8月2日(土)昭和大学横浜市北部病院において,第15回IHEワークショップが開催された。このワークショップは,2004年から毎年数回行っているもの。第10回医用画像認知研究会,第10回遠隔画像診断部会,第8回画像診断報告書研究会,第37回JPACS医用画像電子化研究会との合同研究会という形をとり,3日(日)には,合同セミナーとして3つのセッションが行われたほか,特別講演が設けられた。
放射線医学総合研究所の安藤 裕氏と昭和大学横浜市北部病院放射線科教授の櫛橋民生氏の挨拶に続き始まったワークショップは,3つのセッションに分けて構成された。最初のセッションである「媒体による施設間連携」では,岡崎市民病院の奥田保男氏が司会を務めた。その1つ目の演題は「IHE概要」。東北大学病院の坂本 博氏が発表した。坂本氏は,IHEを医療連携のための情報統合化プロジェクトと説明し,IHEサイクルや用語について解説した。また,IHE発展の歴史と海外の状況を紹介。その上で,コネクタソンやワークショップなどの国内の活動も説明した。続いて,名古屋広小路クリニックの江本 豊氏が,「放射線領域の業務シナリオ」をテーマに講演した。江本氏は,ワークフロー,コンテンツ,インフラの3種類の統合プロファイルについて,放射線検査業務の中でどのような位置づけになっているかを紹介した。その後,「PDIのユースケース」と題し,埼玉医科大学総合医療センターの奥 真也氏が講演した。奥氏は,同センターで2005年から稼働しているIHEに対応したマルチベンダーによる放射線部門システムを紹介。PDI(Portable Data for Imaging)統合プロファイルによるCD-Rを使った施設間の画像連携の事例について,問題点も含め報告した。
奥氏の講演に続き,浜松医科大学の木村通男氏が,「PDIのガイドライン HELICS指針について」と題して発表した。木村氏は,PDIの事例について自施設での問題例を紹介した上で,PDIによる施設間連携のための「SS-MIXアーカイブビューア」の説明をした。さらに,施設間連携を円滑に行うために始められたガイドラインづくりの状況を報告し,標準規格としての指針を示すHELICS協議会(医療情報標準化推進協議会)の活動を紹介した。この後,放射線医学総合研究所医療情報課の向井まさみ氏が,「IRWFのユースケース」と題して,2006年に開発された統合プロファイルであるIWRF(Import Reconciliation Workflow Profile)について,ユースケースを説明。さらに,予約の有無による2種類のワークフローなどを説明した。
「媒体による施設間連携」セッションの最後は,アレイ(株)の阿部 聡氏が「施設間連携にCDやフィルムを使うときの注意点:メーカの立場から」をテーマに講演した。アレイは,PDIに対応したCD作成が可能な,DICOMデータ統合管理ソフトウエア「Array AOC」などを手がける企業である。阿部氏は,施設間連携におけるデータ取得には問題が起こる可能性があるとし,CDなどのメディアやデータに関することと,受け入れ側のPACSのサーバ,ビューワに起因する問題点について説明した。その上で,ソリューション事例として,IRWFを用いた運用についてデモンストレーションを行った。阿部氏は講演のまとめとして,PDIとIRWFを合わせた運用にすることで,多くの問題が解決すると述べた。
2番目のセッションのテーマは,「モニタ診断」。司会は向井氏が務めた。初めに,「CPIのユースケース」と題して,奥田氏が講演した。奥田氏は,岡崎市民病院におけるモニタ診断移行の経緯を紹介し,導入時期や構成が異なるモニタを管理していくことの問題点を説明した。そして,統合プロファイルであるCPI(Consistent Presentation of Images)とDAICOMのGSDF(Grayscale Standard Display Function)のGSPS(Grayscale Softcopy Presentation State)によるモニタ管理のあり方について言及した。続いて,「JESRA X-0093 QAガイドライン」と題し,コニカミノルタエムジー(株)の吉村 仁氏が発表した。吉村氏が同ガイドラインの作成の流れを説明した上で,適用範囲と管理体制について述べた。さらに受け入れ試験と不変性試験の手法を紹介した。引き続き,吉村氏は「画像表示に関連する新しい統合プロファイルの概要−MANMO,NMI」をテーマに,IHEの拡大とともに出てきた画像表示に関する新たな統合プロファイルであるMANMO(Mammography Image)とNMI(Nuclear Medicine Image)について紹介した。
最後のセッションは,「DICOMの諸問題」。まず,安藤氏が「DICOM入門」と題し講演した。安藤氏は,DICOMの歴史について述べた後に,DICOM規格の概要を説明した。さらに,新分野としてJPEG2000などのキーワードを紹介。DICOMの留意点として,通信プロトコールやデータフォーマット,サービスクラスなどを挙げた。次いで,「DICOM接続の問題点」として,イリモトメディカルの煎本正博氏と川村洋一氏が講演した。まず,煎本氏が,画像診断サービスを行う事業者として,DICOMデータを受け取ったときに起きる問題点を指摘。それを受けて川村氏は,メーカー側の理解不足や総合運用性の軽視などの実例を紹介した。さらに川村氏は,DICOMは成長途中であり,相互運用性を保証するものでなく,万能ではないとの見方を示した。
次回のワークショップは,2009年1月24日(土)に神戸での開催を予定している。
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安藤 裕 氏
(放射線医学総合研究所) |
櫛橋民生 氏
(昭和大学) |
奥田保男 氏
(岡崎市民病院) |
坂本 博 氏
(東北大学) |
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江本 豊 氏
(名古屋広小路クリニック) |
奥 真也 氏
(埼玉医科大学) |
木村通男 氏
(浜松医科大学) |
向井まさみ 氏
(放射線医学総合研究所) |
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阿部 聡 氏
(アレイ) |
吉村 仁 氏
(コニカミノルタエムジー) |
煎本正博 氏
(イリモトメディカル) |
川村洋一 氏
(イリモトメディカル) |
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