在日米国商工会議所(ACCJ)医療機器・IVD小委員会は7月31日(木),帝国ホテル(東京都・千代田区)で,「先進医療技術の役割」啓発キャンペーンの第13回メディアレクチャーを開催した。このキャンペーンは,先進医療技術が早期発見・早期治療に大きな役割を果たし,患者のQOL向上につながるとともに,医療の効率性を高め医療費の適正化にも貢献することをPRするために,2002年11月から始まった。活動内容は,ニュースレターの発行やビデオ制作,セミナーの開催などで,これらを通じ情報提供を行っていくこととしている。報道関係者向けに行うメディアレクチャーは,2003年1月に第1回目として「乳がんの早期発見・早期診断と先進医療技術」を開催した。
今回のメディアレクチャーのテーマは,「心臓から全身の異変部位の発見と治療─循環器からはじまる全身のトータルマネージメント〈冠動脈CTと最新のステント治療〉」。開会に先立ち挨拶した同委員会委員長で,エドワーズライフサイエンス(株)代表取締役社長の王 恵民氏は,6年に及ぶキャンペーンの振り返り,先進医療技術が患者QOLの向上に貢献し,日本の医療が抱える問題を解決するという理解が広まってきていると,活動の成果について述べた。
開会の挨拶に続き,東京女子医科大学名誉教授の桜井靖久氏による講演が行われた。演題名は「心臓疾患と先進医療技術について」。桜井氏は「医療=産業」だとして,経済効果が大きく,雇用の場を提供し,患者QOLをつくり出すと述べ,医療技術の進歩が社会経済に貢献していると説明した。さらに,心臓は,最先端技術を生かしやすい領域であるとして,細胞シートなど再生医療の現状を紹介した。
これに引き続き,日本医科大学放射線科准教授で,特定非営利活動法人放射線医学研究啓蒙センター副理事長の林 宏光氏が「切らずに診る人体’08─心臓CTの現状を中心に」と題して講演を行った。林氏は,マルチスライスCTの登場により,CT angiography (CTA)で,冠動脈狭窄とプラークの診断が可能になったとし,特に64スライスのマルチスライスCTによってCTAが従来の血管造影に置き換わっていくと症例画像を提示しながら説明した。また,PCIやCABGのフォローアップに64スライスのマルチスライスが有用だと述べた。その一方で,血管造影と比較したCTAの問題点として被ばくを挙げ,低被ばく化のための心電同期撮影法について説明。さらに,将来のCTの進化として,GE社製の新開発のGemstoneディテクタを採用した「LightSpeed CT750 HD」(国内薬事未承認)を紹介した。林氏は,2008年度の診療報酬改定で,冠動脈CT加算が新設されたことについても取り上げ,血管造影よりも検査費用が低い,冠動脈CTが,今後,心臓血管疾患の診断に重要な役割を持つ検査として成熟していくと述べ,講演を終えた。
次に,東邦大学医療センター大橋病院循環器内科准教授の中村正人氏が,「PCIにおける近年の進歩 心臓から全身へ」をテーマに講演した。中村氏は,まず血管造影が検査だけでなく治療目的へと適応が広がっているとして,1960年代からの歴史を振り返った。そして,血管造影が虚血性心疾患におけるゴールドスタンダードだと述べた後,PCIの技術としてバルーン拡張術などを紹介した。さらに,近年登場したCYPERやTAXUSなどの薬剤溶出型ステント(DES)について,ベアメタルステント(BMS)との比較を行いながら,糖尿病症例への適応などを説明した。
3名の講演の後には,質疑応答が行われた。その中で,薬事承認に時間がかかるという問題が取り上げられた。これについて,桜井氏は,企業も行政も,患者のQOL向上意識を持って取り組んでほしいと意見を述べ,先進医療技術の果たす役割の重要性を改めて強調した。 |