富士フイルムメディカル(株)は2012年7月7日(土),東京ステーションコンファレンス(東京都千代田区)において,「FUJIFILMメディカルセミナー2012」を開催した。このセミナーは,同社の最新技術とその臨床応用を紹介する場として,プログラムを2部に分けて構成された。1部は「先進画像による癌治療の進歩」,2部は「FUJIFILMが考えるFPDの将来性」がテーマとなった。
1部では,同社が“3次元画像解析システムボリュームアナライザー”と位置づけている3D画像処理ワークステーション「SYNAPSE VINCENT」にフォーカスし,その臨床現場での運用方法や,診断,治療における有用性が報告された。座長は,東京医科大学病院呼吸器外科主任教授の池田徳彦氏。
まず,座長の池田氏が「肺癌発見から診断,手術リハーサルまで,最新トレンド紹介」と題して発表した。池田氏は,わが国における肺がんの状況について,ほかのがんに比べ罹患数に対して死亡数が多いと説明したほか,早期発見,診断に有効な低線量CTについて解説した。その上で,より小さながんの診断,治療が重要であるとし,経気管支肺生検(TBLB)においてSYNAPSE VINCENTでのナビゲーションにより診断率が向上した結果を示した。さらに池田氏は,SYNAPSE VINCENTで作成した3D画像による術前シミュレーションを紹介。今後,質の高い,安全・安心ながん診療を行っていくためには,ロボット手術などとともに,3D画像などが重要な技術となるとまとめた。
続いて登壇した,横浜市立大学附属市民総合医療センター診療放射線技師の眞野陽貴氏は,「SYNAPSE VINCENTの院内運用と解析機能紹介」をテーマに講演した。眞野氏は,同センターの概況を示した上で,現在使用しているSYNAPSE VINCENTの構成を説明した。サーバは15TB,最大アクセス数は24台で,クライアントは専用3台,PACSクライアントとの連携が26台となっている。眞野氏は,多列CTの導入とともにCTの検査数が増大化しており,それに伴い3D画像作成数も増加の一途を辿っていると述べた。そして,こうした状況にもかかわらず,画像処理に従事する職員の超過勤務時間は減少している説明。その要因について,ネットワーク型ワークステーションであること,自動解析機能を搭載していることという,SYNAPSE VINCENTの特長を挙げた。特に,診療放射線技師がある程度画像処理を行い,その後医師が処理を引き継ぐ“スナップショット”により,効率化が図れているという。さらに,眞野氏は,同センターで用いている代表的なアプリケーションとして,「脳血管抽出」「冠動脈解析」「3Dビューア」の症例画像を供覧した。
ついで,1部最後の講演として,山梨大学医学部附属病院放射線診断科の本杉宇太郎氏による「肝臓領域におけるCT,MRIの撮像から解析まで」が行われた。本杉氏は,まず撮像方法の適正化として,ダイナミックCTとEOBプリモビスト造影MRIについて,それぞれの造影のタイミングなどを解説した。さらに,本杉氏は,肝臓領域における3D画像解析の意義についても説明した。本杉氏は,その目的を肝門部の解剖,肝区域の把握,腫瘍と血管の位置関係,体積測定だとした上で,2012年度の診療報酬改定において,肝切除術の術前の3D画像処理に2000点の加算が新設されたことについて触れた。そして,同院では肝切除術の全例において,術前の3D画像処理を行っているとし,もはや肝臓領域における三次元解析は日常診療であるとまとめた。
休憩を挟んで行われた2部では,まず富士フイルム(株)メディカルシステム開発センターの桑原 健氏が「富士フイルムの線量低減への取り組み」をテーマに登壇した。桑原氏は同社FPDの線量低減技術として,高感度化,低ノイズ化,画像処理,画質評価の4つポイントごとに解説。CRに比べてGoS素材のFPDが約1/2,CsI素材のFPDが約1/3の線量で,高画質を実現していると説明した。また,桑原氏は,Exposure Index(EI)への取り組みについても紹介した。現在,各社の線量指標値が異なっており,それが線量管理の問題となっている。こうした中で,EIについてのIEC規格が策定されている。桑原氏はこうした規格に準拠し,線量管理を容易にしていきたいと述べた。
次いで,日本大学医学部附属板橋病院診療放射線技師の小嶌 徹氏が,「回診車用FPD 富士フイルムCALNEO flex導入による業務効率化について」と題して講演した。同院では,「CALNEO flex」導入によるワークフローの変化について,CRとの比較を行った。小嶌氏は三次救急における初療室での胸部撮影,CT検査後の追加単純撮影,病棟出張撮影のケースでの検証結果を説明。いずれもCRより検査時間を短縮することができたと述べた。そして,メリットとして,入力作業でのミス削減,被検者・スタッフの負担軽減,作業時間の短縮,再撮影のリスク低減などを挙げた。
当日は,主に東京地区の診療放射線技師などユーザーが参加。演者と参加者との間で質疑応答が行われるなど,最後まで盛り上がりを見せて閉会した。 |