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医療法人成信会さくら病院
高磁場MRIレベルの画像をめざしポテンシャルを最大限に引き出したAPERTO Lucentが診療を支援
シングルピラー構造で患者にやさしい検査を提供
2018-9-25
医療法人成信会さくら病院は,2015年8月にMRIを他社製の低磁場装置から,日立の永久磁石型0.4TオープンMRI「APERTO Lucent」に更新した。検査の現場では,0.4T装置ながらも高磁場MRIレベルの画質をめざして検討を重ねており,APERTO Lucentのポテンシャルを大きく引き出すことに成功している。頭部領域と整形領域を中心にMRIを活用する同院での運用や検査の実際について,庭本直達院長,小野田尚弘事務長,診療放射線科の加藤誠係長を中心にインタビューした。
診療体制の充実を図り,高齢化が進む豊田市の地域医療を支える
さくら病院のある豊田市は,トヨタ自動車が本社を置く企業城下町として知られている。市の面積は愛知県最大で,人口も名古屋市に次ぐ42万6000人に上る。団塊世代の人口も多く,今後20年で介護保険の需要が国内で最も高まる自治体と言われており,高齢者人口が右肩上がりで増加している。
さくら病院は,2010年に前身の病院から経営を譲渡されて法人化し,2012年1月に現名称に変更した。庭本院長は,同院の役割について,「豊田市南部の住民の医療・健康を支える地域医療を中心に展開しています。加えて,豊田市は人口が多い割に,基幹病院がトヨタ記念病院と豊田厚生病院の2病院のみのため,基幹病院に集中する患者を,急性期を乗り越えた後に引き受けることも重要な役割となっています」と説明する。
さくら病院としてスタートした当時は厳しい経営状態だったが,病床数を95床(一般病床19床,医療療養病床76床)に増床し,診療体制の強化を進めた。小野田事務長は,「医師の自主性に任せる運営や,画像診断機器の整備など,働きやすい環境を整えることで,常勤・非常勤の医師が来てくれるようになりました。まだ道半ばですが,経営も安定しています」と話す。
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コストパフォーマンスに優れたAPERTO Lucentを選択
同院にはMRIをはじめ,2017年7月に更新した64列マルチスライスCT「Supria Grande」,外科用Cアーム,X線一般撮影・透視装置などがそろう。庭本院長は機器整備の方針について,「当初は経営が厳しい状態で始まったため,最小限の投資で最大限の利益を得ることを念頭に,機器の更新を検討しています」と説明する。MRIについては,前装置が経年劣化に伴いSNRが低下し,特に頭部MRAの信頼性の担保が難しくなってきたことから,装置更新が検討された。ランニングコストや設置スペースの観点から候補は中低磁場オープンMRIに絞られ,その中で磁場強度が最も強く,頭部血管を明瞭に描出することができるAPERTO Lucentが採用された。
APERTO Lucentは頭部領域と整形領域を中心に活用しており,導入時から安定稼働を続けている。同院におけるMRI導入の意義を,庭本院長は次のように述べる。
「当院では主に神経内科医が頭部領域のスクリーニングを行っており,基幹病院に送る判断を的確に行うために必要です。また,整形外科の診療にもMRIは必須でした」
診療放射線科には,川崎 真技師長以下3名の診療放射線技師が在籍する。MRI検査は加藤係長が主に担当しており,APERTO Lucent導入時から,その性能を最大限に引き上げるために撮像方法や画像処理の検討を続けている。庭本院長は,「いろいろと工夫してくれているため,0.4T装置で普通に撮像するものとは違う“特別な”画像を得られていると思います。整形外科医も十分に有用な画像だと認めています」と,APERTO Lucentの画像を高く評価している。
ポテンシャルを最大限に引き出し高磁場MRIレベルの画質を追究
加藤係長は,APERTO Lucent導入時から装置のポテンシャルを知るためにさまざまな実験を行い,臨床応用を繰り返してきた。めざすのは,0.4TのAPERTO Lucentの画像を超電導高磁場MRIの画像に近づけることだ。基本の設定や条件のままで撮像することを良しとせず,医師とのディスカッションを通して,シーケンスや撮像条件,ポジショニング,画像処理,補助具まで工夫を凝らし,こだわり抜いた検査を実践している。
検査の方針について加藤係長は,「検査では,オーダ情報やカルテ,患者さんの様子も含めてできるだけ多くの情報を吸い上げ,可能性のある疾患を考えて位置決めをすることで,より精度の高い撮像をめざしています。条件も患者さんに合わせて細かく調整し,臨床的に許容できる撮像時間で,医師の要望に応えられる診断に有用な画像を提供することに努めています」と説明する。
高齢の患者が多いこともあり,MRI検査は1検査あたり1時間(撮像時間30〜40分)で運用し,より高精度の画像の提供に取り組んでいる。整形領域については脊椎や関節だけでなく,医師の要望に応じて試行錯誤を繰り返し,中低磁場装置では難しい軟部腫瘍や骨転移の確定診断が可能な拡散強調画像(DWI)の撮像を実現した。また,頭部MRAは,従来と撮像時間を変えずにより広範囲の描出を可能にしている。さらに加藤係長は,固定具メーカーと体表部の脂肪抑制の感度ムラを改善する補助具や固定具の共同開発にも取り組んでおり,2〜3mmの微小な軟部腫瘤を鮮明にとらえた画像の提供も臨床で実践している。
加藤係長は画質の向上だけでなく,DIR(double inversion recovery)など超電導MRIで撮像可能な画像を,APERTO Lucentに実装されたシーケンスや機能を使って取得する検討も行っており,「4〜5年前の超電導MRIでできることを,APERTO Lucentで可能にしたいと考えています」と胸中を明かした。
■症例1:胸椎転移性骨腫瘍
■症例2:右椎骨動脈側副血行路
■症例3:骨囊腫
開放性の高いオープンMRIは地域におけるアドバンテージ
シングルピラー構造のAPERTO Lucentは,オープンMRIの中でも特に開放性が高い。撮像中心に頭部を配置する検査でも,2本柱構造のオープンMRIと比べて横方向の閉塞感が軽減されるため,導入後に検査ができなかったケースはないという。オープン性に期待した近隣の医療機関やホームページを見た患者から検査の問い合わせもあり,超電導MRIを有する医療機関が多い地域においてオープンMRIを導入することは,一つのアドバンテージとなっている。
今後,紹介検査の増加や検診を視野に入れ,同院でのMRI検査のメリットを周知していきたいと考える小野田事務長は,「地域にはオープンMRIのニーズがあり,当院には装置のポテンシャルを最大限に引き出した検査を提供できる強みがあります。検査の待ち時間もなく,基幹病院に行かなくてもMRI検査ができることを地域にアピールしていきたいと思います」と述べている。
APERTO Lucentを“診療の糧”に次の世代に医療をつなぐ
同院が選んだAPERTO Lucentは,さまざまな副次的効果をもたらしている。庭本院長は,「患者さんのメリットや医師の採用など総合的に考えて,APERTO Lucentは“診療の糧”となっています。これからも健全な経営を続け,最新エビデンスに遅れを取らない診療を実践し,この地域の医療を次の世代につなげていきます」との思いを語った。ポテンシャルを最大限に引き出したAPERTO Lucentによる質の高い検査が,医療・介護のニーズが高まる地域の医療に貢献していくだろう。
(2018年6月13日取材)
〒470-1201
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TEL 0565-28-3691
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診療科目:一般内科,循環器科,消化器科,小児科,リウマチ科,一般外科,血管外科,整形外科,形成外科,消化器外科,美容外科
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