セミナーレポート(東芝メディカルシステムズ)

第30回日本診療放射線技師学術大会および第21回東アジア学術交流大会が2014年9月19日(金)〜21日(日)の3日間,別府国際コンベンションセンター(大分県別府市)にて開催された。20日(土)に行われた東芝メディカルシステムズ株式会社共催のランチョンセミナー5では,熊本大学医学部附属病院中央放射線部の橋田昌弘氏を座長に,心臓画像クリニック飯田橋の小山 望氏が,心臓特化型画像診断センターにおけるCT&MRIの最新臨床応用をテーマに講演した。

2014年11月号

第30回日本診療放射線技師学術大会 ランチョンセミナー5

Experience of the cardiac CT and MRI of 20000 cases at CVIC

小山 望(心臓画像クリニック飯田橋)

心臓の画像診断に特化した画像診断センターとして2009年11月に開院した当施設は,5年間でおよそ24000例のCT/MRI検査を実施してきた。“Excellent image”を合言葉に,より診断に適した画像を効率良く撮像するために,さまざまな工夫を凝らしている。本講演ではその経験に基づき,心臓のCT検査とMRI検査における技術的,臨床的ポイントについて解説する。

心臓画像クリニック飯田橋の概要

当施設の開院から2014年9月17日までの検査件数23896件の内訳は,CT検査が11558件,MRI検査が12338件であった。1日の検査件数は冠動脈CTが15~18件,心臓MRI検査が10~13件である。男女比は約6対4,平均年齢は59.4歳であり,年齢の男女比に有意差はなかった。
当施設は常勤の診療放射線技師4名(以下,技師),臨床検査技師2名,医師が3名という小規模クリニックである。画像診断装置は,MRIが「Vantage Titan 1.5T」(東芝メディカルシステムズ社製)と「Achieva 1.5T」(フィリップス社製)の2台,CTは320列ADCT「Aquilion ONE」(東芝メディカルシステムズ社製)が1台という構成である。
心臓MRI検査では冠動脈評価,壁運動評価,心筋血流評価,心筋バイアビリティ評価,血流計測,心臓CT検査では冠動脈評価,バイパス術後評価,心筋血流評価,大血管評価,アブレーション術前検査を実施している。検査時間は,心臓MRIが約40〜60分,心臓CTは約15分であり,それぞれ1時間と30分の検査枠を設けている。
当施設では“Excellent image”という合言葉のもと,技師が画像作成・解析・レポートまで責任を持って担当している。

CT/MRIにおける動きの補正

画像のコントラストは,CTの場合は造影剤,MRIではシーケンスに依存する。さらに,Excellent imageを実現するためにわれわれは,心拍動と呼吸運動への対応を常に考慮している。CTでは,お腹を1mmも動かさないように呼吸停止する必要性を患者さんにていねいに説明する。MRIでは,肝臓の下にベルトを巻いて横隔膜を固定し,数mmの浅い呼吸運動に抑制する。呼吸に関しては,CTとMRIはコントロールが共通しており,呼吸が止まっていることがまず第一に必要と言える。

Slow Fillingに合わせた撮像

われわれは,検査前に必ず心電図を見て,心臓の電気的な動きを事前に理解するようにしている。心電図と対比させながらMRIで心臓の動きを見ると,左室の僧帽弁のところが開き,血流がゆっくり入っていく時間がある。これがいわゆる拡張中期で,緩速流入期=Slow Fillingと呼ばれるタイミングである。
MRIではSlow Fillingのタイミングを直接見ることができるが,CTでは心電図を確認することで事前に確認してから撮像を行う。Slow Fillingのタイミングを理解すると,安定した高画質な画像が得られるようになる。
Slow Fillingの長さは,直後のPQ間隔で決まる。そこで,PQ間隔,Slow Fillingの時間を考慮しながら,装置のスキャンスピードにうまくフィットさせる必要がある。例えば,当施設のAquilion ONEは1回転0.35s,ハーフスキャンは175msであり,心拍数が60bpm,PQ時間が100msならば,Slow Fillingは204.8msであるため,拡張中期に合わせればきれいに1心拍で撮像できる。
また,心拍数45bpmの徐脈まで時間分解能を落とせば,Slow Fillingは413msまで延び,フルスキャンが可能になる。すなわち,SDの改善と被ばく低減を両立できるため,患者さんにとってはきわめてメリットが大きい。心拍数は積極的に落としていくべきと考える。

