,当院で完結できるようになりました」と話す。また,ジェネラリストとして専門以外の領域を診ることもあるが,「例えば,腰が痛くて動けないと救急搬送されてきた場合にも,MRIで骨折か打撲か,脊柱管狭窄なのかがわかれば,専門医への紹介が必要か,入院して様子をみるかといった判断がすぐに可能です」と述べ,MRIにより地域のゲートキーパーとしての役割を果たすことができると話す。
■症例1:頭部ルーチン画像
■症例2:腹部画像
■症例3:腰椎矢状断像
心も癒やす医療に寄与するストレスの少ない検査
ECHELON Smart Plusに対する地域の期待は高く,17時以降や日曜日に検査をしてほしいという声も多いことから,その実現に向けて,現在,体制を整えている。
小林院長は,「高画質であるだけでなく,高速撮像やSmart Theatreでストレスの少ない検査をできるようになったため,VSRADを活用した物忘れ外来や人間ドックなど,地域と時代のニーズに応じた医療をこれからも提供していきます」と展望する。病気を治すだけでなく,心を癒やすことを大切にする同院での,ECHELON Smart Plusの活躍が期待される。
(2020年2月10日取材)
〒175-0094
東京都板橋区成増3-10-8
TEL 03-3930-7077
https://kobayashibyoin.com
診療科目:外科,消化器外科,内科,消化器内科,循環器内科,糖尿病代謝内科,整形外科,脳神経外科,放射線科,リハビリテーション科,人工透析内科
- 【関連コンテンツ】