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第2回ECHELON ユーザーズミーティングを大阪で開催
第三席 サマリー 頭部領域の高精細画像について
2013-9-25
会場の様子
大阪で開催された2回目となるECHELON ユーザーズミーティングには,遠くは九州からの出席者も含め26名が参加した。
はじめに,CT・MR営業本部の横山 裕本部長が挨拶に立ち,3T MRI「TRILLIUM OVAL」の発表により,0.25〜3Tまでフルラインナップできたのは,ユーザーの支援があってこそと感謝を述べるとともに,今後もさらに拡大していくMRI事業への支援を呼びかけた。プログラムは,日立メディコ社からの情報提供と,ユーザー発表3題で構成された。第一席の「ECHELON 撮像パラメータの紹介」では,普段の撮像で使用することの多いShimと各種同期計測(呼吸同期,脈波同期,心電同期)のパラメータについて,設定のポイントや注意点など実用に即した解説を行った。また,第二席の「ECHELON パラメータ設定のコツ」では,GE法のパラメータ設定のポイントを解説。さまざまなGE法を紹介し,GE法でのT1WI/T2*WIなどの撮像法やコントラスト決定のパラメータなどが示された。
開催日:2013年5月18日(土)
会場:日立メディコ関西支店会議室(大阪
●第一席
「ECHELON 撮像パラメータの紹介」
石田 睦(日立メディコ CT・MRアプリ課)
●第二席
「ECHELON パラメータ設定のコツ」
岡本英司(日立メディコ CT・MRアプリ課)
●第三席
「頭部領域の高精細画像について」
原田邦明(日立メディコ MRIシステム本部)
*発表内容のサマリーを下記に掲載。
●第四席(ユーザー発表(1))
「感性情報に対するリアルタイムf-MRIの取り組みについて」
田中美里(同志社大学大学院生命医科学研究科生命医科学専攻医工学コース)
●第五席(ユーザー発表(2))
「当院におけるモーションアーチファクト対策」
山本卓典(神戸マリナーズ厚生会病院)
●第六席 (ユーザー発表(3))
「腹部撮像にまつわるえとせとら」
浮田啓一郎(公益財団法人昭和会
今給黎総合病院中央放射線部)
*敬称略
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第三席 サマリー
頭部領域の高精細画像について
原田邦明(株式会社日立メディコMRIシステム本部クリニカルサイエンスグループ)
脳のMRI検査において,4~6mmスライスのルーチン検査で診断できない疾患は多く,MRAにおいても,1~1.2mmスライスの全脳を対象とした撮像では偽病変を伴う場合もある。こうした検査では,目的に応じて高精細画像が役立ち,結果的に疾患の早期発見・早期治療に結び付けることができる。ユーザーズミーティングでは,ECHELONユーザーの皆様に臨床的背景,必要性,解剖や高精細画像の撮像法,および操作卓を使用した画像処理方法について紹介した。
1.高精細MRA
2~3mm程度の比較的小さな動脈瘤に対して,ルーチンMRAのプロトコールの空間分解能は十分ではない場合がある。疑わしい領域,あるいは動脈瘤の経過観察を高精細に撮像することで,偽病変の除外,リスクの評価,治療方針の決定に大きく役立つとされている。
日立メディコの1.5T MRI装置は,このような検査に対応できる十分なポテンシャルを備えている。図1は,右中大脳動脈に動脈瘤,あるいは狭窄があった場合の撮像方法(b),ならびに得られたVR(volume rendering)画像(a)である。空間分解能は0.6mm isotropic dataで対象血管だけのin-flow効果を最大に得るためにサジタルの設定でねらう方法である。
また,前大脳動脈,前交通動脈部も動脈瘤の好発部位である。図2は,前大脳動脈をターゲットとした高精細MRAの撮像方法(b),ならびにMIP画像(a)である。これもサジタルの設定で,内頸動脈にスラブが重ならないようにスライス枚数(スラブ厚)を設定することがコツである。また,MIPだけでなくVR処理をすることによって,前交通動脈の構造をより正確に観察することができ,動脈瘤の診断に非常に有効とされている(図3)。
2.高精細MRI(神経・血管の描出)
三叉神経痛などの末梢神経症状のある患者に対し,頭蓋底の神経・血管系を詳細に描出させることは,正確な診断,そして,適切な治療につながるため,大変重要とされている。日立メディコでは,頭蓋底の高精細画像を取得するシーケンスとして,T1系では3D-RSSG,T2系では3D-BASGがあり,それぞれの特徴,撮像方法,画像処理方法,解剖,診断のポイントについて紹介した。
まず,3D-RSSGでは,高いSNRとT1コントラストを有効に利用するとともに,限定した領域をアキシャルで撮像し,動脈の強いin-flow効果を得ることで,解剖学的に細い神経と血管を良好に描出できる。図4aは,中脳レベルを動眼神経の走行と平行にリフォーマットした画像である。後大脳動脈(↑)がin-flow効果により高信号,中脳・動眼神経(←)が中等度信号,そして,脳脊髄液が低信号でそれぞれ描出されるため,神経と血管の関係を確認することができる。一方,T2系のコントラストを有する3D-BASG(図4b)も,詳細な構造を描出するのに有効なシーケンスである。3D-BASGは,脳脊髄液を高信号で描出でき,神経・血管系の構造を相対的に低信号として観察できる。そのため,流れのある脳脊髄液の信号変化を少なく撮像する工夫が必要となる。今回は,頭尾方向に流れている橋前槽の脳脊髄液をコロナルで撮像し(図5),必要に応じてリフォーマットする方法を紹介した。図6は,斜台とほぼ平行なコロナルで撮像した画像であり,流れによるアーチファクトがほとんどない。図の矢印は,動眼神経(左),三叉神経(中央),外転神経(右)を示し,周囲の血管との関係を明らかにするリフォーマット画像である。
さらに,一般的には2D-FSEで撮像されるとされるBPAS (basi-parallel anatomical scanning)を,3D-BASGの画像処理により三次元的に観察する方法について紹介した(図7)。
最後に,このユーザーズミーティングを通じ,ユーザーの皆様に日立メディコのMRI装置の性能を十分に引き出していただき,一人でも多くの患者さんのQOLの向上に貢献できれば幸いである。