GEヘルスケア・ジャパンは10月8日(土),梅田スカイビルアウラホール(大阪市北区)にて最先端技術セミナー「GE healthymagination Day in Kansai」を開催した。同社のCT,MRI,インターベンション,HCITの製品・技術の最新情報を提供するとともに,各モダリティにおける最先端技術の臨床応用について6名の演者による発表が行われた。
はじめに,CT,MRI,インターベンション,HCITの製品や技術に関する情報提供が行われた。CTについては,空間・密度分解能の向上,被ばく低減,アーチファクトの大幅減少を実現する新しい逐次近似画像再構成法“Veo”が紹介されたほか,MRIは3軸独立電源により高いグラディエント・デューティーを実現するなど,卓越したハードウエア技術を搭載した「Discovery MR750 3.0T/750w 3.0T」について,インターベンションではコーンビームCTを用いたインターベンション支援機能“FlightPlan for Liver”を中心に,そしてHCITではクラウド技術を活用した医用画像外部保管サービス「医知の蔵」が,それぞれ紹介された。
講演に先立ち,関西統括支社長の毛受義雄氏が開会の挨拶を述べた。毛受氏は,より身近で,より質の高い医療を,より多くの人に提供するというGE社のグローバル戦略ヘルシーマジネーションと,高齢化の進む日本における介護・医療の環境の改善をめざした新成長戦略“Silver to Gold”について説明。日本に生産拠点を持ち,日本の顧客ニーズをいち早く把握して製品を提供できることが強みであるとし,高齢化社会において増加するであろう疾患を把握した上で,画像診断と治療との連携における新しいアプローチを展開していくとした。また今後,高齢者見守りシステムの製品をリリース予定であることを明かし,本当の意味でのヘルスケアカンパニーに進化していくという強い思いを述べた。
講演1では,大阪大学大学院医学系研究科放射線統合医学講座の富山憲幸氏が座長を務め,CTをテーマに2題の講演が行われた。東京女子医科大学東医療センター放射線科の町田治彦氏は,「逐次近似画像再構成の臨床的有用性」と題して講演した。町田氏は,近年の被ばく低減技術を求める声に応える技術として,従来のFBP法と比べ,大幅な被ばく低減を可能にする逐次近似画像再構成法“ASiR”と“Veo”を紹介し,特に臨床有用性が高いと言えるASiRの臨床応用として,2通りの使い方について説明した。1つはノイズを増加させずに被ばく低減を図るもので,冠動脈CTにおいて約60%の被ばく低減効果があると述べた。2つ目の使い方は,ノイズを増加させずに空間分解能を向上させるもので,冠動脈内腔の評価がしやすくなるといった有用性があることを報告した。また,同センターで2011年3月より使用しているVeoについて,臨床画像をFBP法と比較供覧し,Veoにより金属や造影剤によるアーチファクトの軽減や空間分解能の向上が図られることが示された。上海交通大学との共同研究においても,超低線量骨盤CTで診断に有用な画像が得られ,FBP法と比べ有意差があったとする成果が報告された。Veoは,現状では再構成に時間を要するなどの課題があるものの,高いポテンシャルを有しており,町田氏は,今後の臨床応用が期待されると述べた。
大阪大学大学院医学系研究科放射線統合医学講座の本多 修氏は,「胸部領域における750HDの高分解能がもたらす臨床的有用性及び最先端被ばく低減の有用性」と題して講演した。本多氏は,Discovery 750HDの特徴の1つとして,ガーネットをシンチレータ素材に使用し,超高速発光・超高速消光を可能にしたHigh Definition Gemstone Detectorを紹介。また,Discovery 750HDは,LightSpeed VCTと比べると,中心空間分解能が33%向上し,高分解能モードで撮影することでアーチファクトを抑えることも可能であることを説明した。その上で,CTの多列化により,薄いスライス厚によるノイズの増加や,CT検査による被ばくの増加が課題となっていることを指摘し,ノイズ低減,被ばく低減にASiR,Veoが有用であることを臨床画像を示しながら説明した。