βブロッカー投与の有用性と安全性

心臓CT検査を30分の枠内に収めるため,当施設では患者さんが来院後,すぐに心拍数を計測し,70bpm以上であれば経口βブロッカーを投与する。その間に長い問診票を見てもらい,1時間後に診察をしてCT室へ向かう。そこで心拍数が65bpm以下に落ちなければ,IV型のβブロッカーを投与することで一気に心拍数を下げるようにしている。
われわれは経口とIV型βブロッカー併用の安全性を見るため,2011年9月から2012年1月までに冠動脈CT検査を実施した106例で検討を行った。その結果,経口βブロッカー併用の有無にかかわらず,IV型βブロッカーで心拍数が下がり過ぎることはなく,また,検査終了後には心拍数,血圧共に投与前に戻ることが確認された(図1)。目標とする心拍数への到達率も,併用の有無による有意差はなかった。
このように有用性の高いβブロッカーを必要以上に恐れることなく,うまく使いこなすことが重要である。より良い心臓CT画像が得られれば診断カテーテル検査を省くことができ,循環器医が経皮的冠動脈形成術(PCI)に集中できるメリットがある。検査を担当する技師が心臓CT検査を責任を持って行うことを強調し,循環器医に協力を働きかけることが重要である。

図1 経口およびIV型βブロッカー併用の安全性 (参考文献1)より引用転載)

図1 経口およびIV型βブロッカー併用の安全性
(参考文献1)より引用転載)

 

心臓MRIの運用と臨床

心臓MRIは,負荷心筋パーフュージョンを含めたいわゆるワンストップショップと考えられているが,当施設では虚血性心疾患よりも心筋症やサルコイドーシス,先天性心疾患など,カテーテル検査や心臓超音波検査で診断がつかないような症例が多い。
このようなnon ischemic patternのMRI検査では,22項目からなるフルスタディを40~50分で撮像する。そのほか,負荷パーフュージョンを行わず遅延造影を行うLGEスタディ,冠動脈のスクリーニングや心臓ドックなどのための非造影スタディなどのメニューがあり,最大で60分,短いものでは30分で検査を終了する。
検査途中で1つでもミスがあれば,60分以内で検査を終えることができなくなるため,当施設では技師のトレーニングに力を入れている。例えば非造影検査では,コイルのポジショニングをしながら検査説明を4分,シネなどの位置決めを3分,本スキャンを6分,計13分以内で入室から最後のスキャンまでを行えるようになるまで,検査を担当することはできないようにしている。

心臓MRI検査の実際

心臓超音波検査でsevere diffuse hypokinesisとして紹介された患者さんを例に,当施設における心臓MRIの実際を紹介する。心電図では不整脈が認められ,シネMRIによっても心筋壁が全体的に薄くなってきている様子がわかる。LVDd(左室拡張末期径)も大きく,拡張型心筋症か心筋梗塞が疑われた。
非造影冠動脈MRAを用いて,severe diffuse hypokinesisの原因が冠動脈由来のischemic patternかどうかを確認した。心臓全体を撮影するまでもなく,冠動脈近位部だけを狙って撮像したところ,severe diffuse hypokinesisの引き金となるような重篤な冠動脈狭窄は認められず,心筋梗塞ではないことが確認できた(図2)。
遅延造影MRIを行ったところ,心筋中層に特徴的な全周性の線状遅延造影が認められたため,冠動脈に問題がないことと併せて,拡張型心筋症と診断した(図3)。
冠動脈MRAは,NPV(陰性的中率)が非常に高い。この特徴をよく理解し,リスクの低い症例やスクリーニングなどにおいては,被ばくや造影剤副作用などのリスクのない冠動脈MRAを選択することが望ましい。狭窄の状態を見る冠動脈CTと,ルールアウトを目的とした冠動脈MRAは利用方法が根本的に異なることを認識し,NPVの高い冠動脈MRAを有効に利用する方法について,医師のみならず検査を担当する技師が検討していく必要があると考える。

図2 冠動脈近位部をターゲットとしたMRI画像

図2 冠動脈近位部をターゲットとしたMRI画像

 

図3 拡張型心筋症(DCM)の遅延造影MRI画像(LGE MRI)

図3 拡張型心筋症(DCM)の遅延造影MRI画像(LGE MRI)

 

新しい冠動脈MRAシーケンスの共同開発

当施設では2013年12月,東芝メディカルシステムズ社製のVantage Titan 1.5Tを導入。いくつかの課題に対して新しいパルスシーケンスの共同開発を行い,装置の性能をブラッシュアップさせてきた。まず,肺野や心臓周囲の局所磁場不均一については,局所シミングを徹底すること,また,心膜外と心内膜中の脂肪を共に抑制するため,脂肪抑制パルスをSPIRからSPAIRに変更した。血液信号をより安定させるために,ダミーパルス数やフリップアングル(FA)の見直しを行った。
ステディステート移行期にダミーパルスを多く打つと,血液信号は安定するがSNRは低下してしまうため,最適なバランスを検討する必要があった。また,冠動脈MRAでは収縮期と拡張中期の2つの撮像タイミングがあるが,心拍変動の大きい患者さんではPQ時間が安定しないため,拡張中期で狙うことができない。そのため,収縮期で信号を取得する必要がある。したがって,脂肪抑制はR-Rのトリガーから収縮期までの間にかけなければならないが,SPAIRによる脂肪抑制は時間がかかるため,SPAIRパルスを利用するためにはダミーパルス数の最適化が非常に重要となる。
現行装置では,まずRMCで横隔膜の動きを感知し,T2prep,SPIRの後にダミーパルスを打って,本スキャンを行う。このSPIRを単純にSPAIRに入れ替えると,収縮期でスキャンすることができなくなってしまう。そこで,SPAIRパルスを先頭に移し,次いでT2 prep,RMCを走らせ,ダミーパルスを打った後に本スキャンを行うことで,収縮期と拡張期のどちらでも信号取得することが可能なパルスシーケンスを開発した。

