保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)は7月9日(水),コクヨホール(東京・港区)で「平成20年度業務報告会」を開催した。毎年開催され恒例となったこの業務報告会は,JAHISの各部会における前年度の活動実績と,今年度の計画が報告される。今回は,6月の総会において新たに会長に就任した東芝メディカルシステムズ(株)の桂田昌生氏が出席。開会に先立って挨拶した。
桂田氏は,日本の保健・医療・福祉分野におけるIT化について,EHRの実現やレセプトのオンライン請求など,取り組むことが数多くあると述べた。その上で,中期計画の目標として掲げている2011年度の市場規模5000億円以上,会員数400社以上という数値に対して,JAHISの活動を加速していけばクリアできるとした。また,桂田氏は,JAHISはアクティビティになってきており,今後その成果を出すことが日本の医療を良くすることにも結びつくと述べ,会員企業に対し理解と協力を要請した。
この挨拶に続き,運営会議議長の西原栄太郎氏が運営会議報告を行った。JAHISでは,6月の総会を経て,これまでの標準化推進部が標準化推進部会に昇格し,4部会1推進部の体制となった。西原氏はこうした現状を説明した上で,2008年度の事業概要として組織の基盤強化を図るほか,標準化・対外活動・国際活動の強化策についても報告した。
新たに部会に昇格した標準化推進部会の活動は,部会長の高平敏男氏が報告した。高平氏は,経済産業省が行った相互運用性の実証事業や地域医療情報連携標準化事業の成果を紹介。さらに,総務省・経済産業省・厚生労働省による三省連携健康情報活用基盤実証事業の概要を説明した。また,標準化推進部会の組織体制も触れ,それぞれの委員会活動の内容を紹介した。
この後,医事コンピュータ部会の報告が行われた。まず,部会報告として,部会長の富田 茂氏がレセプトオンライン化に向けての活動とそれに関連したマスター整備などの活動計画を説明した。また,副部会長の山口智久氏がオンライン請求やスマートカードを導入し医療制度改革の成果を上げている台湾への視察結果について報告した。
続いて,医療システム部会の報告が行われた。部会長の貴田武実氏は,6月の総会後の新体制について説明を行った。そして,旧委員会の活動内容を報告した上で,電子カルテ,検査システム,部門システム,セキュリティの各委員会の今年度の活動計画について説明した。
保健福祉システム部会の報告では,副部会長の畝田 透氏が今年度の体制について説明した。その上で,後期高齢者医療制度や特定健診・保健指導の義務化への対応も含めた今年度の取り組みについて報告した。また,障害者自立支援給付支払データ解析プロジェクトの金本昭彦氏が2007年10月から稼働した障害者自立支援給付支払システムに関して,給付実績データの分析・評価のための仕組みを検討した障害者自立支援調査研究事業の成果を発表した。
この後,事業推進部部長の半田一也氏が,同部の活動について報告した。JAHISは,2007年度は国際モダンホスピタルショウや日本薬剤師会学術大会の併設展示に出展したが,本年も出展する。また,半田氏は,保健福祉をテーマにした教育コースの説明を行ったほか,『医療情報システム入門2008』の改訂版制作についても明言した。
すべての報告の後,千葉県立東金病院院長の平井愛山氏による特別講演が行われた。講演のテーマは「医師不足時代のITを活用した医療連携と地域医療の再生」。平井氏は2004年4月から始まった臨床研修の必修化により,山武医療圏での医師不足が深刻化したと説明。この状況を地域医療再編・再生の好機ととらえ診療所と連携して取り組んだ,糖尿病地域医療連携の成果について報告した。平井氏は糖尿病医療における地域連携を循環型と位置づけ,地域連携パスの内容も紹介。糖尿病における地域医療連携を成功させるには,患者の努力とかかりつけ医の実力,ヒューマンネットワークが重要だと述べて,講演を締めくくった。 |