腹部造影超音波フォーラム2010が,7月10日(土),東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催された。同フォーラムは,昨年までソナゾイド研究会として3回開かれてきたが,ソナゾイドの認可・上市から3年半が経過し,使用医療機関も増え,造影超音波による臨床的な位置づけが確立されてきたことから,今回より名称変更して新しくスタートした。挨拶した代表世話人の森安史典氏(東京医科大学消化器内科教授)は,「ソナゾイドは,これまでに約20万例の患者に使用され,使用医療機関も1400施設と日本の肝腫瘤性疾患の診療における,診断,治療支援,治療後の効果判定の場面で欠くべからざる手法として定着しつつある。本フォーラムでのディスカッションを通じて,明日からの診療に役に立てればと考えている」と述べた。
第一三共(株)学術調査部からのソナゾイド「使用成績調査結果の報告」に続いて,第一部「講習の部」,第二部「診断・治療支援の部」,第三部「パネルディスカッション」のプログラムで行われた。
第一部では「肝腫瘤性病変の造影超音波診断Q&A」として,今井康晴氏(東京医科大学消化器内科准教授)がアンサーパッドを使った聴衆参加型のセッションを行った。造影超音波やMRIなどの画像を提示し,参加者は手元に配られたアンサーパッドを使って疾患名を5つの選択肢から回答,結果はリアルタイムで集計されてグラフで表示された。肝細胞癌,肝血管腫の症例など全10問が出題された。アンサーパッドの練習を兼ねて行ったアンケート結果では,当日の参加者の内訳は内科医33%,超音波検査士27%, 超音波検査の経験年数は11年以上が53%,1週間で行う造影超音波件数は1〜5件が50%となっていた。
第2部の診断・治療支援の部では,松田康雄氏(八尾徳洲会総合病院肝臓外科 副院長)と工藤正俊氏(近畿大学医学部消化器内科教授)を座長として,造影超音波を用いた診断と治療支援における有用性について4題の講演が行われた。
今井康陽氏(市立池田病院消化器内科副院長)は,「肝細胞癌の診断と治療における造影超音波の位置付け−早期肝細胞癌を中心に」として,MDCTやEOB-MRIとの検出率の比較を,塩澤一恵氏(東邦大学医療センター大森病院消化器内科助教)は,「ソナゾイド造影超音波によるパラメトリックイメージ−造影超音波を用いた進行肝細胞癌に対するソラフェニブの治療評価」として,造影超音波とパラメトリックイメージングによる分子標的薬「ソラフェニブ」の早期治療評価の可能性について講演した。
また,小池幸宏氏(関東中央病院消化器内科医長)は,「転移性肝癌治療におけるソナゾイド使用の意義」として,転移性肝癌に対するRFA(ラジオ波焼灼療法)実施の際の造影超音波の有用性を,波多野悦朗氏(京都大学肝胆膵・移植外科講師)は,「転移性肝癌における術中超音波検査の意義」で,転移性肝癌の肝部分切除術における術中造影超音波検査の有用性について述べた。
第3部のパネルディスカッションでは,熊田卓氏(大垣市民病院消化器科部長)と飯島尋子氏(兵庫医科大学超音波センター内科肝胆膵科教授)が座長を務め,「造影超音波技術の問題解決」をテーマに,3人のパネリストがディスカッションを行った。討論に先立って西川徹氏(藤田保健衛生大学臨床検査部主任)が「深部病変における造影超音波の工夫」,是永圭子氏(川崎医科大学肝胆膵内科学講師)が「高輝度病変に対する後血管相(クッパー相)の観察について」,工藤大輔氏(弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座助教)が「術中ソナゾイド造影超音波が肝切除術に与える影響」を講演。続けて,造影超音波で課題とされている深部病変,高輝度病変,術中超音波への適応についてディスカッションが行われた。
*腹部造影超音波フォーラム2010の内容は,月刊インナービジョン2010年11月号(10月末発行)に特集として掲載の予定です。詳しくはそちらをご覧ください。 |