セミナーレポート(東芝メディカルシステムズ)

日本超音波医学会第90回学術集会が,2017年5月26日(金)〜28日(日)の3日間,栃木県総合文化センター(栃木県宇都宮市)などを会場に開催された。28日に行われた東芝メディカルシステムズ株式会社共催のランチョンセミナー14では,福島県立医科大学医学部甲状腺内分泌学講座主任教授の鈴木眞一氏を座長として,伊藤病院内科の國井 葉氏と名古屋医療センター乳腺科の森田孝子氏が,「24MHz超高周波プローブで進化する表在エコー」をテーマに講演を行った。

2017年9月号

日本超音波医学会第90回学術集会ランチョンセミナー14 24MHz超高周波プローブで進化する表在エコー

甲状腺エコーの進化

國井  葉(伊藤病院 内科)

甲状腺疾患に対する超音波検査について,東芝メディカルシステムズ社製の超音波診断装置「Aplioシリーズ」の高画質画像と,24MHz超高周波リニアプローブやSMI(Superb Micro-vascular Imaging)による良悪性の評価など,“甲状腺エコーの進化”について述べる。

甲状腺診療と伊藤病院の現況

甲状腺腫瘍の検出率は触診では7%前後だが,超音波検査を施行すると35〜67%に向上するという報告があり,成人の約半数には何らかの甲状腺腫瘍があると推測される。発見された腫瘍のうち,甲状腺癌である頻度は5%という報告があり,頻度としては少ない。
当院は甲状腺疾患の単科施設だが,年間新患数2万6629人,1日平均外来患者数1256人という診療規模となっている。超音波検査技師18名が在籍し,年間超音波検査件数は11万4526件,1日平均では390件の検査を行っている(2016年度実績)。1990年代後半には年間2万件弱だった超音波検査数は,年々増加の一途をたどっている。
超音波診断装置の進化に伴い検査手技も変化しており,甲状腺のびまん性腫大の検査では,2画面で撮像しても大きな甲状腺の場合には全体が入らず,全体像が把握できないことがあり,甲状腺の全体像をカバーするため水囊を利用して検査を行っていた。現在では,パノラミックビューを用いた検査が可能で,プローブを見たい範囲で横に平行移動させることで,装置が広い断面像を再構築し全体の把握が可能になっている(図1)。

図1 びまん性甲状腺疾患に対するパノラミックビュー a:水囊で検査した過去画像 b:プローブを平行移動して撮像 c:パノラミックビュー(横断面)

図1 びまん性甲状腺疾患に対するパノラミックビュー
a:水囊で検査した過去画像 b:プローブを平行移動して撮像 c:パノラミックビュー(横断面)

 

甲状腺エコーの進化

甲状腺結節超音波診断基準1)では,良性と悪性の鑑別について,形状,境界の明瞭性・性状,エコーレベル,内部エコーの均質性などが挙げられており,これらの判断のためにはより高画質な超音波画像が求められる。当院では,これまで東芝メディカルシステムズ社製超音波診断装置として,「Aplio XG」に始まり「Aplio 500」,そして「Aplio i800」を用いてきた。甲状腺疾患は,長期的な経過観察が必要となることが多く,超音波検査も長期にわたるため,装置の更新のたびに画質の進化を実感する。それぞれの装置による甲状腺腫瘍の画像を比較して供覧する。

1.基本モードの機種による進化

1)Bモード
図2は囊胞成分を伴う腫瘍で,すべて12MHzプローブを使用している。Aplio XG(b)では正常組織の描出が粗く見えるが,Aplio 500(c)とAplio i800(a)では共に高画質で,明瞭に描出されている。良悪性の評価が必要とされる充実性結節の画像(図3)では,Aplio 500(a)でも境界を含め明瞭に描出されているが,Aplio i800(b)ではコントラスト分解能が高いため腫瘍背側部の境界まで描出が明瞭となり,さらに,高い空間分解能によって全体にやわらかい画像が得られている。

