腹部造影超音波フォーラム2012(第一三共株式会社主催)が,7月7日(土),東京・品川のTKPガーデンシティ品川で開催された。ソナゾイド研究会として2007年にスタートした同フォーラムは,2010年に改称しソナゾイドの普及と臨床的な位置づけの確立をめざして年1回の講演会を行っている。挨拶した代表世話人の森安史典氏(東京医科大学)は,「ソナゾイドは,日本で市販されて5年半が経過したが,この間,のべ30万件以上が投与され,肝腫瘤性疾患の診療において確固たる役割を担っている。日本での認可,市販が先行したが,アジアにおいては韓国で2012年7月から市販が開始され,中国,台湾などでも臨床試験がスタートするなど広がりを見せている。また,日本では,乳腺領域の適応申請がされ,承認を待っている状態だ。今後,ソナゾイドの臨床がより深く,広く普及していくことが期待される」と述べた。
当日は,第一三共(株)からの特定使用成績調査「ソナゾイド注射用ガイド下におけるラジオ波焼灼療法」の結果報告に続いて,プログラムを変更し第二部の「AM法の技術面と臨床面からの解説」,第三部「診断・治療支援の部」を先に行い,最後に第一部の「講習の部」の順番で進められた。
第二部は,熊田 卓氏(大垣市民病院),飯島尋子氏(兵庫医科大学)を座長として,2題の講演が行われた。最初に,小笠原正文氏(GEヘルスケア・ジャパン)が「AM法による造影イメージングの原理」を講演し,造影超音波で用いられるイメージング法であるAmplitude Modulation(AM)法の原理を解説し,Phase Inversion(PI)法と比較したAM法のメリットについて述べた。続いて,臨床面として松本直樹氏(駿河台日本大学病院)が,「HCC局所療法に対する治療効果判定−AM法を用いた効果判定の利点と欠点」を講演した。松本氏は,高エコー腫瘤の描出に優れるAM法を用いて,肝細胞がんの局所治療後の効果判定をGEのVolume Navigation(V-Nav)で評価した結果を報告した。
第三部の診断・治療支援は,松田康雄氏(八尾徳洲会総合病院),森安氏を座長として4題の講演が行われた。「総合画像診断による非多血性病変の治療適応〜多施設共同研究による新しいアルゴリズムの提唱」では,土谷薫氏(武蔵野赤十字病院)が同施設を含む6施設の多施設共同研究で実施され提案された“非多血性かつEOB-MRI肝細胞相低信号結節149結節のソナゾイド造影超音波所見および病理組織所見を検討し,非多血性肝腫瘍性病変の診断アルゴリズム(案)”について紹介した。「肝切除術におけるソナゾイド術中造影超音波の有用性に関する臨床試験」を講演した有田淳一氏(がん研究会有明病院)は,東大などで行ったHCC,大腸がん肝転移症例の術中超音波の感度,特異度,正診率などの臨床試験の結果を報告した。続いて,中村進一郎氏(岡山大学病院)が「Fusionおよび3D/4Dにおける造影超音波」を講演し,ソナゾイドと東芝のSmart Fusionによるラジオ波焼灼療法の有用性と3D/4Dプローブの可能性について述べた。最後に,症例提示として「まれな肝腫瘤性病変」を平良淳一氏(東京医科大学)が講演し,“肝類上皮血管内皮腫”,“肝血管筋脂肪腫”,“肝炎症性偽腫瘍”について造影超音波所見と他の画像診断を含めて紹介した。
休憩を挟んで、講習の部「造影のテクニカルな課題解決〜アンサーパッド使用による聴衆参加型の講習」が行われ,田中弘教氏(兵庫医科大学)が出題と解説を担当した。講習では,出題に対して手元のアンサーパッドを使って5つの選択肢から回答し,結果は直ちに集計されてグラフで表示された。今回は,造影超音波における手技や検査方法のヒントやテクニックを中心に8題が出題された。Q:肋間操作困難症例の対応で最も有用な手法は?→A:マイクロコンベックスの選択,Q:肝表の病変の観察の描出困難時に有効な対処法は?→A:高周波プローブの選択,Q:深部病変の観察で最も有効な対処法は?→A:周波数を下げるなど,テクニカルな解説と臨床例を中心に出題し,その対処方法を具体的に解説した。 |