2008年度日本消化器関連学会週間(JDDW2008)が10月1日〜4日まで,グランドプリンスホテル新高輪(東京)を主な会場に開催された。第76回日本消化器内視鏡学会総会,第12回日本肝臓学会大会,第46回日本消化器がん検診学会大会,第39回日本消化吸収学会総会,第50回日本消化器病学会大会から構成されるJDDW2008は,2万人近い参加者が集う国内外でも最大規模の学術集会の1つである。
連日,多くのランチョンセミナーやサテライトシンポジウムが企画されたが,10月3日(金)には,第46回日本消化器がん検診学会大会とメディックサイト株式会社が共催するサテライトシンポジウム「大腸がん検査を知り尽くしたエキスパートが語るCTコロノグラフィ〜注腸検査,内視鏡検査,CT検査の視点から〜」が行われた。CTコロノグラフィ(CTC)は1994年に米国で初めて報告され,マルチスライスCTの発展とともに研究と臨床応用が進んできた。欧米での普及が先行しているが,最近ではわが国においてもようやく普及の兆しが見え始めている。本シンポジウムは,現在の大腸がん検査のスタンダードである内視鏡検査や注腸検査から見たCTCの評価・位置づけを中心に,それぞれのエキスパートが講演を行った。司会は,内視鏡検査の第一人者である光島徹氏(亀田メディカルセンター幕張)とCTC研究の第一人者である飯沼元氏が務めた。
まず光島氏が,「注腸検査から見た内視鏡検査,そしてCTコロノグラフィ」と題して,スクリーニング大腸内視鏡のパイオニアとして25年間で10万件以上の検査を行ってきた実績をもとに,いまなぜCTCなのかを分析した。内視鏡や注腸検査は,術者の技量や診断能力に依存する点が大きく,マンパワーの面からもスクリーニング法としては普及が困難であると指摘。CTCの診断能が向上すれば,これからの時代に必要とされるとの見解を示した。英国の内視鏡医の視点から発表したセントメリー病院のJames East氏は,CTCでは9 mm以上のポリープが発見可能で,2005年の報告では,感度95%,特異度95%という成績だったと述べた。CTCはすでに注腸検査件数を上回っており,ワークショップやハンズオンセミナーなどの読影教育を積極的に展開しているという。日本の内視鏡医の視点からは国立がんセンター中央病院の松田尚久氏が発表。がんセンターでは注腸検査からCTCへのシフトが進んでいる。1日で内視鏡とCTCの同日術前検査が可能で,後日の注腸検査をカットできることは大きなメリットだと述べた。今後,平坦型病変に対する描出能の向上が図れれば,スクリーニングとしての有効性も見込めるとした。最後に,放射線医の視点からCAD(コンピュータ支援検出システム)をメインテーマに発表した国立がんセンターの三宅基隆氏は,CTCはスクリーニング法として大きな可能性があり,さらにCADは精度と効率の向上をもたらすと述べた。同センターは2006年から,メディックサイト社とCADの共同研究を開始し,ポリープ検出に対するCADの成績を検討してきた。その結果,CADを用いると感度が81%から91%に,読影の非経験者でも75%から93%に向上した。CADは読影精度や効率の向上に有効であり,将来的には便潜血検査後にCTCとCADを二次スクリーニングとして行い,内視鏡につなげていくという流れが望ましいと述べた。
発表後のディスカッションで松田氏は,わが国の大腸がんは増加する一方だが,便潜血検査の受診率は約20%たらずであり,侵襲の少ないCTCが普及することで受診率の向上と死亡率の減少に貢献しうるのではないかと述べた。陥凹型,平坦型のがんや,10 mm前後のsm癌を確実に検出するための努力が今後の課題ということだが,検査手技が簡便で被検者への負担が少ないCTCとCADの普及は時代の要請と言えるだろう。 |