第12回全国X線CT技術サミットが8月9日(土),北海道・札幌コンベンションセンターにて開催された(当番世話人:平野 透氏・札幌医科大学附属病院放射線部,第一三共株式会社共催・月刊インナービジョン協力)。今回は,第27回北海道ヘリカルCT研究会(代表世話人:山口隆義氏・北海道社会保険病院放射線科)との共同開催であり,420名を超える参加を数えた。北海道ヘリカルCT研究会の講演が午前中に2題行われ,ランチタイムの機器メーカープレゼンテーションを挟んで午後7時まで,全国X線CT技術サミットのワークショップや講演が行われた。また今回初めて,一般演題発表(ポスター)が設けられ,30題が展示発表され,金,銀,銅とデザイン賞の授与も行われた。
午前の北海道ヘリカルCT研究会では,東芝で世界初の高速連続回転形CTの開発を率いた森一生氏(東北大学大学院医学系研究科保健学教授)の講演「高速連続回転CT開発の話─第4世代について技術的側面から─」が注目された。1985年に製品化1号機が納入された東芝社製「TCT-900S」は高速連続回転CTのルーツで,ヘリカルスキャンのプラットフォームとなった装置であり,伝説の最初で最後の第4世代である。TCT-900Sはニューテイト・ローテイト(N&R)方式で,今日のCTが持つ標準スペックをすでにほぼ達成していた当時の最先端装置であったが事業的には失敗し,第3世代にその座を明け渡している。なぜ第4世代は消えたのか,当時の開発秘話を通じて,CTの過去から未来に思いを馳せる興味深い内容が会場を魅了した。
午後の全国X線CT技術サミットでは,「良好な三次元画像作成のために」をテーマに基礎編と臨床編のワークショップが企画され,各演者からは元画像の重要性や目的に合ったオーダに応える画像作成の必要性などが強調された。MDCTの進歩や画像処理WSの高性能化・自動化などにより高精細な三次元画像が容易に作成される時代となったが,臨床医が求める情報を的確に提供するための考え方や技術的ポイントが改めて確認された。久米伸治氏(日々野病院放射線科)の教育講演「誰でもわかるプラークの基礎知識」は,CT,MRI,USなどマルチモダリティによるプラークの性状診断について,自身の豊富なデータを駆使して詳細に解説した。最後の締めは脳神経系画像診断の第一人者である岩手医科大学准教授の佐々木真理氏が,「脳神経CTの最前線:標準化と最新技術の動向」と題した特別講演を行った。急性期脳梗塞に対する血栓溶解療法(rt-PA静注療法)の適応決定は頭部単純CTがゴールドスタンダードであるが,Early CT signsを描出しうる画質を得るための撮影法や表示法,判定法を標準化したMELT Japanの成果を紹介し,標準化の重要性を訴えた。さらにCT灌流画像(CTP)についても,施設間,装置間の差異など課題が多く,ASIST-JapanによるCTP/MRPの標準化が推進されていることを紹介した。治療適応を左右する画像に要求される厳しさを示し,安易な撮影に警鐘を鳴らした。
次回の第13回全国X線CT技術サミットは7月4日(土),沖縄県宜野湾市の沖縄コンベ ンションセンターで開催される予定である。当番世話人は石風 呂実氏(広島大学病院診療支援部)が務める。
◎第12回全国X線CT技術サミットおよび第27回北海道ヘリカルCT研究会の発表内容は,月刊インナービジョン11月号に特別企画として誌上報告されます。
ポスター展示発表 |
【金賞】
15 山下道明・他(北海道大学病院):A new method for evaluation od slice sensitivity profiles(SSPz) for spatial variation in 64-chennel MSCT.
【銀賞】
26 井上 健・他(高井病院):高心拍症例におけるCardiac ECG Dose Modulation 機能の使用方法の検討
【銅賞】
10 渡辺一廣・他(東海大学医学部付属大磯病院):X線CT画像における非可逆圧縮(JPEG2000)を用いた画像の検討
【デザイン賞】
30 関谷俊範・他(藤田保健衛生大学大学院):どうしてヘリカルスキャンを用いたサブトラクションで回転同期が必要か? |
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