ホーム の中の取材報告の中の 2008の中の“日本版EHRの構築に向けて”をテーマに 「第28 回医療情報学連合大会」が開催

取材報告

2008

“日本版EHRの構築に向けて”をテーマに
「第28 回医療情報学連合大会」が開催


会場風景
会場風景

受付風景
受付風景

メインホールでの講演の様子
メインホールでの講演の様子

大会長:田中 博氏(東京医科歯科大学)
大会長:田中 博氏
(東京医科歯科大学)

学会長:山本隆一氏(東京大学)
学会長:山本隆一氏
(東京大学)

副大会長:木村通男氏(浜松医科大学)
副大会長:木村通男氏
(浜松医科大学)

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

企業展示

企業展示

企業展示
38社が出展した企業展示

産官学共同企画2008
産官学共同企画2008
S-MIXへの対応を中心に,施設間で画像や診療情報の提供を円滑に行うための取り組みが紹介されていた。SS-MIX普及推進コンソーシアムのパネルでは,「SS-MIX アーカイブビューワ」の機能を説明。このほか,千葉大学,九州大学,日本電気(株),富士通(株),(株)SBS情報システム,(株)NTTデータ東海の展示があった。

 2008年11月23日(日)〜25日(火)の3日間,パシフィコ横浜会議センター(横浜市)において,第28 回医療情報学連合大会(第9回 日本医療情報学会学術大会)が開催された。また前日の22日(日)には,Pre-congressとして,同会場においてチュートリアルなどが行われた。大会長は東京医科歯科大学情報医科学センターの田中 博氏。日本版EHRを中心とした医療IT化の展開への議論を集大成するイベントと位置づけられた今回,テーマは「日本版EHRの構築に向けて〜ユビキタス健康医療社会の創生〜」が掲げられた。

 本大会では,学会長講演,大会長講演や,2つの特別講演「ICD Revision Process:Building the infrastructure of ICD-11」,「EHR 標準:ISO13606 AND OPEN EHR」,7つのシンポジウム,8つのワークショップなどが設けられた。また,10の大会企画や,他学会との8つの共同企画が行われたほか,ポスターとHyperDEMOの演者が, 3分間の事前口演を行う企画も設けられた。

 大会初日の23日午前のC会場では,大会企画「地域連携パス最前線:人材育成・連携体制の構築→紙パス→電子化パス」が行われた。国立病院機構東名古屋病院の吉田 純氏と千葉県立東金病院の平井愛山氏が座長を務め,5つの演題が発表された。山形県鶴岡地区医師会三原皮膚科の三原一郎氏は「広域電子カルテと地域連携パス その構築と運用−Net4Uをエンジンとした取り組み」と題して,大腿骨近位部骨折地域連携パスを紙ベースからIT化するまでの経緯などを紹介。名古屋大学大学院医学系研究科遺伝子治療学分野の水野正明氏は,平成18年度経済産業省委託事業「地域医療情報連携システムの標準化及び実証事業」において進められている,電子基盤(ICT)に基づいた脳卒中医療情報連携システムについて詳述した。このほか,脳卒中や前立腺がんの診療における地域連携パスに関する講演などがあった。

 午後には,A会場(メインホール)において,東京大学大学院情報学環の山本隆一氏による学会長講演が行われた。演題名は,「医療情報のセキュリティとプライバシー:ガイドラインの変遷と今後」。山本氏ははじめに,プライバシーの概念に関して,その黎明期からITの登場により生じた変化について述べたほか,プライバシー保護に関する世界的な流れを時系列で紹介した。その上で,医療情報はきわめてプライバシーに機微な情報であること,活用することが重要であること,単一の利用目的で複数の施設が関与する場合があることなどの特徴を持つと述べた。そして山本氏は,個人情報保護法と関連する「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」について,第1版から現在の第3版までの変遷を含めて内容を詳しく紹介した。

 また同じく初日,学会長講演後の時間帯にC会場において,CADをテーマとした日本医学放射線学会,日本放射線技術学会,日本医用画像工学会,日本IHE協会の共同企画「CAD実用化の現状と将来展望」が行われた。座長は,中京大学情報理工学部の長谷川純一氏と鳥取大学医学部の近藤博史氏が務め,6題の発表があった。乳腺CADに関する発表を行った国際医療福祉大学三田病院放射線医学センターの縄野 繁氏は,わが国においてCADの普及が遅れている原因の1つに,例えば,拾いすぎが多く肝心な病変を検出していないのではないかといったCADへの不信感があるとした。また,乳腺CADの普及のためには,CADの正しい理解と使い方が医師や医療関係者,機器メーカーに熟知されることや,マスコミを通じて一般の人にもCADの存在をPRすることなどが必要だとした。また,検診やドックにおける二重読影を,CADを併用した1人読影が可能となるような検証を行うべきだとの考えを示した。このほか,胸部のCADや,CT colonographyにおけるCADに関する発表なども行われた。

