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野瀬病院
AIRIS Ventoの高い開放性が快適・安心の検査環境を提供し診断から治療までを迅速化
地域に頼られる病院にオープンMRIが貢献
2017-4-25
神戸市長田区の医療法人社団十善会野瀬病院は,2016年8月に日立製作所社製永久磁石型0.3TオープンMRI「AIRIS Vento」を新規に導入した。現在,野瀬範久院長の専門である整形外科領域を中心に使用しており,受傷直後に適切な処置が求められる骨折症例への対応など,診療の質の向上に貢献している。また,高いオープン性で“やさしい”検査環境を提供するAIRIS Ventoは,幅広い患者さんに対応する点でも大きなメリットをもたらしている。そこで,野瀬院長,林 政徳法人本部長,放射線科の山内悟志技師に,導入の経緯や検査の実際について取材した。
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地域に頼りにされる病院をめざし新病院を新築移転
1931年に野瀬外科医院として開院した同院は,2003年に診療部長として着任した野瀬院長によるリハビリテーション充実などの改革により,外来患者が増加したことから,2014年8月に現在地に新築移転した。病床を90床(一般,療養,地域包括ケア各30床)へと増床し,3階には広いリハビリテーション室も設けられた。野瀬院長は,「地域住民や,周辺の医療機関・介護機関にとって,“困ったときの野瀬病院”と頼られるような病院となることで,地域に貢献したい」との思いを述べる。
現在は,整形外科を中心に手術も積極的に行うことで県内全域から患者が集まり,大学病院など地域の大病院からの紹介も多く,紹介率は約40%に上る。また,市民講座の開催や,コミュニティスペースとして病院の多目的ホールを地域に提供するなど,多彩な活動を通して地域に親しまれる病院づくりに力を入れている。
初期対応が重要な骨折の診断能と患者にやさしいオープン性に期待
野瀬院長は長年,整形外科診療において重要なモダリティであるMRIを導入したいと考えていたが,実現は難しかった。そのため,必要なMRI検査は近隣の病院や画像センターに依頼していたが,「他院で検査を受けていただくように伝えたときの,患者さんの残念そうな顔が一番辛かったですね」と野瀬院長は振り返る。
その様子を見ていた林本部長は,「院長がMRIを熱望していたものの,費用やスタッフ体制などがネックとなり,新病院開院時に導入することはできませんでした。しかし,経営が軌道に乗ったことから,あらためてMRI導入を検討しました」と経緯を話す。1.5T装置の要望もあったが,スペース的に制約があり,近隣施設にすでに多くの高磁場MRIがあることも踏まえ,「整形外科領域の診断をきちんと行えることを前提に,患者さんにとってより良い検査を提供できることを重視し,オープンMRIを第一候補としました」と,林本部長は選定方針について述べる。
実際に日立社製0.3T装置を見学し,検査受容性や画像について検討した。野瀬院長は,画質の判断基準について,次のように説明する。
「急性期の骨折を診断できることが必須条件でした。軟部組織の損傷と比べ,骨折は受傷直後の処置や治療を適切に行わなければ,その後の患者さんの人生に大きな影響を及ぼします。具体的には,CTや一般撮影ではわからない大腿骨や脊椎の骨脆弱性骨折と,高磁場MRIでも診断の難しい手根骨骨折の診断の可否を臨床画像で確認し,AIRIS Ventoで診断できるだろうと判断しました」
見学先で検査を体験したスタッフからの,「寝てしまうほど楽に受けられた」との声も後押しとなり,AIRIS Ventoの採用が決まった。
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高い開放性で閉所恐怖症の患者もMRI検査が可能
新病院はMRI導入を想定していなかったが,オープンMRIならではの省スペース設計が功を奏し,放射線科エリアの図面を引き直すことでMRI室の新設が実現した。放射線科にはMRIのほか,80列マルチスライスCT,一般撮影装置,透視撮影装置が備えられ,常勤3名と非常勤の診療放射線技師が検査業務を担当している。
