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もり脳神経外科クリニック
ECHELON RXの導入による質の高い画像診断で中核病院と同等の医療を地域に提供
来院しやすい駅前に開業し,共同利用にも注力
2016-9-26
左から受付スタッフの寺川涼子さん,
田中三恵子さん,酒井良太郎事務長,森院長
もり脳神経外科クリニックは,2016年4月に東急大井町線・荏原町駅の目の前に立地するマンション内に開院した。開院と同時に日立製作所社製超電導型1.5T MRI「ECHELON RX」を導入し,森達郎院長の専門である脳神経領域を中心に活用している。受診当日のMRI検査を提供することで,緊急性の高い症例や地域での共同利用に高い有用性を発揮している。ECHELON RXの初期使用経験について,森院長と伊藤紀子技師長にお話をうかがった。
画像診断を重視した脳神経外科クリニックを駅前に開院
大学病院や総合病院で20年にわたり脳神経外科の診療に携わってきた森院長は,さまざまな患者さんと向き合う中で,退院して地域に戻る患者さんや脳卒中予備軍の人たちを支える地域医療に貢献したいという思いから,開業を決めた。クリニックの基本方針として画像診断を重視したと,森院長は次のように述べる。
「脳神経外科のクリニックを開業するにあたっては,画像診断は必須だと考えました。CTやオープンMRIも検討しましたが,VSRADなども含め,より良い画像で質の高い医療を提供するために,1.5T以上のMRIを導入することを決めました」
高磁場MRIの導入を前提に開院準備が進められた。立地の条件として,地元であることと,患者さんの利便性の高さを挙げた森院長は,その理由について,「診療時間外でもすぐに自宅から駆け付けられる範囲で検討しました。そして,MRIが経営的に負担となってしまう事態を防ぐためにも,患者さんが来院しやすい場所に開業し,選ばれるクリニックとすることが大切だと考えました」と説明する。
開院後は,周辺地域からだけではなく,近隣地域から電車で来院する患者さんも多い。受診理由は,頭痛やめまいなどの自覚症状や,脳卒中予防,認知症の予防・診断などであり,新患患者は開院3か月で約800人と順調に伸びている。
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日立への信頼感が装置選定の決め手
導入するMRIは,テナント入居であることから電源設備やシールド,騒音などに配慮し,また,検査時の安全面や経営面も考慮して1.5T装置と決め,数社の装置を検討した。勤務医時代にさまざまなMRI装置の画像を見てきた森院長は,選定の経緯について,「脳神経外科部長を務めていた時に,装置更新のコンペティションで各社の装置について学ぶことができ,その経験を基に最終的に2社に絞り込みました。現在の装置は,どのメーカーでもある程度,求めるレベルの画質を得ることができます。長期間使用することを踏まえ,最終的には担当者の対応などから,より信頼を置けると判断した日立のECHELON RXに決定しました」と述べる。
テナント,駅前,商店街の中など,MRIの設置が容易とは言えない環境ながらも,日立の持つ技術を生かして設計から搬入まで無事に完了し,開院に至った。
受診当日の検査実施で緊急症例も適切に病院と連携
MRI検査は,頭部領域を中心に多い日で1日10件以上実施しており,検査は2名の臨床検査技師が主に担当している。
頭部領域のMRI検査は,T1強調画像,T2強調画像,FLAIR,拡散強調画像を基本プロトコールとし,患者さんの症状に合わせてT2*強調画像やMRAを追加している。また,副鼻腔炎や頸椎症が疑われる場合にはサジタルやコロナルを追加し,顔面痙攣があればMRIシステルノグラフィを施行している。
画質について森院長は,「脳神経外科の診断において拡散強調画像とMRAは非常に重要ですが,満足のいく明瞭な画像を得られています」と評価している。
MRI検査は,受診当日の検査,結果説明を基本としている。中核病院では難しい当日検査ができることは,脳神経外科の診療において非常に有用であると,森院長は実例を挙げて述べる。
「ある患者さんは,よだれが垂れる,箸を落とすといった症状があり救急病院を受診しましたが,CT検査で異常がなく,翌日心配になり近医を受診して風邪と診断されたそうです。不安が拭えず,当院を受診しMRIを撮像したところ,小さな脳梗塞が見つかり,MRAでは中大脳動脈が描出されず,すぐに大学病院に紹介となりました。また,来院した患者さんのMRIでクモ膜下出血が見つかり,患者さんを説得して病院に同行し,緊急手術となったこともあります」
こういった症例を適切に連携病院につなげることで,病院との信頼関係を築くことができており,術後のフォローを依頼されるケースも増えているという。
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高い操作性とアシスト機能でスムーズに検査を施行
臨床検査技師の伊藤技師長は,前職で10年以上の日立社製MRIの操作経験を持つ。伊藤技師長は,ECHELON RXの操作性や画像の印象について,「日立MRIはコンソールの操作性が良く,操作パネルが見やすいと以前から感じていましたが,ECHELON RXも操作しやすい装置です。拡散強調画像と脂肪抑制画像が非常に明瞭で,MRAの撮像時間の短さにも驚きました」と述べる。
ワークフロー向上を追究して開発されたECHELON RXには,位置決めをサポートする“AutoPose機能”や撮像条件変更時に設定可能なパラメータを表示する“Suggestion機能”などが実装されている。また,頭部コイルは寝台に据え置きで運用でき,脊椎コイルは寝台に組み込まれているなど,容易なセッティングが特長だ。
伊藤技師長は,「頭部検査ではOMラインのAutoPose機能は大変便利ですし,Suggestion機能も日本語表示でわかりやすく役立っています。また,胸椎検査では,椎体を数えやすくするため頸椎のスキャノグラムを撮像してから胸椎を撮像します。その際にもコイルの付け替えやレーザー位置の再設定が不要で,操作パネルのS-mapの位置を変えるだけで寝台が自動で移動するため,検査時間の短縮につながっています。圧迫骨折などで痛みを伴う患者さんの負担も軽減できていると思います」と評価している。
■症例1: Hemodynamic stressによる脳梗塞(38歳,女性)
■症例2:未破裂巨大脳動脈瘤(55歳,女性)
高いスループットで急な検査にもフレキシブルに対応
同院では,MRIの共同利用のため,近隣からの検査紹介を積極的に受け入れている。特に整形外科からの紹介が多く,整形領域については遠隔読影を活用し,質の高いレポートも提供している。自身でもMRI操作を行う森院長は,ECHELON RXの導入に満足していると話す。
「専門の頭部や頸椎,脊髄などは当然問題なく撮像できますし,関節領域や骨盤領域もスムーズに検査できるようになりました。コンソール操作は簡単で,VR画像やMIP画像の処理もすぐに習得でき,診療で活用しています」
検査は1件当たり20〜30分とスループットが良いため,急な紹介検査も当日中に対応できるなど,フレキシブルな運用が可能になっている。
今後の展望について,森院長は,「MRIの共同利用を,整形領域にかぎらず進めたいと考えています。地域には,前立腺や婦人科など骨盤領域のニーズも多いと思われますし,将来的には下肢MRAや乳房MRIなど,幅広く活用したいと思います。地域のクリニックや病院との連携は大切ですので,ツールのひとつとしてMRIを役立てていきます」と話す。
MRIを軸とした地域医療連携の今後の展開が注目される。
(2016年7月11日取材)
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診療科目:脳神経外科,内科