 大会2日目の24日午後にはA会場(メインホール)において,田中氏の大会長講演「日本版EHRへの戦略的アプローチ」があった。田中氏は,日本の医療が抱える問題として,医療費の増大と医師不足を挙げ,その解決策としてレセプトのオンライン化と特定健診・保健指導,新医療計画があるとした。その上で,レセプトのオンライン化や特定健診・保健指導による健康情報のナショナルデータベースと,地域医療連携におけるEHRをもとに,日本版EHRを実現できるとの考えを示した。これに続き,大会長講演を引き継ぐ形で,大会企画「日本版EHRを巡る最近の動向」が行われた。田中氏が座長を務め,厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室の中安一幸氏から厚生労働省,経済産業省,総務省の三省合同で行う健康情報活用基盤実証事業が紹介されるなど,EHRに向けた国内外の状況について報告があった。

 最終日の25日午前にはC会場において,日本医学放射線学会,日本放射線技術学会,日本医用画像工学会,日本IHE協会による共同企画「電子媒体による診療情報提供における問題点と提言」が行われた。放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院の安藤 裕氏と岡崎市民病院情報管理室の奥田保男氏が座長を務め,まず「情報を入出力する立場から」と題して奥田氏が講演。続いて,安藤氏が,「電子媒体による画像情報連携:診療現場での現状と問題点」と題して講演した。安藤氏はCD-Rによる画像連携について,自施設で生じている問題点を紹介した。IHEの統合プロファイルであるPDI(Portable Data for Imaging)やIRWF(Import Reconciliation Workflow Profile)の利用により,CDなどの媒体を利用した施設間連携のワークフローの改善や安全性の向上が期待されると述べた。東京大学医学部附属病院/日本IHE協会普及推進委員会の奥 真也氏は,日本IHE協会が2008年5月から6月末にかけて医療機関に対して行った,可搬媒体による施設間連携のアンケート調査結果を報告。回答のあった医療機関(28機関)のうち,93%が可搬媒体による画像情報提供を行っており,54 %が問題のあるケースを経験していた。また,標準化の必要性を89%が,法規制などの必要性を61%が感じているという結果が得られたと説明した。本大会の副大会長を務めた浜松医科大学附属病院医療情報部の木村通男氏は,「患者が持参するCDの現状と対応について」と題して講演。このほか,日本IHE協会接続検証委員会委員長の吉村 仁氏による「PDIを実装する上での諸問題」と厚生労働省医政局医療機器・情報室長の冨澤一郎氏による「電子媒体による診療情報提供における問題点と提言−厚生労働省の立場から」と題した講演が行われた。

 本大会の参加者は2500名を超え,盛況のうちに幕を閉じた。次回の第29回 医療情報学連合大会は,広島国際会議場において,11月22日(日)〜25日(水)の4日間にわたり開催される。大会長は広島大学医療情報部の石川 澄氏。テーマは,「世界の保健医療情報学の牽引者としての使命−質,安全,効率,満足の向上に,どのように寄与したか,寄与しなければならないか,寄与するか」となっている。また次回は,IMAI-WG(SiHIS)2009とAPAMI 2009との合同開催となる。全体のCoMHI in Hiroshima 2009(The Collaborative Meeting on Health Informatics in Hiroshima 2009)の会期は,21日(土)〜25日(水)である。

・IMIA-WG4(SiHIS)2009
会期: 11月21日(土)〜24日(火)
テーマ: 「健康情報の信頼性…患者安全のためのセキュリティとシステム管理とは」
大会長: 石川 澄(広島大学病院医療情報部)

・APAMI 2009
会期: 11月22日(日)〜24日(火)
テーマ: 「診療記録は何のため?」
大会長: 木村通男(浜松医科大学医学部附属病院医療情報部)

●問い合わせ先
有限責任中間法人日本医療情報学会
事務局
TEL 03-3812-1702  FAX 03-3812-1703
E-mail office@jami.jp
http://www.jami.jp/