日本アキュレイ(株)は,ロボット制御の放射線治療システムであるサイバーナイフの第4世代にあたる新製品「サイバーナイフ ラジオサージェリーシステム」を発売した。また,新製品の発売に合わせ,本社(千代田区丸の内)内に「サイバーナイフ 東京トレーニングセンター」を開設し,10月5日(火)にプレス向けの発表会と内覧会を開催した。
サイバーナイフは,ロボットアームと画像誘導技術と組み合わせて,多方向から高精度の放射線治療が可能なシステムで,ガントリータイプの従来の放射線治療装置に比べ,アイソセンターにとらわれずにフレキシビリティの高い照射によって,高精度で低侵襲に治療を行うことができる。日本では,1996年から頭頸部の腫瘍に対して治療が行われてきたが,2008年から体幹部に適用が拡大され,肺、肝臓、膵臓、前立腺、腎臓などの腫瘍への治療が可能になった。
冒頭に挨拶した米国アキュレイ社プレジデント兼CEOのユーアン・トムソン氏は,「サイバーナイフは,アメリカでの2002年の発売以降,2010年までに全世界で200施設以上に導入され,これまで10万人近くが治療を受けた。そのうち25%が,この1年間に行われたもので,がんの新しい治療法として急速に受け入れられている。日本では,現在22台が稼働しており,世界の10%を占める。これまで脳腫瘍など頭頸部への適応が中心だったが,今回の第4世代の発売で今後一層の適応拡大を期待している」と述べた。
続いて,日本アキュレイ代表取締役社長である穂積重紀氏が,第4世代サイバーナイフの4つの新機能である“ロボット制御の治療台 RoboCouch(オプション)”“コリメータをロボットが自分で交換するXchangeコリメータスタンド”“可変コリメータのIRIS(オプション)”“新しい呼吸追尾機能のXsight Lungトラッキングシステム”を紹介。「新しいサイバーナイフは日本における体幹部治療への本格的な応用をめざす装置である。体幹部の治療が承認された2008年から2年経つが,まだ少ないのが現状だ。第4世代サイバーナイフの追尾機能の高性能化などの新機能によって,低侵襲,短時間,低コストで高いQOLを実現できる。新しい世代の機器の投入によって,2015年にはサイバーナイフ治療症例の50%以上が体幹部になることをめざしていく」と述べた。
また,新しいサイバーナイフの導入を予定している国立がん研究センター中央病院の伊丹 純氏(放射線治療科科長)と,国内では初めてシンクロニー呼吸追尾システムを使ったサイバーナイフ治療を行った埼玉医科大学国際医療センターの塚本信宏氏(放射線腫瘍科外来医長)が,サイバーナイフを使った放射線治療への期待と臨床における有用性について講演した。
伊丹氏は,放射線治療の課題はできる限りがんに限局して放射線を照射することだとして,放射線治療医は,定位放射線治療や固定具の開発,IGRT(Image Guided Radiation Therapy)など,放射線照射における計画標的体積と臨床的標的体積の差を小さくすることに取り組んできたと述べた。伊丹氏は,サイバーナイフは線束設定の自由度が高く,将来的発展の余地があり,腫瘍追尾のシステムなど理想的な定位放射線治療としての期待が高く,国立がん研究センター中央病院の豊富な症例数と充実した治療体制を活用して臨床試験を行い,サイバーナイフ治療のエビデンスを示したいとした。
塚本氏は,埼玉医科大学国際医療センターで一足早く取り組んでいる体幹部への定位照射の現状について,臨床例を含めて紹介した。同センターでは椎体への定位照射を現在までに13例行っており,肺腺癌骨転移の治療例を示した。また,傍大動脈リンパ節転移へは6例の照射を行い,卵巣癌傍大動脈リンパ節転移の治療例を提示した。塚本氏は,サイバーナイフは根治につながることは難しいが臨床経過を好転することが可能で,治療方法がなかった患者にも新たな選択肢を提示できるとした。
「サイバーナイフ 東京トレーニングセンター」は,東京駅から徒歩3分にある本社の1階に開設され,操作方法のトレーニングなど導入前の研修やデモンストレーションなどを,実機を使って受けることができる。 |