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取材報告

2011
地域医療福祉情報連携協議会が震災とITをテーマにしたシンポジウムを開催

田中 博 氏(東京医科歯科大学)
田中 博 氏
(東京医科歯科大学)

小川 彰 氏(岩手医科大学)
小川 彰 氏
(岩手医科大学)

小笠原敏浩 氏(岩手県立大船渡病院)
小笠原敏浩 氏
(岩手県立大船渡病院)

成田徳雄 氏(気仙沼市立病院)
成田徳雄 氏
(気仙沼市立病院)

千葉美洋 氏(石巻赤十字病院)
千葉美洋 氏
(石巻赤十字病院)

神成淳司 氏(慶應義塾大学)
神成淳司 氏
(慶應義塾大学)

小倉真治 氏(岐阜大学)
小倉真治 氏
(岐阜大学)

第2部のパネルディスカッション
第2部のパネルディスカッション

  地域医療福祉情報連携協議会は2011年7月21日(木),JA共済ビルカンファレンスホール(東京都千代田区)で,2回目となるシンポジウムを開催した。テーマは「震災復興に,地域医療ITは何ができるのか?」。同協議会は,地域の医療・福祉・健康分野における情報連携を行うための意見交換の場として,今年1月に設立された。1月28日には発足記念シンポジウムが東京医科歯科大学M&Dタワー(東京都文京区)で開催され,「地域医療の全国的な連携に向けて」をテーマに,長崎県のあじさいネットワークなど全国からITを活用した地域連携の先進的な事例が紹介された。2回目のシンポジウムでは,3月11日に発生した東日本大震災における災害医療の中でのITの役割について,被災地の医療機関の取り組みなどの現場からの報告のほか,パネルディスカッションが行われた。

  開会にあたって,まず総務省情報流通行政局情報流通振興課情報流通高度化推進室室長の吉田恭子氏のほか,厚生労働省,経済産業省の担当者が挨拶を行い,各省の地域医療にかかわるIT施策の現状や今後の取り組みなどについて説明があった。また,協議会の会長を務める東京医科歯科大学大学院疾患生命科学研究部教授の田中 博氏から震災とITについて考えるために今回のシンポジウムを企画したとの説明があった。

  次いで行われた第1部では,始めに田中氏が「災害時および復興後の医療IT体制のグランド・デザイン」と題して講演した。田中氏は,復興後の医療ITのあり方について言及。復興後の地域医療計画に基づいた地域医療の情報連携体制,圏域各レベルの実現課題に対応した地域包括ケア情報基盤,リモートバックアップやデータセンター,ASP型電子カルテシステムなどを用いた災害に強い医療情報連携体制が重要と述べ,これを話し合うための組織づくりの必要性を訴えた。

  続いて特別講演として,岩手医科大学学長の小川 彰氏が「ITを核とした『いわて被災地過疎地型新地域医療モデル』の確立」をテーマに登壇した。小川氏は,被災者の健康状態の悪化を指摘した上で,政府の対応の遅れについて触れ,震災ではなく人災だと述べて,経済的支援を求めた。

  この後,「震災に強い地域連携型周産期医療情報ネットワークシステム—岩手県周産期医療情報ネットワークシステム“いーはとーぶ”の奇蹟」と題して,岩手県立大船渡病院副院長の小笠原敏浩氏が講演した。小笠原氏は,いーはとーぶの概要について述べた上で,震災ではサーバが被災せず運用できたことで,被災地の妊婦の情報をサーバのデータをプリントアウトして診療に用いることができたと述べた。また,続いて講演した気仙沼市立病院脳神経外科科長で,宮城県の災害医療コーディネーターを務める成田徳雄氏は,「Network Centric 災害医療における情報管理の重要性—災害医療コーディネーターの立場から—」をテーマに講演した。成田氏は,震災による混乱の中で,Network Centric Operation(NCO)という考え方に基づいて情報管理し,気仙沼市内の慢性透析患者を東北大学病院に自衛隊の協力を得て搬送した事例などを紹介した。

  続いて,「震災に医療ITは何かできたか?」と題し,石巻赤十字病院情報システム課の千葉美洋氏が講演した。千葉氏は,同院の医療情報システムの被害状況について報告し,電子カルテシステム,オーダリングシステム,PACSといった基幹システムに影響がなかったと述べた。しかし,ほかの被災状況を踏まえ,システムをカスタマイズして,災害用に設定などを変更して運用していったと説明。課題とその対策について言及した。この後,慶應義塾大学環境情報学部准教授で,東日本大震災復興構想会議検討部会委員の神成淳司氏が,「東日本大震災を踏まえて 情報技術が果たすべき役割」と題して講演した。神成氏は,震災により診療情報が失われ,それによって大きな支障が出たと説明した。そして,データセンターやデータのバックアップ,リカバリなどの診療データの運用方法について解説した。第1部の最後は,岐阜大学大学院医学系研究科救急・災害医学教授の小倉真治氏が,「平時から災害時まで使える患者視線の情報システム」として,MEDICAと呼ばれる治療歴や投薬歴などの診療情報を格納したICカードを個人が保持して,災害時に救急医療情報システム「GEMITS」で運用する仕組みについて解説を行った。

  第2部のパネルディスカッションでは,第1部の講演者全員が登壇。田中氏が座長を務め,パネリストらが意見を交換した。「震災復興に,地域医療ITは何ができるか?」をテーマに,政府の復興に向けた医療政策やリカバリとバックアップの考え方,地域連携における医療情報システムの標準化動向などが話題となった。会場からの質問なども交えて,活発な議論が繰り広げられ,震災における医療ITに対する関心の高さがうかがえるシンポジウムであった。


●問い合わせ先
地域医療福祉情報連携協議会事務局
TEL 03-5807-1562
E-mail info@rhw.jp


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