日本超音波医学会第83回学術集会が,5月29日(土)〜31日(月)の3日間,工藤正俊氏(近畿大学医学部消化器内科)を会長として国立京都国際会館(京都市)で開催された。メインテーマは「サイエンス・テクノロジーのイノベーションからアートへ」。
超音波の進歩には,サイエンスやテクノロジーのイノベーションと,それを実臨床へ還元することが重要であり,また反対に臨床的なニーズが工学や企業のイノベーションを促し次世代のテクノロジーを生み出す。3D/4D超音波や超音波造影剤などで「医」と「工」の連携による技術の開発が進められているが,今回の学会でも両領域を横断するテーマの企画が数多く行われた。シンポジウムは,「超音波を用いた胎児循環計測の現状と未来」「3次元超音波診断の最前線」など12題,パネルディスカッションは,「弁膜症を見直す」「超音波で胎児をどこまで診るべきなのか?」「腹部救急の超音波診断 update」など13題が行われた。
今回,特別企画として「私と超音波」と題した冊子が参加者に配布された。冊子は,日本超音波医学会の役員や名誉会員,功労会員が「私と超音波」をテーマにエッセイを執筆したもので,超音波医学の発展に関わってきた70名を超える関係者がさまざまな思いを綴っている。
特別講演では,「超音波を用いた私の仕事」幕内雅敏氏(日本赤十字社医療センター・東京大学名誉教授),「冠動脈疾患に挑む:心エコー図の進歩」吉川純一氏(大阪掖済会病院)があった。生体肝移植の第一人者である幕内氏は,1970年代から術中超音波を肝切除や肝移植に用い,腫瘍の位置や脈管との関係を把握することで手術成績の向上につなげてきた。講演では,系統的亜区域切除や下右肝静脈温存手術における術中超音波の有用性を概説した。幕内氏は「肝臓手術において術中超音波の有無は,術後の成績に大きく影響する。術後管理にも超音波を使うことで短時間に対応できるので予後の改善,患者のQOLの向上にも差が出る」と述べた。
また,工藤会長がアジア超音波医学会(AFSUMB)と世界超音波医学会(WFUMB)の次期理事長となっていることから,両学会から演者を招聘してKeynote Lectureが10題行われた。さらに,AFSUMB,WFUMB,日本超音波医学会,それぞれの歴史と現在の活動,今後の目標などを紹介するジョイントセッションも設けられた。
次回(第84回学術集会)は,東京大学医学部附属病院検査部の竹中克氏を会長として,2011年5月27日(金)〜29日(日)の3日間,グランドプリンスホテル新高輪国際館パミール(東京都港区)で開催の予定。 |