認定NPO法人乳房健康研究会は,2011年9月15日(木)に東京ステーションコンファレンス(東京都千代田区)にてプレスセミナーを開催した。
わが国では,2009年度から「女性特有のがん検診推進事業」として,40歳以上の一定年齢に達した女性を対象に,乳がん検診の無料クーポンの配布が開始されている。本年6月に同研究会が行った乳がん検診に関する一般女性の意識行動調査の結果から,国のがん対策推進基本計画に織り込まれている乳がん検診受診率50%の目標達成が見えてきたことを受け,セミナーでは調査結果を報告するとともに,同研究会が取り組んでいる墨田区とのタイアップエリアキャンペーンについての報告が行われた。
はじめに,理事長の霞 富士雄氏(順天堂大学客員教授)が挨拶し,2010年に10周年を迎えた研究会について紹介した。また,国の無料検診については,乳がん検診の受診率向上につながっているが,まだ広報不足であることや,乳がん検診に望まれる2年ごとではなく5年ごとになっているといった課題も指摘した。
セミナーでは,1題目に副理事長の島田菜穂子氏(ピンクリボンブレストケアクリニック表参道院長)が,「一般女性意識行動調査2011」を報告した。この調査は,一般女性の乳がん検診に対する意識や行動の変化を知るため,研究会が2003年から行っているもので,マンモグラフィ検診や検診無料クーポンの認知率や受診率についてアンケート調査を行い,取りまとめている。調査の結果,マンモグラフィ認知率が40代では100%に,マンモグラフィ受診率は38.9%,クーポン対象者に限れば受診率45.7%と目標の受診率50%に近づいてきていることが報告された。島田氏は,ピンクリボン運動を通して乳がんの情報は行き渡っており,そこにクーポンが届くことで受診行動につながっていると評価した。その一方で,クーポン事業自体の認知度やクーポンの送付に気づく割合がまだ低いことや,クーポンを受け取っても日程や医療機関を理由に6割が使用していないといった課題を挙げ,有効活用のための工夫や,受診者への2年後のフォローの重要性を述べた。
併せて,タイアップキャンペーンを行っている墨田区で行った調査結果を報告し,キャンペーンの実施内容を紹介した。
続いて,墨田区福祉保健部保健衛生担当保健計画課から,同区における乳がん検診の状況とエリアキャンペーンの報告が行われた。
はじめに,保健計画課課長の小久保 明氏が,墨田区におけるがんの状況や,区としての対策の概要,また,ピンクリボン運動初の自治体タイアップを行うことになった経緯を説明した。続いて,同課健康推進担当主査の地引みどり氏が,同区の乳がんの状況の詳細と,乳がん検診に関する取り組みを紹介した。墨田区では,2009年度のクーポン事業開始により,乳がん検診受診者が前年から約2倍に増加。今年度は2年に1度の定期受診を促進するため,2009年度受診者に対して個別に受診勧奨する,独自の取り組みを行っている。2011年4月に始まったタイアップキャンペーンでは,保健衛生協力員や民生・児童委員による個別受診勧奨や,回覧板によるPRなど,コミュニティ力を生かした活動により,クーポンに関する問い合わせや受診者数が増加していることを報告した。また,PRツールやイベント,検診体制の見直しなど今後の取り組みを紹介した。
その後,これらの調査・キャンペーン報告を受け,研究会副理事の福田 護氏(日本乳癌検診学会理事長/聖マリアンナ医科大学ブレスト&イメージングセンター院長)が総括した。対策型検診としての乳がん検診のポイントなどを説明した上で,2年ごとの検診を促すための活動や,地域ごとでの受診率向上キャンペーンなどの有用性について述べた。
最後に,副理事長の野末悦子氏(コスモス女性クリニック院長)が,東日本大震災で被災した女性の健康支援を目的とした「ピンクリボンでつなぐ絆プロジェクト」を紹介した。研究会は,震災後に被災地において,乳がん検診支援をはじめ,健康に関するイベントへの支援を行ってきている。野末氏の発表では,プロジェクトの詳細とともに,岩手県大槌町での活動や,今後のイベント支援のスケジュールなどが紹介された。 |