富士フイルム(株)は12月5日(金),第18回日本乳癌検診学会総会が開かれている名古屋国際会議場(名古屋市)において,乳がん検査用デジタルX線撮影装置「AMULET」の新製品発表会を開催した。
光をスイッチとして画像情報を読み取るという新方式の直接変換型FPDを搭載したAMULETは,世界最小画素*50μmを実現し,ノイズの少ない鮮明な乳がん診断画像の描出を可能にした。同社が開発した新たなFPDは,独自の技術を駆使して高純度に精製したアモルファスセレンの二層構造となっている。被写体を通過したX線を,第一層で高効率に電気信号に変換し,世界で初めて*実用化した「光学式スイッチ技術」により,第二層で,光の照射をスイッチとして電気信号化された画像情報を読み取る。TFTを用いたFPDと比べ,読み取りのための電気スイッチ回路が不要で,配線もシンプル化できるため,直接変換型で50μmまで画素サイズを小さくすることを可能にした。同時に,従来のFPDの課題であった読み取り時に生じる電気ノイズを大幅に低減。また,パネル全体に「高輝度光」を照射することで,短時間での残電荷消去を実現させ,X線照射から次の撮影が可能となるまでの撮影間隔を約15秒に短縮させた。
新製品発表会では,富士フイルムメディカル(株)代表取締役社長の加藤久豊氏が,フィルムからFCR,そして,AMULETの発売に至るメディカルシステム事業の推移を説明。また,乳がん撲滅に向けた同社の取り組みとして,ピンクリボン運動での活動や,2008年2月に発売したFCRデジタルマンモグラフィCADと全世界で現在6000台以上が稼働するというデジタルマンモグラフィ「FCR PROFECT CS」を紹介した。そして,今回発売した直接変換方式FPD搭載「AMULET」について,最小50μm画素の高画質をはじめ,ワークフローの改善などの特長を説明した。新製品発表会ではこのほか, AMULETの詳しい技術説明が行われた。
一方,AMULETの臨床評価については,(独)国立病院機構名古屋医療センター(放射線科部長:遠藤登喜子氏)との共同研究が進められている。名古屋国際会議場では5日,6日の2日間,「第18回 日本乳癌検診学会総会」〔大会長:遠藤登喜子氏(独)国立病院機構名古屋医療センター〕が開催されており,同社は新製品発表会と同日の5日, AMULETの技術紹介と臨床評価に関するランチョンセミナー「富士フイルムの直接変換方式デジタルマンモグラフィについて−新方式直接変換型FPDの技術紹介 Direct Optical Switchingテクノロジー」を開催した。ランチョンセミナーでは,はじめに富士フイルム(株)R&D統括本部機器システム開発センターの乙訓伸次氏が,新方式の直接変換型FPDの原理などを詳しく説明。続いてAMULETの臨床評価について,(独)名古屋医療センター放射線科の白岩美咲氏が特別発言を行った。白岩氏は,同一のボランティアをAMULETとFCR PROFECT CSで撮影した臨床画像を提示して, AMULETの画質をきわめて高く評価した。
また,学会の機器展示会場内の同社ブースでは,AMULETが展示された。装置の横には,白岩氏が紹介した画像も掲示され,多くの来場者の注目を集めた。
*2008年10月末時点(同社調べ) |