図4に,新しいパルスシーケンスによる画像を示す。ダミーパルス数を増やし,T2 prepパルスでT2値の短い組織のシグナル(心筋,静脈)を抑制し,SPAIRで強い脂肪抑制をかけて,水(血液)だけが高信号になる状態をつくっている。そのため,全体の信号が小さくなってしまっているので,T1コントラストを強調させる目的でFAを120°にして撮像している。

図4 SPAIR MRCAにおける画質改善

図4 SPAIR MRCAにおける画質改善

 

3D MRIでは,最初と最後のスライスが暗く,中心に近づくに従って画像が明るくなることを経験すると思われるが,これはRF励起パルスの形状の影響である。従来のRFウェーブフォームでファントム実験を行うと,暗いところと明るいところの波ができる。FWHM(半値幅)を測ってみると非常に狭くなっていたため,改良型のRFウェーブフォームを開発した。この改良型を用いてファントム実験を行ったところ,FWHMは広くなって有効視野が広がった。
従来型のRFウェーブフォームによる3D MRIでは,CTと同様のアキシャル断面で辺縁部分が暗くなり,3D再構成したVR画像はざらついている(図5a)。さらに,撮像時間を短縮するためにスライス枚数を少なくすると,LMTなどはかなり暗くなってしまい,突然死するような重篤な患者を見落とすことにもつながりかねない。このような,きわめて危険な状態を回避するためにはスライス枚数を増やすしかなく,それにつれて撮像時間が延びてしまい,検査が完了できないケースも出てくる。
しかし,新開発のFWHMの広いRFウェーブフォームを使えば,スライス枚数が少なく撮像時間が短くても,LMTや4AV,4PDなどの末梢まで明瞭に描出できるようになった(図5b)。

図5 スライス特性の見直し

図5 スライス特性の見直し
a:従来型RFウェーブフォーム
b:新開発RFウェーブフォーム

 

臨床応用とその成果

図6bは,上記のさまざまな改良を行った新開発の冠動脈MRAシーケンスの画像である。新しいシーケンスでは,RMCのコントラストまでもがシャープになり,横隔膜の動きに対するナビゲーションの精度が向上するという副産物も得られている。脂肪と血液のコントラストの差が大きくなったことで,VR画像は鮮明になり,ワークステーションでの冠動脈解析の自動トレースの精度向上にも寄与している。
視野の拡大した新しいRFウェーブフォームになったことで,当施設では冠動脈MRAを従来のアキシャルではなく,サジタルでスキャンしている。広範囲にデータ収集できるため,大動脈弁が2尖弁でバルサルバ洞が拡大しているような症例も,確実に拾い上げることができる。また,例えば,前下行枝6番,7番の部分だけ詳細に観察したいようなときには心臓全体を撮像する必要はないので,
3点位置決め撮像を行う。新開発シーケンスでは,このようなターゲットスキャンにおいてもスライス中心が暗くなることなく,高画質画像が得られるようになった。
当施設では2014年2月頃から新開発冠動脈MRAシーケンスを本格的に使い始め,9月17日時点で1055例の心臓MRI検査を経験している。

図6 新開発冠動脈MRAシーケンスと従来型の比較

図6 新開発冠動脈MRAシーケンスと従来型の比較
a:従来撮像(SPIR+ダミーショート+FA60°)
b:新開発撮像(SPAIR+ダミーロング+FA120°)

 

まとめ

当施設では開院から12000件以上の心臓MRI検査を行っているが,冠動脈が撮像できなかった例は1例もない。
また,循環器画像診断支援事業としてトレーニングや技術指導,遠隔画像診断・解析支援にも力を入れているので,ぜひ利用していただきたい。

●参考文献
1)小山 望,吉田論史・他:冠動脈CT撮影時の経口β遮断薬併用の有無によるランジオロール塩酸塩の効果および安全性に関する検討.新薬と臨牀, 62・1, 80〜86, 2013.

 

小山 望

小山  望(Koyama Nozomu)
1995年 診療放射線技師免許取得。同年 博慈会記念総合病院放射線技術部入職。2000年 フィリップスメディカルシステムズ株式会社(現・株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン)入社。2009年 CVイメージングサイエンス株式会社設立。同時に心臓画像クリニック飯田橋を寺島正浩院長と共に開院,診療部長兼技師長として現在に至る。

 

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