第4回MRマンモグラフィ研究会(代表世話人:中村清吾氏・聖路加国際病院ブレストセンター長)が7月26日(土),聖路加国際病院(東京)にて開催された。乳がん診断においては近年,MRマンモグラフィによる精査の有用性が期待されており,同研究会では,精度の高いMRマンモグラフィ診断の普及と,診断基準の策定に取り組んでいる。4回目となった今回は,「実態調査で明らかになった日米最新情報と最先端の撮像法ガイドラインを紹介」をテーマに,2題の講演が行われた。
聖マリアンナ医科大学の印牧義英氏は,同研究会によって行われた「MRマンモグラフィ実態アンケート調査」について,その分析結果を報告した。これは,厚生労働省が,がん診療拠点病院におけるMRマンモグラフィ設備の整備をめざし,「乳がん用マンモコイル緊急整備事業」として,乳腺専用コイル購入費の半額を補助する決定をしたことが背景となっている。日本では,MRマンモグラフィ施行の実態や,マンモコイルの整備の実態などが明らかになっていないことから,がん診療拠点病院および乳がん手術件数の多い施設を対象に緊急アンケートを実施し,その結果を報告した。
対象となった549施設中321施設(58%)から回答があり,そのうちの272施設がMRマンモグラフィを実施していることがわかった。しかし,そのうちの58施設で専用コイルを使用しておらず,その理由として「コイルがない」が51%を占めた。また,MRマンモグラフィを実施していない49施設では,その主な理由として「依頼科のオーダがない」が24%を占めており,その原因として,MRマンモグラフィが認知されていないことなどが挙げられた。日本でもMRマンモグラフィ撮像件数の伸びが予想される中,印牧氏は,認知度の向上や診断基準の標準化が急務であると述べた。
明石市民病院の門澤秀一氏は,「MRマンモグラフィ:撮像法の実態調査と標準化」と題し,わが国におけるMRマンモグラフィ撮像法に関する調査報告,およびACR(American College of Radiology)やESR(European Society of Radiology)が推奨する撮像法を踏まえた考察,明石市民病院の撮像法の紹介,日本磁気共鳴医学会による研究プロジェクト「ルーチンMRI撮像法の標準化検討」についての報告の4つをテーマに講演を行った。日本においては,MRマンモグラフィの撮像法のスタンダードがいまだ確立されていない。そこで門澤氏は,1.5T MRIでMRマンモグラフィを施行している26施設などを対象に,撮像法に関する調査を行った。特に撮像プロトコールについては,T1強調像,T2強調像,拡散強調像,3D-GRE(Gradient Echo)法,ダイナミックMRI,造影早期相などについて,パラメータやスライス厚,撮像方向などの統計結果を紹介。発表の最後には,日本磁気共鳴医学会研究プロジェクトによる撮像法に関する提言として,推奨度の最も高い勧告Aから勧告C1までの撮像法として,「脂肪抑制FSE T2強調」(A),「脂肪抑制高速3D-GRE T1強調dynamic study」(A),「造影後期相」(B),「GRE T1強調」(C1)の4つを紹介した。
研究会後半には,聖路加国際病院の角田博子氏と癌研究所の秋山 太氏が座長を務め,症例検討が行われた。なかでも,亀田総合病院の戸阜宏氏が画像を提示したMRガイド下乳腺バイオプシーは,日本では唯一同院で施行されており,非常に貴重な資料である。欧米では,MRIでしか見えない病変はMRガイド下で生検を行うことがスタンダードであり,成功率も高いことから,戸侮≠ヘ,MRガイド下乳腺バイオプシーの有用性を強調した。
次回のMRマンモグラフィ研究会は2009年2月8日,長崎において開催される予定である。 |