NPO法人個別化医療推進・教育センター(CPEP)は2010年10月12日(火),ベルサール飯田橋(東京都千代田区)において,「デュアルエナジーCTの臨床使用の実際」をテーマにした講演会を開催した。同センターは,個人ごとの健康や疾患の度合いを診断する技術を向上させて個別化医療の改善を図ることと,個別化医療の啓発・教育を行うことを目的に,2010年1月に設立された。理事長には,慶應義塾大学医学部放射線科学教室教授の栗林幸夫氏が就任している。今回は,個別化医療改善のための医療関係者への教育・啓発を目的に,デュアルエナジーCTの臨床有用性について講演が行われた。なお,今回の講演会は,GEヘルスケア・ジャパン(株),第一三共(株),(株)根本杏林堂の共催となっている。
講演会は,栗林氏が座長を務め,はじめにメイヨークリニックのAmy K. Hara M.D.が肝臓および腎臓を中心にデュアルエナジーCTの使用経験を報告した。メイヨークリニックでは,シングルソースのCTを用い,これまで350以上のデュアルエナジー撮影を行っている。Hara M.D.はその使用経験に基づいて,水密度等価画像やヨード密度等価画像などの物質密度画像(material density imaging)と単色X線等価画像(monochromatic imaging)の肝臓,および腎臓での特徴を説明し,ビームハードニングアーチファクトの減少など,シングルエナジーよりも有用性が高いことを解説した。
続いて,慶應義塾大学医学部放射線科学教室の田波 穣氏が,心大血管領域でのデュアルエナジーCTの使用経験について講演した。田波氏は,64列CTによる心大血管領域の検査について,高心拍の被検者が適応外,ステントのアーチファクトが出るなど問題点を指摘。その上で,GEヘルスケア・ジャパンのGemstone Spectral Imaging(GSI)の手法について説明し,デュアルエナジー撮影の症例を供覧した。さらに,田波氏は,デュアルエナジー撮影の将来展望として,心電同期やプラークの性状評価,CT perfusionについて期待を示した。
最後の講演として登壇した大阪大学大学院医学系研究科放射線医学講座の金 東石氏は,腹部領域でのデュアルエナジーCTをテーマに講演した。金氏は,GSIのデュアルエナジーCTは,従来と異なり,rawデータでのサブトラクションが可能になり,40〜140keV間の101通りの単色X線等価画像が得られるというメリットを説明。肝細胞がん(HCC)における単色X線等価画像で,最大のコントラストが得られるのは,50keVであると報告した。また,現状の問題点として,低電圧CTでのリピオドールのバルーニングなどを挙げた。
すべての講演後には,同センターの理事である山口敏雄氏がセンター設立の趣旨を述べた上で,会場の参加者への賛同を求め,講演会は閉会した。 |