緊急インタビュー 地域医療の崩壊をどう救う?ITと地域連携 ベンダー編
NEC 齋藤直和 日本電気株式会社医療ソリューション事業部事業推進部長 システム拡張にも柔軟に対応し高度なID管理機能を持つ地域連携システムを低コストで構築可能に
NECでは診療データの有効活用のために地域連携が重要と考えており,一方通行にならないシステムの開発を進めてきました。電子カルテ/地域医療連携ソリューションは高度なID管理機能により,地域連携のグループ間の接続も容易で,将来のシステム拡張にも柔軟に対応します。
一方通行にならない地域連携をめざす

─NECでは,地域連携におけるITの活用に対し,どのように取り組んでいますか。

齋藤氏:NECでは,医療分野において,300床以上の急性期病院向けの電子カルテシステムを中心に事業を展開してきました。私たちは,急性期病院では診療データを自施設や患者さんのために有効に活用し,在院日数を短縮して,病床稼働率を上げることが重要なテーマだと考えています。また,地域連携をスムーズにするため,連携先の医療機関との間で,診療データを共有することも大事です。一方で,従来のITを活用した地域連携では,検査画像のCDでの提供や,紹介状作成などが行われていましたが,それでは情報量が不足しています。現状では,医療機関に負担をかけずにネットワークを利用して情報を共有できるシステムが求められるようになってきました。また,複数の医療機関が診療するという機能分化の方向性を考慮すると,1機関が一方通行で情報提供するだけでは地域連携はうまく機能しません。
  これらを踏まえ,NECでは今年の夏に電子カルテ/地域医療連携ソリューションを発表しました。

拡張性が高い地域連携システムを低コストで実現

─製品の特長を教えてください。

齋藤氏:この製品は,電子カルテシステムとしてNECのMegaOakHRまたはシーエスアイのMI・RA・Isシリーズ,エスイーシーが提供する地域医療連携ネットワークサービスのID-Link,診療情報公開用サーバで構成されています。個々の医療機関が管理するデータを,サービスセンターでリンケージすることによって,連携するグループ(Union)内において,1つのIDで複数の医療機関に分散している1人の患者さんの診療情報を,1画面上に時系列に表示できます。開発に当たっては,もともと連携が行われていた地域のニーズを取り入れながら進めており,低コストで導入できるようにしたことも大きな特長です。
  また,ある中核病院を中心とした地域連携のグループがほかのグループと連携する場合,中核病院間を直接ネットワークで結ぶのは困難なことがあり,さらに別グループと連携を広げていくという拡張性にもいろいろな課題がありました。しかし,電子カルテ/地域連携ソリューションでは,サービスセンターを介することで,例えば都道府県や診療圏をまたがるようなケース,複数の地域連携グループ間での情報共有も,同一のIDを用いて行うことが可能です。このように地域連携の範囲を拡大することにも,柔軟に対応できるようになっています。

─現在,どのような地域で導入されていますか。

齋藤氏:北海道・道南地域の市立函館病院や高橋病院ほか4施設,佐賀県の白石共立病院や佐賀大学医学部附属病院など中核6病院,名古屋市の大同病院などがあります。佐賀県の事例では,HL7で他社の電子カルテシステムとも接続しています。このように標準化に対応しているため,他社のシステムとも容易に連携できることも電子カルテ/地域連携ソリューションの特長の1つです。

メリットを享受するためにリテラシーの向上を

─読者へのメッセージをお願いします。

齋藤氏:IT化によって,今後データの活用が広がると予想されますが,安全性や個人情報保護対策すべてをITでカバーすることは難しいと思います。しかし,例えば自動車の運転が危険を伴うとともにそれを上回るメリットがあるように,医療のIT化にも大きな効果があります。われわれも,読者の皆さまとともに情報リテラシーを高め,より良いシステムの実現に向けて努力していきます。

(「ITvision」No.19(2009年10月25日発行)「特集 地域連携はどこまで進んだか」より転載)

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