国内で乳がん診断におけるMRマンモグラフィの有用性への認識が深まるなか,乳腺MRIの撮像法,読影,生検の適応などに関するディスカッションの場として,「乳腺MRI・Intervention研究会」が設立された。10月25日(土)には,東京慈恵会医科大学高木2号館南講堂(東京・港区)において,キックオフミーティングが開催された。
はじめに,代表幹事の福間英祐氏(亀田メディカルセンター乳腺センター)が挨拶に立ち,乳腺MRIによって,MRIでしか見えない病変(MRI-detected lesion)が見つかるようになっているなか,乳腺MRIの撮像法,読影法を確立して日本独自のカテゴリー分類や生検の適応を決め,さらには局所療法に向けての診断の局在化という流れを作り上げていくことが必要であり,本研究会ではその実現へ向けて議論を行っていきたいと述べた。続いて,乳腺MRIの動向やMRIガイド下生検の現状,課題などについて,4名の演者が講演を行った。
第1部は福間氏が司会を務め,はじめに磯本一郎氏(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座放射線診断治療学分野)が「乳腺MRIの近年の動向:海外と日本のガイドライン」と題して講演を行った。また,戸崎光宏氏(亀田メディカルセンター乳腺センター)は,「日本でのMRIガイド下生検の必要性:当院の臨床データ」と題して講演し,同院が初めて経験した浸潤がんのMRIガイド下生検の症例画像や,2007年5月〜2008年5月までにMRIガイド下生検を行った40症例についての分析結果などを紹介。約30%にがんが見つかっているなど,その有用性と検討課題について述べた。
第2部では,五味直哉氏(癌研有明病院画像診断部)が司会を務め,まずは戸崎氏が「MRIガイド下Interventionの歴史」と題して,欧米におけるMRIガイド下Interventionの手技やバイオプシーデバイスの変遷などを紹介した。その後,上田正和氏(株式会社メディコン)が「MRIガイド下生検デバイス:現状と今後の方向性」と題して,日本で使用可能なバイオプシーデバイスの特徴や使用法について詳述。さらに,戸崎氏が「米国でのMRIガイド下生検:実際の手技」と題して,手技の様子をビデオで紹介した。
MRIガイド下生検は,撮像および手技に1時間程度を要するため,専用のMRIを設置していない施設では実施が困難なほか,生検に使用できる機器が国内では限られているなど課題も多い。現状では,MRマンモグラフィの有用性は認識されているものの,MRIでしか見つけられない病変が日本において実際にどの程度存在するのかが明確でないことから,質疑応答では,MRマンモグラフィの必要性や,MRIガイド下生検が行えない施設での対応などについて,活発な議論が交わされた。 |