ホーム の中の取材報告の中の 2012の中の第5回日本医療コンシェルジュ研究会 開催 テーマは「IT活用と医療:新しいコンセプトと近未来のコミュニケーション深化」

取材報告

2012
第5回日本医療コンシェルジュ研究会 開催
テーマは「IT活用と医療:新しいコンセプトと近未来のコミュニケーション深化」

深津 博氏(理事長)
深津 博氏
(理事長)

杉浦伸一氏(名古屋大学大学院)
杉浦伸一氏
(名古屋大学大学院)

中川和明氏(東芝)
中川和明氏
(東芝)

一原武司氏(UGSE)
一原武司氏
(UGSE)

石川雅章氏(エスクリエイト)
石川雅章氏
(エスクリエイト)

野沢一太郎氏(富士通)
野沢一太郎氏
(富士通)

尾崎慎太郎氏(フィリップス・レスピロニクス)
尾崎慎太郎氏
(フィリップス・レスピロニクス)

  日本医療コンシェルジュ研究会は,2012年3月11日(日)に富士ソフト アキバビル(東京都千代田区)にて,「第5回日本医療コンシェルジュ研究会」を開催した(共催:特定非営利活動法人 日本医療コンシェルジュ研究所,協賛:株式会社シーエムアイ)。
  2006年に設立された日本医療コンシェルジュ研究所は,「患者の代理人」として病院における患者の受診環境を改善するための活動を行う医療コンシェルジュの啓発と育成を行っている。2012年2月までに,694名の医療コンシェルジュ(MC)の教育と資格認定を行っており,また,2008年の診療報酬改定で新に導入された医療事務作業補助者に相当するメディカルアシスタント(MA)の教育にも着手し,現在までに149名の資格認定を行っている。
  日本医療コンシェルジュ研究会は,MC/MAの受講や資格取得した人を対象に,今後の動向に関する最新の情報提供や,他施設との情報交換の機会を提供し,また,医療コンシェルジュに興味を持つ人に,MCとの交流を図る場を提供するために,2007年から開催されている。

  当日は,東日本大震災の発生からちょうど1年を迎え,開会に先立ち,黙とうが捧げられた。
  初めに,日本医療コンシェルジュ研究所理事長で,研究会会長を務める深津 博氏(愛知医科大学医療情報部特任教授)が開会挨拶に立ち,「日本医療コンシェルジュ研究会では,毎回サブテーマを設け,タイムリーな話題提供を行っている。過去4回はコミュニケーションや接遇をテーマに行ってきたが,医療とITの関係性,重要性が高まっているなか,ITを道具として活用していくことが医療従事者として必要と考え,医療とITをテーマにした」と,今回の研究会の主旨を述べた。
  続いて,杉浦伸一氏(名古屋大学大学院医学系研究科医療システム管理学寄附講座准教授)を座長に,中川和明氏((株)東芝 スマートコミュニティ事業統括部主幹)が特別講演「東芝が考える未来のコミュニティ」を行った。中川氏は,資源不足や人口増加,環境問題など,地球規模での課題や潮流について解説した上で,これらの互いにからみあった課題を解決する1つの方法であるスマートコミュニティについて説明した。東芝グループでは,水,電力,交通,医療,情報など各インフラのシステム構築の経験を生かし,コミュニティ全体の最適化を図るスマートコミュニティマネジメントシステムを各地のインフラ事情に合わせて構築し,国内外で18の実証プロジェクトを進めていることを紹介した。さらに,エネルギーの供給側(スマートグリッド),需要側(スマートファシリティ)それぞれの考え方やシステムの仕組みを解説し,需要側の1つであるスマートホスピタルがめざすこととして,1)災害などで病院業務を止めない,2)経営資源を医療に集中させる,3)患者に選ばれる病院を作るの3つを挙げ,それぞれに即したシステムについて説明した。終わりに,現在東芝社が構築をめざしている医療クラウドを用いたPHRサービスについて触れ,クラウドにおける最大の課題とも言えるセキュリティについて,同社が開発した暗号の付け替えが可能な再暗号化技術について述べた。