HCITをテーマにした講演2では,神戸大学大学院医学研究科放射線医学分野の杉村和朗氏が座長を務め,北里大学病院の村田晃一郎氏が「不本意ながらクラウドコンピューティング—医療機関はなぜクラウドへ追い込まれていくのか」と題して講演した。村田氏は,医療機関・関係者には,医療情報という重要なデータを手元においておきたいという欲求があるのに反して,医療情報は所有から利用へとクラウドの方向に移行しつつあるとし,クラウドについて,1) 疾病構造の変化(慢性疾患増加,がん罹患者増加,がんの慢性病化など),2) 国の医療施策(医療財政の圧迫軽減のためのIT),3) 医療機関がどこまで耐えうるか(医療情報の長期保存や災害時の保全,コストと機能のバランスなど)の3点から解説した。その上で,医療機関がすべきことは,安価で安全なシステムを作ることであるとし,コストやリスクの観点から病院内に閉じたシステムの維持が困難になりつつあることを指摘。クラウドの現実的な利用方法として,長期ストレージのみを外部に置く,または,業務システムとストレージをともに外部に置くという2つの方法を示した。最後に,クラウドの応用例として“どこでもMY病院”に触れ,地域医療連携における課題などについて述べた。
講演3は,近畿大学医学部放射線医学教室放射線診断学部門の村上卓道氏が座長を務め,MRIをテーマとした2題の講演が行われた。慶應義塾大学医学部放射線科学(診断)の奥田茂男氏は,「Discovery MR 750の臨床有用性―体幹部領域も躊躇なく3Tで」と題して講演した。初めに奥田氏は,誘電効果による信号ムラやSARの増加といった3T装置の課題を挙げ,それらを克服する技術として,Discovery MR 750の静磁場を均一にする技術である“4 point drive”と,RFパルスの反射からSARを厳格に計算するという2点を紹介した。これらにより,Discovery MR 750が体幹部のルーチンで使える実用機であることを強調したほか,各領域の臨床画像を供覧し,新しい脂肪抑制法である“IDEAL”,“LAVA FLEX”の有用性について述べた。奥田氏は最後に,体幹部においても3Tが1.5Tより扱いにくいということはないと述べ,従来より情報の多い画像取得が期待されるとまとめた。
岩手医科大学医歯薬総合研究所超高磁場MRI診断・病態研究部門の工藤與亮氏は,「頭部領域における高磁場MRIの活用法と,7T-MRIの初期使用経験」と題して講演した。工藤氏は,学会や論文の発表から7T-MRIの現状や,2010年に7T-MRIを導入した同研究所での使用状況について説明。7T-MRIの特徴として,SNRの向上,磁化率効果の増強,化学シフトの増加,T1緩和時間の延長,画質の劣化を挙げ,それらの特徴について画像を提示しながら解説したほか,fMRIなどの使用経験について述べた。工藤氏は,初期使用経験から見えた7T-MRIの改善すべき点を指摘するとともに,そのポテンシャルの高さを評価し,臨床応用への強い期待を寄せた。
最後の講演4では,医療法人友紘会彩都友紘会病院の中村仁信氏が座長を務め,近畿大学医学部放射線医学教室放射線診断学部門の柳生行伸氏が,インターベンションをテーマに「FlightPlan for LiverがTACEにもたらす効果」と題して講演した。はじめに,肝細胞がんに対する治療アルゴリズムについて説明した柳生氏は,TAEからTACEへと変わってきた肝動脈塞栓術の流れについて述べ,その手順を説明。IVR-CTの代わりに血管撮影室に導入しやすい装置として,同院でも導入しているコーンビームCアームCT(以下,CBCT)の特徴や使用経験を述べた。CBCT併用のメリットとして,微小結節等の描出に優れる濃度分解能と,栄養血管の同定に有利な多方向からの観察が可能であることを挙げた。その上で,CBCTを用いたインターベンション支援機能である“FlightPlan for Liver”を紹介し,腫瘍濃染とカテーテル先端を指示すると,栄養血管と想定される血管のみが選択され,選択された血管のみを“3D Roadmap”に活用する操作法や,Cアームとの同期による治療や効果判定における有用性について説明した。 |