富士フイルムメディカル(株)は2010年11月13日(土),ホテルモントレ半蔵門(東京都千代田区)において,「富士フイルム東京マンモグラフィユーザーズセミナー」を開催した。このセミナーは同社のマンモグラフィ装置のユーザーを対象に,マンモグラフィ読影の最新のトピックスや製品の紹介,ハンズオンによる読影実習などのプログラムで構成される。同社としては初の試みで,10月24日(土)に島根県のくにびきメッセで行われたのを皮切りに,東京以外にも,全国4か所で順次開催される。
セミナーではまずは講演が2題行われた。先に登壇した癌研有明病院の宮城由美氏は,「最新のマンモグラフィ読影トピックス〜最近見かけた悩ましい症例より〜」と題して,3症例を供覧しながら,読影のポイントについて講演した。まず症例1では,構築の乱れ(architectural distortion)症例の読影ポイントについて,解説が行われた。構築の乱れは,正常な乳腺構築にゆがみが生じているもので,手術の既往歴がない場合は,がんを疑う所見となる。宮城氏は,これまで浸潤がんを考える所見であると言われてきた構築の乱れについて,DCISや硬化性腺症,放射状瘢痕でも認められるとした上で,最近ではDCIS in sclerosing adenosisという病態が知られるようになったと説明した。また,両側のdistortionについては,背景にradial sclerotic lesionが認められるなどのポイントを述べた。続いて宮城氏は,症例2として,MLT(mucocele-like tumor)の画像を示し,乳管内から粘液が間質に漏出した状態であるなどの説明を行い,MLTの石灰化について特徴を解説した上で,粘液がんの石灰化との鑑別のポイントを述べた。さらに,宮城氏は,症例3として石灰乳石灰化(milk of carcium)について解説した。石灰乳石灰化は良性石灰化に分類されるが,片側性,区域性の石灰化には注意が必要となる。宮城氏はそれを指摘した上で,全体のバランスを見て病態を考えながら診断することが重要だと説明した。
続いて登壇した国立病院機構名古屋医療センターの遠藤登喜子氏は,「デジタルマンモグラフィのモニタ診断のポイント」をテーマに講演した。遠藤氏はまず,デジタルマンモグラフィの基礎として,ソフトコピー診断のためのシステムには,乳房撮影装置,画像処理装置,画像観察装置,画像保存装置の構成が必要であると述べた上で,LANなどのネットワークについても大量のデータを速やかに送信できなければならないとインフラの重要性を説明した。また,遠藤氏はモニタの基礎知識についても触れ,FPDやCRのマンモグラフィデータをモニタに表示する上で注意点について述べて,ソフトコピー診断において,モニタ上で必要となる画像処理操作を解説した。遠藤氏は,モニタ読影の実際として,画像を拡大して読影する際のノウハウやウインドウレベルの操作方法などを紹介。その上で,全体像の把握,部分的な評価,微細構造の評価という診断のポイントを説明した。
この後,富士フイルムメディカルの担当者から50μmの世界最小画素のFPDを搭載した「AMULET」や「マンモVIEWER」などの製品について,紹介が行われた。
休憩を挟んだ後,会場内に8セット用意されたマンモVIEWERを使用してのグループ実習が行われた。参加者は3,4名ずつ16のグループに分けられ,前半と後半それぞれ8グループずつ交代で,モニタに映し出された症例画像を,ビューワの操作法を学びながら,読影していく形がとられた。また,グループ実習が行われている間に別のグループに対しては,スライドを使った症例検討が行われた。これは問題形式でマンモグラフィや超音波画像診断装置,MRIの画像のスライドが映し出され,遠藤氏と宮城氏が読影のポイントについて解説を行った。
当日は約50名が参加。マンモVIEWERといった実際の製品の操作を体験しながら,読影のポイントについて学べるとあって,参加者は皆熱心に取り組んでいた。今後のスケジュールは,12月5日(日)に大阪府の梅田ブリーゼプラザ(小ホール), 2011年1月8日(土)に福岡県のホテルレオパレス博多で開催される予定となっている。 |