「Philips Academy Seminar 心臓イメージングワークショップ」が9月7日(日),品川プリンスホテルメインタワーにて開催された。8〜10日に開催される第56回日本心臓病学会の前日の開催となり,循環器医療に関係する医師・技師らが多数参集した。フィリップスエレクトロニクスジャパンヘルスケア事業部の藤原浩社長,および代表世話人の順天堂大学医学部附属順天堂医院循環器内科・代田浩之氏の挨拶に続いて,「最新のトピックス」をテーマにしたモダリティ別の発表が行われた。
まず,「心エコーによる最近の心機能評価と展望」と題して,大門雅夫氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院循環器内科)が超音波の最新アプリケーションとエコーラボの実際を紹介した。定量的な局所壁運動の評価やLV torsion評価に有用な2Dスペックルトラッキング法,簡便に心機能評価が可能なリアルタイム三次元心エコーなどの新しい心機能解析法を解説し,超音波の最新動向を報告した。
MRは佐久間肇氏(三重大学医学部附属病院中央放射線部)が「進化する心臓MRI─1.5Tと3.0Tの臨床応用とその有用性─」と題して報告。現在はシネMRIと遅延造影MRIを中心とした心臓MRIが実施されているが,32チャンネルコイルと3T MRIによる次世代の心臓MRI検査で期待される内容として,DENSE MRI(ルーチンな心筋ストレイン解析),負荷心筋パーフュージョンMRI,冠動脈MRA,冠動脈不安定プラークの非侵襲的診断を挙げた。今後,3T MRIの撮像プロトコールを普及させるべく,フィリップス社と共同で設立した心臓MRI教育センターにて技師のトレーニングを行っていくという。
「心臓CTの動向─現状と今後の展望─」をテーマに発表した望月輝一氏(愛媛大学医学部生体画像応用医学分野)は,マルチスライスCTの急速な進歩により,冠動脈CTAによる冠動脈狭窄の評価は感度90%以上,特異度95%以上という良好な成績が認められ,臨床に普及してきたと述べた。一方,CTメーカーは64列以上のMDCT開発にしのぎを削り,それぞれ特徴ある製品を登場させている。DSCT(83ms),HDCT(高分解能),ADCT(320スライス,16cm),そしてフィリップス社のBrilliance iCT(0.27s, 256スライス,8cm)と,バトルが繰り広げられている現状を解説し,0.27秒回転という世界最速のBrilliance iCTに対する期待を述べた。
最後にPCIについて,藤田勉氏(札幌心臓血管クリニックCEO)が,「治療に特化したアンギオ装置について─PCIを支援する最新アプリケーション─」と題して発表。2008年4月に心血管に特化するカテーテル治療専門クリニック(19床)を開業した藤田氏は,いかにカテーテル検査を行わずに診断をつけるかという方針のもと, 64列MDCTによる冠動脈CTAや,US・ABI・TMT・SPPによるバスキュラーラボを整備し,胸痛患者にはまず64列MDCTを行うフローを実践していると述べた。また,新しいアプリケーションであるCT TrueviewやStentBoostの有用性も紹介した。
4名の演者からの発表後,代田浩之氏と伊藤浩氏(桜橋渡辺病院心臓・血管センター)の司会により,主に虚血性心疾患の実臨床(メタボ検診後のスクリーニング)における各モダリティの選択と診療の流れについてパネルディスカッションが行われた。冠動脈狭窄の検出はもちろん,予知が可能かどうかについて,各モダリティの役割と有用性がそれぞれの立場から議論され,アンギオを凌駕するメリットが強調されたが,MRIは社会的・経済的負担,CTは被ばくなどが今後の課題として取り上げられた。
特別講演は,オランダのユトレヒト大学病院放射線科教授のMathias Prokop氏が,「Cardiac imaging with the iCT ─improved standard and advanced applications─」と題して,第4世代スキャナ Brilliance iCTの使用経験を報告した。iCTは,0.625mm×128=8cmのワイドディテクタ,新しいX線管球“z-flying focal spot”,256スライス/回転,スキャンタイム0.27s/回転,2D scatter gridなどのスペックを誇る。さらに,冠動脈CTAは3秒スキャンで3〜5mSvの低被ばくを実現している。また,さまざまな新しいアプリケーションについて多彩な症例画像を提示しつつ説明した。Brilliance iCTは国内1号機の導入が決定したとのことで,今後の普及が期待される。
最後に司会の伊藤氏が,モダリティの進歩で,アンギオで得られない情報がCTやMRIで見つかるようになり,それを予防に結びつけていくことが求められると述べ,日本のユーザーとフィリップス本社との相互コミュニケーションを希望してまとめとした。 |