（株）フィリップスエレクトロニクスジャパンは，3月22日（土），東京コンファレンスセンター品川において「第13回 Parallel Imaging Symposium」を開催した。代表世話人に山形大学の細矢貴亮氏を迎え，“The Power of Diffusion”〜臨床応用はどこまで可能か〜をテーマに，基礎と脳神経領域，体幹部領域，トピックスの3部構成で行われた。また今回初の試みとして，仙台と沖縄にサテライト会場を設け，シンポジウムの様子がライブ中継された。

　第一部の基礎と脳神経領域では，東京大学の青木茂樹氏が座長を務め，2題の講演が行われた。浜松医科大学の竹原康雄氏は，「To Chase Water Protons with MRI. Diffusion Weighted Imaging Basics」と題して講演した。竹原氏は，拡散強調画像（DWI）に含まれる情報として，(1) 細胞骨格，(2) 局所温度，(3) 細胞膜透過性，(4) 細胞内物質輸送，(5) 粘性，(6) T2/T1値，(7) プロトン密度を挙げた。福岡大学の宇都宮英綱氏は，小児脳の拡散テンソル画像（DTI）解析について講演した。宇都宮氏は，未熟な髄鞘形成や可塑性などの小児脳の特殊性は，神経軸索の発達と密接に関係しているため，DTIは小児の脳の発達過程を解析するための新たな方法となり得ると説明。小児神経疾患の病態解析・機能予後評価への応用に期待を述べた。

　第二部の体幹部領域では，浜松医科大学の竹原康雄氏が座長を務め，3題の講演が行われた。熊本中央病院の片平和博氏は，「躯幹部拡散強調画像（広範囲・前立腺）の有用性 - 駆幹部MRI“何でもDWIが合い言葉”で得られたもの」と題して講演。片平氏は，消化器がんを例に挙げ，CTの画像と比較してDWIは，術前のリンパ節転移の拾い上げに優れており，経過観察における見落としも減少できると述べた。さらに，膿瘍イメージング，前立腺がんの精査における有用性を症例とともに説明した。筑波大学の那須克宏氏は，肝転移，肝細胞がん（HCC）に対するDWIの有用性と生理的運動の画像への影響について講演した。那須氏は，適切な条件で撮像されたDWIは肝転移，HCCに対して高い感度を示すと評価した。また，生理的運動の補正には，呼吸同期を併用することが現時点での最適な手法だと述べた。栃木県立がんセンターの黒木嘉典氏は，「The Power of Diffusion 〜乳房への応用〜」と題して講演した。黒木氏は，DWIと従来の形態・血流画像を相互補完することで画像診断の新たな時代が始まったとし，画像の長所と短所を理解した上で臨床応用を進めるべきだと述べた。

　第三部トピックスでは，日本赤十字社医療センターの扇 和之氏が座長を務め，3題の講演が行われた。長崎大学の角 美佐氏は，頭頸部領域におけるリンパ節腫大やCystic lesionなどのADC値を示し，病変によるADC値の違いを理解しておくことの重要性を述べた。九州大学の畠中正光氏は，「DWI・DTIの筋肉への応用」と題して講演。DTIにより，筋肉の受動的伸展・収縮が水分子拡散に与える影響を同定可能であると述べた。また，DWIの治療効果予測への応用について検討した結果を示した。ユトレヒト大学の高原太郎氏は，「新しい臨床応用と将来展望」と題して講演し，Zebra artifactなどに対するTRON法の有用性を述べたほか，同大学で稼働する7T MRIの画像を紹介した。

【第一部　基礎と脳神経領域】
座長：青木茂樹 氏 （東京大学）	竹原康雄 氏 （浜松医科大学）	宇都宮英綱 氏 （福岡大学）

【第二部　体幹部領域】
座長：竹原康雄 氏 （浜松医科大学）	片平和博 氏 （熊本中央病院）	那須克宏 氏 （筑波大学）	黒木嘉典 氏 （栃木県立がんセンター）

【第三部　トピックス】
座長：扇 和之 氏 （日本赤十字社医療センター）	角 美佐 氏 （長崎大学）	畠中正光 氏 （九州大学）	高原太郎 氏 （ユトレヒト大学）