日本CT検診学会の夏期セミナーが7月21日(土),日比谷高校・星陵會館にて開催された。プログラム中の第6回技術セミナーにおいて,Japan-DIRの機能を組み込んだデータベース「CADI」の報告が,同学会技術部会の村松禎久氏(国立国際医療研究センター)と石垣陸太氏(京都医療科学大学)により行われた。
Japan-DIRとは,わが国の低線量肺がんCT検診における受診者の被ばく線量の把握と管理を目指し,米国におけるACR-DIRを参考にして構築中の線量管理システムであり,新しい肺がんCT検診業務支援データベース「CADI」に加わる新たな機能として位置づけられる(DIRは,Dose Index Registryの略,CADIは,Combined Application Dose Indexの意の造語)。
肺がんCT検診は低線量での実施が必須である。肺がんCT検診認定機構では今年度の事業として,施設認定の開始を目指しているが,低線量撮影は絶対的条件の一つになる。そのため,根拠ある証拠を示す方法について,認定機構の理事であり,同学会技術部会の花井耕造部会長(国立がん研究センター東病院)を中心に検討し,すでにその仕組みを構築し運用しているACR-DIRの研究を開始した。認定医師,認定技師から,さらに認定施設も視野に入れての動きである。
ACR-DIRは,DICOM規格のDICOM CT RDSRファイルに記載されている線量情報を用いて,米国放射線医学会(ACR)が運用している被ばく線量管理システムであり,現在約400施設が参加登録して運用されている。“DICOM SR:DICOM Structured Reportの情報”を専用ソフトで匿名化してACRのサーバ/データベースに自動送信し,利用者はWebでログインして自動解析された根拠ある結果を参照できる。一連のデータのやりとりについて施設側にはほとんど負担はかからない。ACR-DIRにより,他施設と線量を比較したり,自施設の線量管理に反映させることができる。
石垣氏はUCLAを訪問してACR-DIRの実態をつぶさに調査し,Japan-DIRの機能を組み込んだCADIを開発。Japan-DIRのパイロットプロジェクトには当初より,東芝メディカルシステムズ(株)が積極的に協力している。CADIは,国立がん研究センター東病院にて接続試験を実施し,この日の発表と実機デモに至った。
今後の予定としては,2013年2月以降,試験運用の協力施設を募り,完成を目指す。村松氏と石垣氏は,同学会がわが国の先駆けとしてJapan-DIRを実施することで,CT検診の安全性と精度の高さを根拠をもって国民にアピールできると,抱負を述べた。 |