7月16日(水)〜18日(金)の3日間, 東京ビッグサイト(東京・江東区)において,「国際モダンホスピタルショウ2008」が開催された。今回で35回目となる国際モダンホスピタルショウは,医療情報システムのほか,医療機器,設備,サービスなどの展示会として国内最大規模を誇る。特に,電子カルテシステムなどの医療情報システムは,数年来,市場の拡大とともに出展企業も多く,システム導入を検討中の医療関係者にとっても,注目のイベントとなっている。
(社)日本病院会と共同で主催する(社)日本経営協会では,介護フェア2008のほか,7つの展示会を同時期に開催しており,東京ビッグサイトは多くの来場者で賑わった。初日の9時30分から行われた開会式は,日本病院会会長の山本修三氏や日本経営協会理事長の本松茂敏氏らが出席し,盛大に行われた。
今回の国際モダンホスピタルショウのテーマは昨年と同様,「健康増進で築く豊かな医療と福祉 − 新しい地域ケアの姿をめざして」。医療費の適正化を中心とした医療制度改革の中で,今年4月から保険者による特定健診・保健指導が義務化されるなど,予防医療に関する施策が進められている。また,新たな地域医療計画が4月から始まり,がん,脳卒中などの4疾病と救急,小児,周産期といった5事業の医療提供体制が都道府県単位に策定され,医療機関の連携がますます重要になってきている。こうした動向を踏まえ,予防医療や地域医療連携を充実させて いくための展示会として, このテーマが昨年に引き続き与えられた。
医療制度改革は医療や福祉分野の市場拡大を進め,企業にとっては,新たなビジネスチャンスをもたらすことになる。東京ビッグサイト東展示棟では,8000m2の展示面積に,昨年の368社より多い,375社が出展した。展示は,「医療機器,環境設備」,「健診・ヘルスケア」,「看護」,「病院運営サポート・サービス」,「医療情報システム」の5つのゾーンに分けて行われた。また,主催者企画展示として,「ユビキタス医療IT − 人と地域と医療をつなぐ」が設けられた。この企画展示には,35社が出展。秋田大学医学部附属病院における電子タグを用いた注射認証システムや,経済産業省の実証事業として香川大学医学部附属病院などが取り組んだ妊産婦遠隔診療システムのパネル展示などが行われた。このほか,特定医療法人社団高橋病院が開発したベッドサイドシステムも実際にベッドサイドを再現し,デモンストレーションを行っていた。この高橋病院の理事長である高橋 肇氏は,医療情報ネットワークセミナーにおいても,2日目の午後に,ベッドサイドシステムを紹介したほか,市立函館病院などと行っている道南地域医療連携ネットワークと,そこで運用している双方向地域連携システム「MedIka」についてプレゼンテーションを行った。
展示の中でも出展企業が多い「医療情報システム」ゾーンは最近,国際モダンホスピタルショウの開催に合わせて,新製品を投入してくる企業が増えてきている。 東芝メディカルシステムズ(株)は,初日に東京ビッグサイト内において,記者発表会を行い,複数部門統合型のPACS「RapideyeCore」と特定健診・保健指導に対応した「Health support Agent」 の2製品を発表した。RapideyeCoreは,「簡単,便利,スピーディに使える医用情報システム」をコンセプトに開発され,放射線部門だけでなく,MFER形式の心電図データ,内視鏡画像などの一元管理が可能。従来のPACSは,放射線部門の画像だけを扱っていたが,他部門の画像を統合的に保存・運用でき,低コストでのシステム構築が可能だ。2008年度の診療報酬改定では,電子画像管理加算が設けられ,PACS導入施 設の収入増が見込まれる。こうしたことから,大規模だけでなく,中小規模の病院でもPACSの導入が進むと予想されており,そうしたニーズに応える製品だと言える。一方のHealth support Agent は,事前業務から後日業務までを統合管理し,健診業務の効率化を図るというもの。こちらは特定健診・保健指導の義務化による需要拡大を見据えたシステムである。
ヘルスケアIT事業部門を強化している同社では,東芝住電医療情報システムズ(株)とともに,出展者プレゼンテーションセミナーにも参加した。2日目には,独立行政法人国立病院機構長崎医療センターの木村博典氏の講演「診療報酬改定を追い風にする次世代画像情報システム − 経営・情報部の視点」を行った。この講演では木村氏から,フィ ルムレス運用によって同センターにおいてフィルム費用5000万円の削減と電子化画像管理加算1200万円の収入増が予測されるとの報告があった。また,3日目には,島根大学医学部附属病院医療情報部部長の津本周作氏が,「診療データへのデータマイニングの適用と今後の展望」と題した講演を行った。津本氏はデータマイニングの手法について説明した上で,DPCデータによる全国平均値との比較などの活用事例を紹介した。
新製品としては,病院向け電子カルテシステムの最大手である富士通(株) も大規模・中規模病院向けの「HOPE/ EGMAIN-GX」を7月7日に発表し,国際モダンホスピタルショウで披露した。このシステムは,従来のカスタマイズ型の「HOPE/EGMAIN-EX」とパッケージ型の「HOPE/EGMAIN-FX」を融合したもので,容易な操作性とクリティカ ルパス機能などが特長。定期的なレベルアップサービスを提供することで,ユーザーは低コストかつスピーディなシステム導入が可能になる上に,最適な状態で運用できるようになる。
一方で,診療所向け電子カルテシステムを手がける三洋電機(株)も初日に記者発表会を行い,富士フイルム(株)と共同で開発した,電子カルテ機能と検査管理機能を連携させた「FCR CAPSULA VIEW」を発表した。三洋電機の電子カルテシステム「Medicom-HR」 とFCR の画像ビューワを組み合わせたもので,撮影指示・画像確認・画像処理・バックアップなどを医事・電子カルテ機能とともに1台の端末で行う。業務の効率化が図れるだけでなく,省スペース化にもつながる。三洋電機では,ブース内でもデモンストレーションを行っていた。
このような新製品が登場するなど,特定健診・保健指導の義務化,地域医療計画,診療報酬改定の流れの中で,医療情報システム分野の市場は活発化していると言える。医療従事者の関心も高まっているようで,今回は,3日間で7万7800人の参加があった。次回の国際モダンホスピタルショウは,2009年7月15日(水)〜17日(金)の3日間,東京ビッグサイトで開催される予定である。 |