6月14日(土),東京コンファレンスセンター(東京・港区)において,第16回日本MR Angiography研究会と第6回3T MR研究会が共同開催された。第16回日本MR Angiography研究会は群馬大学医学部附属病院放射線部の天沼 誠氏が当番会長を,第6回3T MR研究会は岩手医科大学先端医療研究センターの佐々木真理氏が当番幹事をそれぞれ務めた。
日本MR Angiography研究会のセッション1は,頭部・頸部MRAがテーマ。愛媛大学の三木 均氏が座長を務め,6題の発表があった。1題目は,南松山病院放射線科の平塚義康氏が,未破裂脳動脈瘤症例における3T MRIでの3D TOF MRAと64列MDCTでのCTAとの比較について発表した。3名の読影医による比較結果では,MRAの感度,特異度も良く,スクリーニングに有用であるとし,CTAを追加する必要性は減少していくとの見方を示した。そのほか,東芝メディカルシステムズ(株)MRI開発部の木村徳典氏がTOF法とFSBB法の組み合わせで高速・低速血流の両方を描出する非造影Hybrid MRAを紹介した。
胸部・腹部MRAをテーマにしたセッション2では東京医科大学の寺岡邦彦氏が座長を務め,4題の発表があった。愛媛大学大学院生体画像応用医学の井上祐馬氏は,3T MRIでHARP法によるcine-tagging MRIで,陳旧性心筋梗塞における心筋strainの定量評価について発表した。また,群馬大学画像診療部の守谷真吾氏は,高速造影MRAが可能なTWIST法の初期臨床経験を報告。CTAや非造影MRAでは入手困難な情報を短時間で得られるとし,特性を理解し適応を選択することが重要だと述べた。
医療法人共愛会戸畑共立病院放射線科の中村克己氏が座長を務めたセッション3は,下肢MRAをテーマに4題の発表があった。腎不全患者のガドリニウム造影剤による造影検査で,腎性全身性線維症(NSF)が発症することが指摘され, 非造影MRAへの注目度が上がっている。こうした状況を踏まえ,セッション3では,中村氏のほか,奈良県立医科大学放射線科の北野 悟氏,GE横河メディカルシステム(株)研究開発室の三好光晴氏が,非造影MRAに関した発表をした。
この後,ランチョンセミナーとして,産業医科大学の興梠征典氏が座長を務め,東京大学大学院医学系研究科放射線医学の青木茂樹氏が「頭頸部造影MR angiography」と題した講演を行った。また,これに引き続き,合同シンポジウムが行われた。熊本大学の山下康行氏が司会を務め,4題の発表が行われた。荏原病院放射線科の井田正博氏は,「脳血管:血管壁を診る,病態を探る,代謝を計る」と題し,SWIを中心に発表した。愛媛大学医学部附属病院放射線科の東野 博氏は,「心臓領域における高磁場MRI装置の有用性」をテーマに発表。3T装置での心臓MRIの経験を報告した。続いて,久留米大学放射線医学教室の内田政史氏は,「上腹部領域における3T Dynamic 3D MR Angiography」と題し,2007年に薬事承認された肝特異性造影剤のGd-EOB-DTPAなどについて紹介した。また,熊本大学画像診断・治療科の浪本智弘氏は,「3T MRIによる骨盤・下肢の非造影MRA」について報告した。浪本氏は,3T装置は1.5Tと比較して高いSNRとinflow効果で高画質が得られるとし,3T MRIでの非造影MRAがスクリーニングや腎機能障害者に有用だとした。
この後,3T MR研究会のセッションへと移った。セッション1は,基礎・骨盤・心血管をテーマに,獨協医科大学の楫 靖氏が座長を務め,4題の発表が行われた。島根大学医学部附属病院放射線部の原 真司氏は新たに開発した8チャンネルのPelvic phased array coilについて,従来代用してきたcardiac用コイルと比較した結果などを報告した。また,GE横河メディカルシステム(株)研究開発室の竹井直行氏が,3T MRIでの腎動脈描出の非造影MRAについて,造影検査や1.5T装置との比較結果を紹介した。
セッション2は,脳神経がテーマとなった。座長を島根大学の北垣 一氏が務め,5題の発表が行われた。初めに発表した東京大学医学部放射線科の伊藤大輔氏は,特定の脳動脈瘤用塞栓コイルで見られるアーチファクトについて検証を行い,その結果を報告した。また,広島大学病院診療支援部の穐山雄次氏は,3T MRIでのMRAのVR像で,コイル塞栓術の術後評価を行った経験を紹介。岩手医科大学先端医療研究センターの藤原俊朗氏は,3T装置での高分解能等方ボクセルDTIで,トラクトグラフィの描出能を改善したことについて発表した。
これらのセッション後に,教育講演が行われた。講演者は,徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部画像情報医学分野の原田雅史氏。座長を名古屋大学の長縄慎二氏が務めた。テーマ は,「3T MRIによるstroke imagingの現状・課題・展望」。2008年の診療報酬改定で,rt-PAによる脳卒中治療の加算が新設され,その施設基準として24時間体制でCT・MRI検査が可能なこととなっている。原田氏は,rt-PA治療のための画像診断の重要性を述べた上で, MRIの優位性や経過観察,術後の評価にも言及。今後はrt-PA治療における放射線医療従事者の位置づけと法的根拠を明らかにすることが求められているとまとめた。
当日は,約300名が参加し,盛況なうちに閉会した。なお,第7回3T MR研究会は,2009年1月10日(土)に,秋葉原コンベンションホール(東京・千代田区) を会場にして行われる。当番幹事は楫 靖氏。また,第17回日本MR Angiography研究会は,愛媛大学の望月輝一氏を当番会長に,2009年6月13日(土),千里ライフサイエンスセンター(大阪・豊中市)において,第8回3T MR研究会(当番幹事:興梠征典氏)と共同開催される。 |