  休憩をはさんで行われた指定発言では,(株)UGSEの一原武司氏が高度統合セキュリティソリューション「SINA」を紹介した。SINAとは,国家・軍事機密のセキュリティレベルを実現するために,ドイツ連邦情報局の要求仕様に基づいて,secunet社(ドイツ)が開発したセキュリティ技術で,EUとNATOの通信ライン,欧州各国での政府・行政機関のネットワーク,各国の軍事ネットワークに導入され,技術転用として新バージョンをビジネス用途にも展開している。一原氏は,SINAによるセキュリティ構築について説明し,分離化技術により仮想的・物理的にPCの中を完全に分離する「SINA Virtual Workstation」や,データの一方通行を保証する「SINA OneWay Gateway」といったコンポーネントを紹介。また,国家・軍事機密レベルでの導入事例を紹介し,その強固なセキュリティをアピールした。

  最後に行われたパネルディスカッションでは,深津理事長が座長を務め,「近未来の医療におけるITの活用法について」をテーマに,4人のパネリストによる講演とディスカッションが行われた。
  1題目に,(株)エスクリエイトの石川雅章氏が,「facebookと医療コミュニケーション」をテーマに講演した。スマートフォンの普及により,ソーシャルネットワークサービス(SNS)が広がり,ソーシャルメディアが急増している現在,患者が利用した病院についての情報を発信する機会も増え,その情報をもとに患者が病院を選ぶ時代になっていると指摘した石川氏は,ソーシャルメディアを活用した医療コミュニケーションの可能性について説明した。ソーシャルメディア活用のポイントは,接触頻度と情報開示であり,ルールの理解が重要であることを述べた上で,なかでも実名で使用するfacebookは,医療コミュニケーションに有効に活用できるとした。
  2題目に,杉浦氏が「医療システムへのInformation and Communication Technology(ICT)技術の応用」と題して講演した。杉浦氏は,KInCo-Net(Knowledge Information Collaborating Net Work:双方向情報交換データベース)やGMIS(Geograpgic medical information system:ホスピタルナビ)を用いた医療機能分析やデータ収集,情報提供などの社会的実証研究を行っている。独立した複数のプログラムをクラウド上で統合管理する病診・病病医療連携システムを開発しており,実際に取り組んでいる実証研究として,愛知県周産母子連携システムや愛知県救急災害情報ネット,茶のしずくせっけんの症例収集システムなどを紹介した。杉浦氏は,医療情報のICT化は進んできているが,院内の患者情報の電子データ化にとどまっているシステムも多く,院内外の多元的なつながりが望まれると述べた。
  3題目は,富士通(株)ヘルスケアソリューション事業本部の野沢一太郎氏が「HumanBridgeを活用した地域医療連携」を講演した。野沢氏は,地域の複数の医療機関が個別に保持する診療情報,検査結果,医用画像,レポート情報などの患者情報を,セキュアな環境のもとネットワーク経由でどの医療機関からも確認できる同社のサービスHumanBridgeについて,導入事例とともに説明した。
  最後に,フィリップス・レスピロニクス(合)新規在宅事業部の尾崎慎太郎氏が,「転倒検知可能な緊急通報サービス」を講演した。尾崎氏は,わが国においてますます重要性を増す在宅医療に有用なソリューションについて述べ,そのうちの1つで日本国内でサービスを開始した「フィリップス緊急通報サービス」や,北米や欧州で展開している在宅サービスについて紹介した。


●問い合わせ先
特定非営利活動法人日本医療コンシェルジュ研究所
TEL 03-3527-9481
http://www.jmclmc.jp/


【関連記事】

第4回医療コンシェルジュ研究会が開催