MRIの1か月あたりの平均検査数は,AIRIS Vento導入前の約50件(外部への紹介検査)から70件(50〜90件)に増加した。検査領域は,腰・股関節・膝を中心とした整形領域が70〜80%を占め,このほか脳梗塞が疑われる外来・入院患者の頭部検査など,中核病院へ橋渡しをするための診療に活用されている。
AIRIS Ventoは,2本の柱を磁場中心部より後方に配置することで,頭部検査の場合にも患者の左右方向に柱がなく,開放感が保たれる設計となっている。山内技師は,「検査をしていくうちに,閉所恐怖症の方にとっては,ガントリのギャップよりも,横が開いているという体感が非常に重要であることがわかってきました。膝や腰などの検査では,フットファーストのポジショニングにより頭部がガントリ外に出ている安心感があるようですし,大きな音に対して恐怖心を持つ患者さんにとっても,AIRIS Ventoはやさしい装置であると実感します」と話す。
林本部長も,患者サービス向上の視点から見たメリットを次のように述べる。
「AIRIS Ventoの導入で当日中の検査が可能になり,患者さんの負担軽減につながっています。また,オープンMRIがあるということで,市内外から閉所恐怖症の患者さんが検査紹介されることもありますが,不安そうに来院した患者さんに喜んでいただいたときには,AIRIS Ventoを導入して本当に良かったと思いました」
■症例1:脊椎圧迫骨折
■症例2:大腿骨頸部骨折
診断から治療までが迅速化し治療後の患者QOLにも寄与
AIRIS Ventoには,Radial Scan技術によるモーションアーチファクト低減機能“RADAR”が実装されている。山内技師は,「検査時には体動の少ない撮像ができるように,腕や膝の隙間をタオルで固定するなど工夫していますが,それでも体動がある患者さんにはRADARが有効です」と説明する。
野瀬院長は,AIRIS Vento導入で診断から治療までが格段に迅速化した点を評価する。
「以前は,初診で骨折が疑われると,紹介検査,結果を待って再診,そこから治療装具の調整と,治療開始までにタイムラグがありました。骨折疑いがあればすぐに検査できることで,診断から治療方針の決定,治療へと最短で進められるようになり,患者さんの治療後のQOLにも良い影響を与えていると実感しています。小回りの利く個人病院だからこそのMRI導入のメリットだと思います」
AIRIS Vento導入前に月80〜100件実施していたCT検査の件数は,現在もほぼ変わっていない。林本部長は,「CT検査件数が減少していないことから,単純にCTで行っていた検査がMRIに移ったのではないと考えられます。それだけ画像検査のニーズが高かったのであり,現在は患者さんにも満足していただける適切な検査環境となっているのではないでしょうか」と見ている。さらに,AIRIS Vento導入を機に,診療放射線技師を新たに1名採用したことから,2017年1月からは心臓CT検査も開始することができ,臨床と経営両面において大きなメリットをもたらしている。
外傷救急や紹介検査の受け入れで地域へのさらなる貢献をめざす
AIRIS Ventoに対しては地域からの期待の声も高く,2017年4月より開業医からの検査予約の受け付けも開始する。また,同院は神戸第二次救急病院として輪番制で急性外傷の患者を受け入れていることから,野瀬院長は,「AIRIS Vento導入により,急性外傷の患者さんに対してCTとMRIのどちらでも選べるようになったことは大きいと思います」と述べ,「今後は,医師と放射線科スタッフが一緒になって,AIRIS Ventoのポテンシャルを引き出し,診療に活用していきたいと思います」と展望した。
AIRIS Ventoを活用した診療で,地域へのさらなる貢献が期待される。
(2017年2月7日取材)
〒653-0042
兵庫県神戸市長田区二葉町5-1-36
TEL 078-641-2424
http://nose.webmedipr.jp
診療科目:内科,外科,整形外科,循環器内科,泌尿器科,リハビリテーション科
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