図2 超音波診断装置の進化:Bモード(12MHz) a:Aplio i800 b:Aplio XG c:Aplio 500

図2 超音波診断装置の進化:Bモード(12MHz)
a:Aplio i800 b:Aplio XG c:Aplio 500

 

図3 Bモードによる充実性腫瘍の描出能の比較(12MHz) a:Aplio 500 b:Aplio i800

図3 Bモードによる充実性腫瘍の描出能の比較(12MHz)
a:Aplio 500 b:Aplio i800

 

2)カラードプラ法
カラードプラ法の甲状腺の画像を供覧する。図4は正常な甲状腺のパワードプラ画像だが,Aplio XG(b)では深部の太い血管はよくわかるが,体表に近い部分は血流か,アーチファクトかの判断が難しい。Aplio 500(c)では体表に近い部分は血流であることはわかるものの,血管外へのはみ出し(ブルーミング)が強く血管像がぼやけて見える。Aplio i800(a)では,アーチファクトが減り細かい血流が明瞭に描出されている。充実性腫瘍の画像(図5)でも,全体の血流が描出されており,特にAplio i800(b)ではブルーミングが抑えられ細かい血流まで確認できる。また,カラードプラ法(CDI:図6)では,同様にAplio i800(b)の方が細かい血流まできれいに描出されている。

図4 超音波診断装置の進化:パワードプラ法(12MHz) a:Aplio i800 b:Aplio XG c:Aplio 500

図4 超音波診断装置の進化:パワードプラ法(12MHz)
a:Aplio i800 b:Aplio XG c:Aplio 500

 

図5 パワードプラ法による充実性腫瘍の描出能の比較(12MHz) a:Aplio 500 b:Aplio i800

図5 パワードプラ法による充実性腫瘍の描出能の比較(12MHz)
a:Aplio 500 b:Aplio i800

 

図6 超音波診断装置の進化:カラードプラ法 a:Aplio 500 b:Aplio i800

図6 超音波診断装置の進化:カラードプラ法
a:Aplio 500 b:Aplio i800

 

2.高分解能モードの機種による進化

東芝メディカルシステムズのAplioシリーズでは,高分解能の血流表示方法として,高分解能,高フレームレート,低ブルーミングで微細な血流を描出するAdvanced Dynamic Flow(ADF)に加え,低流速の微細な血流を描出するSMIが使用できる。これらについても装置間で比較した画像を供覧する。

1)Advanced Dynamic Flow:ADF
図7は,正常な甲状腺のADFだが,Aplio i800(a)では細かい血流まで描出され,血管走行を追うことができる。甲状腺腫瘍でも,Aplio 500やAplio i800では腫瘍内部の微細な血管の様子が観察できる。

図7 超音波診断装置の進化:ADF(12MHz) a:Aplio i800 b:Aplio XG c:Aplio 500

図7 超音波診断装置の進化:ADF(12MHz)
a:Aplio i800 b:Aplio XG c:Aplio 500

 

2)Superb Micro-vascular Imaging:SMI
より低速な血流を描出できるSMIでは,装置の性能が向上することで血管の描出能の違いがより明確にわかる。図8は,color-coded SMI(cSMI)でカラー表示された血流の画像だが,Aplio i800(b)では通常の血流に加えて,腫瘍の内部まで入り込むような微細な血管の様子まで確認することができる。また,血流信号をモノクロで表示したmonochrome SMI(mSMI,図9)の場合,Aplio i800(b)では濾胞構造を示す腫瘍の周囲の血管構造まで確認できるほど低流速の血流が描出されている。
濾胞性腫瘍の血管構築は,良性では類円形の血管走行できれいな濾胞を描いているが,癌腫ではイレギュラーに網目状に発達した構造を示す。癌腫は進行するにしたがって主要血管網の中心を貫通する血管が認められ,カラードプラにて悪性を疑う濾胞内部の拍動性の血流と類似する。図9 bのAplio i800のmSMIの画像は,甲状腺濾胞の周囲を囲む類円形状の血流を描出しているとも考えられる。さらに高精細な血流の描出が可能になれば,SMIによって癌腫の複雑な網目状の血管構造が描出できることが期待される(図10)。

