日本超音波医学会第84回学術集会が,5月27日(金)〜29日(日)の3日間,グランドプリンスホテル新高輪国際館パミール(東京都港区)で開かれた。会長は,竹中 克氏(東京大学医学部附属病院検査部),テーマは「永遠の三角形」。開会式の挨拶で,会長の竹中氏は今学会のテーマとねらいについて次のように述べた。
「E(工学系),M(医学系),T(テクノロジスト:検査技師)が,1つの学会の中に集まっているのは超音波医学会だけである。これは,学会の特長であり強みであると考えて今回のテーマとした。この三角形が,ただ学会で集まり挨拶するだけでは意味がなく,学問に関する議論を活発に行うことが重要で,この学会がそれにふさわしい場であるように準備した。今回の学会は,議論を深める意味で日本語を使うことを基本として,演題などを含めてできるだけ外来語を使わないようにした。母国語で,世界的レベルの研究を生み出すための深い議論を大いに行ってほしい」
プログラムでは,特別企画として,領域を超えた横断的な「超音波による硬さの評価」「学会とは何か?」と,循環器領域の「心臓を診る」の3つが設定された。特別企画は,教育講演や特別演題企画などいくつかのプログラムを集めたスタイルで構成され,「心臓を診る」では,教育講演と外国留学経験者による講演2題,特別演題企画2題が企画された。
開会式に続いて行われた,特別企画「心臓を診る」の教育講演1「スーパーコンピュータで細胞から心臓を作り上げ臨床応用を目指す」では,杉浦清了氏(東京大学大学院新領域創成科学研究科)が,コンピュータ上に構築した“人工心臓”を使って薬剤の効果や手術のシミュレーションを行う研究内容を紹介した。神経構造などを計算した細胞モデルから組織を作り,その組織をマルチスライスCTの心臓3Dデータから有限要素法によって成形することで仮想の心臓モデルを作成する。この心臓モデルでは,電気的な刺激による拍動や血流の計算や,冠動脈の構成,弁の動きなどもシミュレートできる。実際の心臓と同じ心電波形や超音波画像のシミュレーションが得られており,例えば経食道の心臓エコーのシミュレータや超音波の反射の計算などが可能だという。杉浦氏は,バーチャル心臓によって治療法や機器の評価などが実際に可能になっており,最終的なゴールは患者個別のデータを入力したテーラーメイドの心臓シミュレータをつくることで,これが実現すれば疑似臨床試験も可能になると述べた。
外国留学経験者による講演1では,足利洋志氏(Johns Hopkins University)が「心エコーによる心臓メカニクスの変数測定はどこまで正確か?」として,超音波で心機能を測定するストレインやstrain rate,Torsionなどのさまざまな変数がどこまで正確に計測できているかを検証した。特別演題企画では,「壁運動評価法を整理して理解する」が行われた。
そのほかに東日本大震災に関する緊急企画として,「東日本大震災に直面して何が行われたか」,「震災時に何を学会に期待するか、学会はどのような期待に応えられるのかを考える」もプログラムされた。
機器展示は,2部屋に分かれて19社が出展した。4月に新しく誕生した日立アロカメディカルが出展し注目を集めていた(機器展示の詳細は追って更新の予定)。
次回は,東京医科大学消化器内科の森安史典氏を会長として,2012年5月25日(金)〜27日(日)の3日間,今年同じくグランドプリンスホテル新高輪国際館パミールで開催の予定だ。 |