(株)AZEは,三次元画像解析ワークステーションAZE VirtualPlaceシリーズの使用経験を報告する講演会「INNOVATIVE AZE 2008」を,8月8日(金)にヒルトン大阪(大阪市)で,9日(土)に,ザ・リッツ・カールトン東京(港区)で開催した。
大阪で開催された「INNOVATIVE AZE 2008 OSAKA」では,大阪大学大学院医学系研究科放射線医学講座教授の中村仁信氏が座長を務め,岡山画像診断センター副院長の笹井信也氏による「すべてをシンプルに─3D画像診断」,Stanford University Medical Center Division of Cardiovascular Medicineの寺島正浩氏による「心臓MRI up-to-date」,(株)AZE・畦元将吾代表取締役社長による「最新ネットワークシステムAZE VirtualPlace」の3題の講演が行われた。また,笹井氏,寺島氏,畦元氏は,東京で開催された「INNOVATIVE AZE 2008 TOKYO」でも同テーマで講演を行った(詳細は後述)。
「INNOVATIVE AZE 2008 TOKYO」は3部で構成され,幅広い領域から同シリーズの活用法や有用性が報告された。
第1部は,サン虎の門クリニック副院長の平松慶博氏が座長を務め,4題の講演が行われた。木沢記念病院医療技術部放射線技術課の冨田雄平氏は,「320列CT Aquilion ONEの使用経験─AZE VirtualPlaceによる臨床画像」をテーマに発表した。同院には,2008年3月,320列の検出器を搭載したArea Detector CT「Aquilion ONE」(東芝社製)が導入され,7月末までに175件の心臓検査が行われた。冨田氏は,AZE VirtualPlaceで作成した心臓の期外収縮 (3段脈),息止め不良症例,心房細動(AF)の3D画像などを示して320列検出器搭載CTの有用性を述べた。また,現在4D画像を整形領域や放射線治療で利用することを検討していると述べ,手関節や放射線治療(肺腫瘍)の画像を紹介した。虎の門病院健康管理センターの大本由樹氏は,「MRI冠状動脈解析に関して─AZE VirtualPlaceを用いて」と題して講演した。同センターでは,AZE VirtualPlace 風神+を使用して冠動脈MRAの解析を行っている。大本氏は,WHMRA(whole heart magnetic resonance angiography)における冠動脈の撮像や解析のポイントなどを説明。撮像時の画像の確認にsliding thin slab MIP,狭窄度診断にストレッチCPR,動脈硬化ドック受診者への説明にVRの画像を使用していると述べた。また,循環器医の立場から見て,冠動脈造影検査と同じ状態の画像が得られるAngio Graphic MIP画像の有用性も非常に高いと評価し,こういった解析を複合的に行うことができるワークステーションが有用であると述べた。東京女子医科大学病院腎臓外科の廣谷紗千子氏は,「Vasucular Access 術前術後の画像解析について」と題して講演。透析内シャント血管の手術における3D-CTAの画像を術中写真とともに紹介した。廣谷氏は,シャントトラブルに対する3D-CTAは,状態把握や術式決定において,術者の視点で画像構成を行うことが必要であると述べ,外科医も躊躇なく使えるワークステーションであると同社の製品を評価した。第1部の最後で,畦元代表取締役社長が,最新ネットワークシステム「AZE VirtualPlace+(プラス)シリーズ」の製品紹介を行った。システム導入効果として,(1)解析処理数の大幅アップが見込める,(2)迅速な検査結果が得られる,(3)患者さんの待ち時間短縮を図ることができる点を挙げた。また,ネットワーク型は,同時に複数台のワークステーションが利用可能であるため,導入費用を抑えることもできると述べた。
第2部は,東海大学医学部基盤診療学系画像診断学教授の今井 裕氏が座長を務め,2題の講演が行われた。熊本中央病院放射線科医長の片平和博氏は,「Terminal serverを用いたvolume読影の有用性」と題して講演した。片平氏は,血管走行に応じて任意方向の観察が可能になるsliding thin slab MIP法について,肺,胸部,膝などの検査に応用した症例画像を提示し,全身のさまざまな部位に有用な読影法であると述べた。また,3Dの読影に時間軸情報を加えた4D sliding thin slab MIP法について,診断,治療において,新たな情報を得ることが可能になったと,その有用性を評価した。「すべてをシンプルに─3D画像診断」と題して講演した笹井氏(岡山画像診断センター副院長)は,患者さんへの結果説明までの時間を短縮するためにも効率的な3D画像診断が求められるとして,15分を目安とした画像作成法を提案した。笹井氏は,MPR,CPR,MIP,VR,VEを使い分け,または組み合わせて,診断に有用な情報を効率的に引き出すことがシンプルな3D画像診断につながるとし,適切な画像を選択する重要性を強調した。
第3部では,東邦大学医療センター大橋病院院長の甲田英一氏が座長を務め,2題の講演が行われた。寺島氏(Stanford University Medical Center Division of Cardiovascular Medicine)は,「心臓MRI up-to-date」と題して講演。MRIは血管壁を直接描出できるな ど,動脈硬化の診断に非常に有用であり,不安定プラークを検出することが可能であると述べた。さらに,molecular imagingにより,不安定プラークの要因と考えられる分子や細胞を直接イメージングすることで,分子レベルで異常を早期に発見できる可能性があると述べた。また現在,MRIやCTなどの画像が循環器領域でも多く用いられるようになってきており,ワークステーションが心血管の診断に果たす役割は今後ますます大きくなっていくと述べた。北海道大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野教授の西村正治氏は「気管支喘息,COPDにおける3次元気道解析の臨床的意義」をテーマに講演した。西村氏は, AZE社の協力のもとに開発したという,すべての気管支で,CTの3D画像から気道の走行の長軸方向に対して垂直な短軸像を得ることができるソフトウェアを紹介。気道模型を用いた検証の結果から,同ソフトウェアにより内径2mmまでの気管支内径面積,気道壁面積比を正確に診断できる可能性を示した。 |