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快適な検査環境を提供する1.5T超電導MRIシステム「ECHELON Smart」登場
2017-4-25
図1 ECHELON Smart外観
MRIでは1回の検査で複数のコントラスト画像が得られるというメリットがありますが,検査時間に数十分の時間がかかり,検査中は大きな音がするなど被検者に負担がかかるという課題があります。新登場の1.5T 超電導MRIシステム「ECHELON Smart」(図1)は,“クオリティ” “スピード” “コンフォート”をコンセプトとしており,診断に最も重要な高画質を実現しながら,静音化技術や操作者を支援する機能を搭載することで,被検者だけでなくMRIシステムを操作する操作者にも快適な検査環境を提供します。さらに,MRIシステムを使用していない時間帯に超電導磁石の冷却装置を一定時間停止する省エネ機能により,ランニングコストを抑え,経営効率の改善にも貢献できます。
ECHELON Smartの特長技術
1.ワークフローを改善するシステム受信コイル “Workflow Coil System”
ECHELON Smartの受信コイルシステム(図2)は,広い感度範囲と高いSNRを両立し,さまざまなワークフローを考慮したシステムです。テーブルに組み込まれた脊椎コイルにより,被検者が寝るだけで脊椎の撮像が可能です。ここで頭部用コイルをスライドしてセッティングするだけで,頭部と全脊椎の撮像ができます。また,この頭部用コイルをテーブルに置いたまま腹部コイルを乗せるだけで腹部撮像が可能なので,受信コイルの交換にかかる時間を短縮して,ワークフローを向上できます。
2.高画質を実現する “Smart Engine”
従来のMRIシステムは,受信コイルで検出した信号をアナログ回路で周波数変換し,画像再構成をしていましたが,このアナログ回路ではノイズ混入による画質への影響がありました。本装置には,高速A/Dコンバータ(アナログ・デジタル変換器)を搭載した高速AD受信システムを採用しました。これは,図3に示すように,高速A/Dコンバータにて高周波のMRI信号を直接デジタル情報に変換する受信方式です。
高速AD方式では,デジタル情報に変換したMRI信号を高精度な演算フィルタで処理するので,ノイズの混入やひずみの発生を防ぐことができます。また,マルチチャンネル受信システムではA/D変換回路までをチャンネル数分用意する必要があるので,回路規模が増大する問題がありますが,デジタル演算処理では時分割演算にて高速に処理することが可能であり,信頼性の向上にも寄与します。
3.画質,撮像時間に影響の少ない静音化技術 “Smart Comfort”
日立独自の静音化技術Smart Comfortは,撮像時間,コントラスト,SNR,空間分解能をほぼ変更しない条件で,撮像音を最大で94%*1低減します。これは,撮像音のシミュレーションを活用することで傾斜磁場パルスの波形を低騒音形状に最適化することにより実現しました。
4.消費電力を低減する省エネ機能 “Smart Eco”
超電導MRIシステムは,検査に使用していない時でも超電導状態を維持するために液体ヘリウムを電力で冷却しています。このため高額なランニングコストがかかりますが,本装置に搭載された省エネ機能は,MRIシステムを使用していない時間帯などに冷却装置を一定時間停止させることで,液体ヘリウムを蒸発させない条件で効果的に電力消費を削減します。この省エネ機能により,MRIシステム単体において最大で17%*1のランニングコスト低減を実現しました。
5.自由なレイアウトでMRI導入の可能性を広げる “Smart Space”
超電導MRIシステムの設置で問題となるのが機械室のスペース確保です。本装置では,MRIガントリと機械室の電源ユニット間のケーブル長をこれまでよりも延長しました。これによりレイアウトフリーな配置が可能となり,MRI導入のハードルを下げることができます。特に,永久磁石型オープンMRIからの装置更新の場合,設置スペースが障害となるケースが多いのですが,機械室のレイアウト自由度を広げることでスペースを有効に活用できます(図4)。
6.被検者の動きによる画質劣化を抑える “RADAR”
RADARは,独自の手法によるラジアルスキャン技術を用いたモーションアーチファクト低減機能です。
日立のRADARはラジアルスキャンを拡張し,一般的に用いられているFSE法だけでなくSE法やDiffusion撮像にも応用できます。シーケンスの自由度が高く,撮像部位,撮像断面などによらず幅広く適用でき,ルーチン撮像に効果を発揮します。さらに,静音化技術Smart Comfortとの併用も可能で,MRI検査が苦手な被検者の検査環境をさらに改善することができます。
ECHELON Smartの画像例
図5に画像例を示します。ひずみの少ない拡散強調画像や高精細なMRA画像は,高い基本性能を示しています。BSIは磁化率の影響を強調した画像です。EPIシーケンスをベースとしており,高速撮像が可能です。isoFSEは3Dのアイソボクセル撮像機能で,可変フリップアングルを利用して高速に高精細3D画像を得ることができます。アイソボクセルのため,MPRにより任意断面を自由に再構成可能です。
さらに,脊椎の神経描出や膝関節の高精細画像など,全身にわたり高画質撮像を実現しています。
*1 撮像条件,使用条件により異なります。