図8 cSMIによる充実性腫瘍の描出能の比較(12MHz) a:Aplio 500 b:Aplio i800

図8 cSMIによる充実性腫瘍の描出能の比較(12MHz)
a:Aplio 500 b:Aplio i800

 

図9 mSMIによる充実性腫瘍の描出能の比較(12MHz) a:Aplio 500 b:Aplio i800

図9 mSMIによる充実性腫瘍の描出能の比較(12MHz)
a:Aplio 500 b:Aplio i800

 

図10 SMIによる濾胞性腫瘍の描出 a:共焦点レーザー顕微鏡像* b:mSMI (*伊藤病院・佐々木栄司氏提供)

図10 SMIによる濾胞性腫瘍の描出
a:共焦点レーザー顕微鏡像 b:mSMI
(*伊藤病院・佐々木栄司氏提供)

 

24MHz超高周波リニアプローブ

Aplio i800の新しいリニアプローブ「PLI-2004BX」は,8〜24MHzに対応した超高周波プローブである。24MHzの高周波によって,体表に近い部分から深部まで高分解能の画像が得られる(図11 b)。通常の周波数で見た甲状腺では,囊胞()が確認できるが,胸壁に近い部分にはなにも見つからない(図11 a)。しかし,24MHzの超高周波で観察すると,胸壁に近い部分に小さな囊胞()が確認できる。超高周波プローブを使うことで,胸部の浅い領域の腫瘍やリンパ節など,より表在に近い領域の観察が可能になると考えられる。

図11 24MHz超高周波プローブ「PLI-2004BX」 a:10MHz(PLT-1005BT) b:24MHz

図11 24MHz超高周波プローブ「PLI-2004BX」
a:10MHz(PLT-1005BT) b:24MHz

 

超音波ガイド下穿刺について

超音波検査で結節性病変が発見された場合の精査の手順としては,充実性か濾胞性かに分けて判断されるが,充実性結節の超音波診断フローチャートでは最大径が>5mmかつ≦10mmで悪性が強く疑われる場合,>10mmかつ≦20mmでは悪性疑いの場合,>20mmの場合は原則として穿刺吸引細胞診(FNAC)を行う1)。超音波ガイド下で行われる穿刺方法には平行法と交差法がある。平行法ではガイドラインが表示されるため経験が少なくても穿刺が可能だが,交差法ではガイドラインがなく熟練が必要とされる。そこで,当院では平行法を中心に施行しているが,表在に近いリンパ節では距離と角度がないことから,画像の端に腫瘍が来ることになり,針先の確認が難しかった。これに対して,Aplio i800では,交差法で穿刺が可能なアタッチメント(アダプタ)と針先のガイド機能が搭載された。表在から0.5mm,1.5mmといった浅い領域でも針先の位置をガイドした正確な穿刺ができ,交差法での穿刺についてもサポートが可能になった。

まとめ

Aplioシリーズは進化を続けており,Aplio i800のカラードプラ血流表示ではさらにブルーミングが抑えられて高画質になり,高分解能のSMIによって低流速の微細な血流まで描出が可能になった。また,24MHz超高周波プローブによって甲状腺腫瘍の血流の評価に新たな風が吹くことが期待されるが,同時に超音波画像を読むわれわれにも,よりいっそうの診断能の向上が求められる。

●参考文献
1)甲状腺超音波診断ガイドブック改訂第3版.日本乳腺甲状腺超音波医学会 甲状腺用語診断基準委員会編,東京,南光堂,2016.

 

國井  葉

國井  葉(Kunii Yo)
1999年 日本医科大学医学部卒業,第三内科入局(内分泌代謝・消化器・血液)。2004年7月より伊藤病院勤務。

 

 

 

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