(株)日立メディコは2月27日(日),本社が入る秋葉原UDX(東京都千代田区)のUDX GALLERYにおいて,エグゼクティブセミナー「HI VISION Ascendus〜超音波診断の新到達点」を開催した。これは,同社のデジタル超音波診断装置「HI VISION」シリーズの最上級機種となる「HI VISION Ascendus(アセンダス)」の発売を受けて企画されたもので,筑波メディカルセンター病院ブレストセンター長兼診療部長の植野 映氏を座長に迎え,消化器,甲状腺,乳腺の各領域におけるAscendusの臨床応用について,3題の講演が行われた。
Ascendusは,デジタル信号処理回路Ultra BE II(Ultrasound Broadband Engine 2nd Generation)を搭載し,高度な画像処理による高画質化を実現。また,組織の硬さを画像化する Real-time Tissue Elastography(エラスト機能)を進化させ,リアルタイム3D表示する機能(エラスト4D)を搭載したほか,CT装置やMRI装置と超音波診断装置の断層画像をリアルタイムに並列表示するReal-time Virtual Sonographyなどの機能も搭載している。
開会にあたり,代表取締役執行役社長の三木一克氏が挨拶に立ち,Ascendusの特筆すべき点として,日立グループの総力を結集して開発したことと,2010年10月にTOBを発表したアロカと,2006年4月から進めてきた共同開発の成果を搭載したことの2点を挙げた。また,4月からはアロカと結合した組織で超音波診断事業をグローバルに展開していくと展望を述べた。
セミナーに先立ち,座長の植野氏が挨拶し,超音波診断において世界をリードしてきた日立が,Ascendusの発売によって独走態勢に入るだろうとコメントした。
講演1題目は,東京医科大学消化器内科主任教授の森安史典氏が,消化器領域におけるAscendusの臨床応用について,肝臓領域を中心に解説した。同機のBモードは,従来と比べて飛躍的な画質の向上を果たしており,そのノイズの低さから,特に肝臓領域に求められる空間分解能とコントラスト分解能の高さを実現していると評価した。そして,EOB-MRI時代と言われるいま,早期肝細胞がんが発見されるようになり,その治療や診断に,Ascendusは大きく貢献するとの見方を示した。
また,カラードプラ,エラスト,造影超音波,RVSの画像を示し,これらの画質向上や新しい機能は,基本技術の向上により可能になったことを説明。低侵襲で高度な診断情報を提供することにより患者のQOL向上に寄与するだろうと述べた。
休憩を挟み,昭和大学横浜市北部病院外科教授の福成信博氏が,エラストグラフィを中心に甲状腺領域における臨床応用を講演した。まず,甲状腺がんの約9割を占める乳頭がんについて述べ,特徴的な所見のため微細な病変もBモードで発見しやすく,エラスト機能によりさらに容易に存在診断ができることを解説した。次に濾胞性腫瘍を取り上げ,腫瘍の割面とBモード画像を比較した症例を提示しながら,Bモードでは良悪性鑑別ができない場合もあるとし,エラストとドプラの併用により,正診率と特異度が向上したスタディを解説,現在では濾胞性腫瘍の鑑別診断においてエラストは不可欠となっているとした。
また,Ascendusの特徴として,Bモードの画質向上と,3D処理の速さを挙げ,インターベンションのラジオ波焼灼療法における治療評価判定にエラストが有効であると述べた。将来的には4Dでの穿刺や評価ができればと期待を示した。
3題目に,川崎医科大学乳腺甲状腺外科講師・医長の中島一毅氏が,多くの症例画像を提示しながら乳腺領域におけるAscendusの臨床応用について解説した。同機の処理能力が著しく向上していることを述べ,特に乳腺領域で重要となるBモードの分解能の高さを評価した。そして,ノイズを低減させる「EUP-L75」と乳腺専用の「Mappie」の2つのプローブの画像を比較提示し,Ascendusにより,それぞれが持つ特長を最大に発揮できるとした。また,エラスト3Dに触れ,診断には補助的だが,手術に非常に有効であると述べた。
なお,セミナーと並行して,本社ではAscendusのプレミアム内覧会も開催されており,4題の技術セミナーと中島氏による特別講演「『Elastographyを使いこなす』FLRの理解と適切な利用法」が行われた。また,領域別のスキャンルームが設けられ,多くの参加者がAscendusのデモ体験・見学を通して,その高い画質や新しい機能を体感していた。 |