緊急インタビュー 地域医療の崩壊をどう救う?ITと地域連携 ベンダー編
富士通 長年培ってきたHOPEブランドの実績とノウハウを生かして地域連携のために安心・安全なシステムを提供 園田 武治 富士通株式会社ヘルスケアソリューション事業本部医療ソリューション事業部長 佐藤 秀暢 富士通株式会社ヘルスケアソリューション事業本部医療ソリューション事業部営業統括部長
富士通は,国内で初めて電子カルテシステムを稼働させるなどの長年のノウハウを基に,2年前にHOPE/地域連携を発表しました。さらに新バージョンではシステムの拡張性を高め,複数の地域連携ネットワーク間での情報共有も可能にして,地域連携における安心・安全を提供していきます。
他社に先駆けてパッケージ化した地域連携システムを発表

─富士通がこれまで行ってきた地域連携のソリューションについてお聞かせください。

佐藤氏:富士通は,10年前の1999年に,島根県立中央病院において,国内初となる外来・病棟での電子カルテシステムを稼働させました。その当初から,電子化された診療情報を地域の医療機関間で共有することを考えてきました。その後,2000年度には経済産業省の「先進的情報技術活用型医療機関等ネットワーク化推進事業」に採択された全国26地域でのプロジェクトのうち,島根県の医療ネットしまねや宮崎県のはにわネット,熊本県のひご・メドなどの地域連携システムの開発にかかわってきました。
  その後,電子カルテシステムの普及が進む中で,2年前にはパッケージシステムとして,HOPE/地域連携を発表しました。当時はパッケージされた地域連携システムはほとんどなく,地域連携でのITの活用も,紹介状や診療情報提供書の作成・送受信といった,地域連携室の業務を効率化するような限定的なものでした。HOPE/地域連携は,製品化されて以降,北海道の旭川赤十字病院や石川県の金沢医療センターなど,数十の医療機関に採用されており,連携先の施設との間にネットワークを構築し,電子カルテシステムの診療情報の公開・参照に活用されています。

「1対n型」から「n対n型」へ拡張性の高いネットワークを構築

─HOPE/地域連携はどのようなシステムですか。

園田氏:医療制度改革によって急性期などの病期別に機能分化がされることによって,医療機関から紙カルテには収まり切らないほどの診療情報が発生します。地域連携においては,このデータを一元的に管理することが重要となりますが,異なる電子カルテシステム同士でもシームレスに診療情報を参照できる環境が必要になります。そこで,富士通では標準化を重視し,厚生労働省が進めるSS-MIX(厚生労働省電子的診療情報交換推進事業)をベースにしたシステムとしました。

─HOPE/地域連携の特長を教えてください。

佐藤氏:例えば,患者さんがまず診療所に行って,その後に中核病院に行った場合,2つのIDができます。このIDをひも付けて患者さんを特定できるようにすることで,それぞれの医療機関が管理している診療情報が参照可能になります。こうした「1対n型」のネットワークを発展させ,中核病院と中核病院それぞれの地域連携ネットワークを結ぶ「n対n型」に拡張することもできます。また,中核病院が富士通の電子カルテシステムを採用している場合,連携先の医療機関では,オーダ,検査結果,画像,レポートなどすべての診療情報を参照できる親和性の高さも特長です。

HOPEブランドのノウハウを生かす

─今後の取り組みや読者へのメッセージをお願いします。

佐藤氏:富士通は国内で初めて電子カルテシステムを稼働させ,おかげさまでトップシェアを維持しています。いままで培ってきたノウハウを生かし,地域連携システムの開発を進めていきますので,地域医療にぜひ役立てていただきたいと思います。

園田氏:富士通は,HOPEブランドとして電子カルテシステムをはじめヘルスケア分野のシステムをすべて自社製品で持っています。これからもユーザーをトータル的にサポートし,安心・安全を提供していきます。

(「ITvision」No.19(2009年10月25日発行)「特集 地域連携はどこまで進んだか」より転載)

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