セミナーレポート(東芝メディカルシステムズ)

第30回日本乳腺甲状腺超音波医学会学術集会が2013年4月20日(土),21日(日)の2日間,コラッセふくしま(福島市)にて開催された。初日の17時から行われた東芝メディカルシステムズ(株)共催のイブニングセミナー1では,東京慈恵会医科大学放射線医学講座の宮本幸夫氏を座長に,独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター乳腺科の 森田孝子氏と,東邦大学医療センター大森病院乳腺・内分泌外科の金澤真作氏が乳腺超音波診断の最新技術と造影超音波をテーマに講演した。

2013年7月号

第30回日本乳腺甲状腺超音波医学会学術集会 イブニングセミナー 1 乳腺超音波診断の最前線

乳腺腫瘤における造影超音波の有用性

金澤 真作(東邦大学医療センター大森病院乳腺・内分泌外科)

2012年8月,新世代超音波造影剤「ソナゾイド」の乳腺診断に対する保険適用が認められた。治験の成績において,単純超音波のみならず造影MRIよりも有意に高い正診率および特異度が示されたことで,乳房造影超音波への期待は高まっている。本講演では,東芝メディカルシステムズの超音波装置「Aplio 500」と新しいプローブである「PLT-1005BT」を用いた乳腺腫瘤における造影超音波を中心に,症例を示しつつ,臨床での有用性について解説する。

■造影超音波による血流評価の意義

造影超音波は,Bモード画像のように乳腺組織を見るのではなく,造影剤が流れる血管の様子を見ている。乳腺腫瘤,あるいはいわゆる固形腫瘍において血流を評価することの意義は,腫瘍における血管新生を見ることができる点にある。
腫瘍の血管新生は,固形腫瘍の成長,進展,転移の過程に重要な役割を果たし,乳がんにおいても独立した予後因子である。また,血管内皮増殖因子(VEGF)の発現は,腫瘍血管新生と相関して乳がんの成長,進展や転移などにかかわっている。現在では, VEGFを標的とした分子標的薬による治療が乳がんでも可能であり,その意味でも,血流の評価はきわめて重要である。
一方,超音波装置での血流の評価は,ドプラ法でも可能である。造影超音波のように,造影剤の注入を必要としないという利点もある。しかし,ドプラ法と造影超音波の画像を地図にたとえて比較すると,図1のように,ドプラ法はごく一部の主要幹線道路しか表示されないのに対し,造影超音波では一般道路まですべて表示され,より詳細な情報を得ることができる。

図1 超音波ドプラ法と造影超音波の比較

図1 超音波ドプラ法と造影超音波の比較

 

■当院における造影超音波の実際

日本乳腺甲状腺超音波医学会(JABTS)のフローイメージング研究会が2013年1月,造影超音波の施行目的についてアンケート調査を行った。その結果,乳がんの広がり診断,良悪性診断,薬物療法の効果判定などを目的として,造影超音波が施行されていることがわかった。
当院においても,乳腺腫瘤の良悪性診断,乳がん薬物療法の効果判定,乳がんの広がり診断,組織診時の標的確認,2nd look US時の補助などの目的で造影超音波を行っている。
当院における乳房造影超音波の施行基準とタイミングを図2に示す。造影MRIや組織診が予定されている患者の場合,造影MRI,造影超音波,組織診をすべて同じ日に行うようにすると,情報が一気に得られ,比較も容易になる。
当院で用いている診断機器やプローブ,撮像条件などを図3に示す。通常は「Aplio XG」で,プローブは「PLT-805AT」を中心に,必要に応じて「PLT-704SBT」を使用している。ソナゾイドの投与量は,推奨の半分の0.0075mg/kgとしている。その他の条件やプロトコールは,治験の条件とほぼ同じである。

図2 当院における乳房造影超音波施行の基準とタイミング

図2 当院における乳房造影超音波施行の基準とタイミング

図3 当院における超音波診断機器,プローブ,造影超音波撮像条件

図3 当院における超音波診断機器,プローブ,造影超音波撮像条件

 

●症例1:硬癌(図4)

Aplio XGとPLT-805ATを用いた造影超音波画像である。Bモード画像で超音波の減衰を伴う24mmの硬癌が認められ,造影超音波を施行したところ,乳頭方向に腫瘍が進展していることが確認された。58mmの広い視野幅のプローブを用いることで,腫瘤の周囲も含めた観察が可能となるため,必要に応じてプローブを使い分けることが必要である。

図4 症例1:24mmの硬癌の造影超音波 Aplio XGとPLT-805AT使用

図4 症例1:24mmの硬癌の造影超音波
Aplio XGとPLT-805AT使用

 

●症例2:腫瘍径40mmの硬癌(図5)

Aplio 500とPLT-704SBT使用。
Bモード画像で低エコー域をトレースし,造影超音波を行ったところ,クーパー靱帯に沿う流入血管がはっきり描出され,トレースした低エコー部やハローを越えて,周囲に広がる染影が確認できた。造影部分には実際に腫瘍の進展が確認されており,造影超音波が広がり診断にも有用なことを示唆する症例である。

図5 症例2:40mmの硬癌 a:造影超音波,b:Bモード画像 Aplio 500とPLT-704SBT使用

図5 症例2:40mmの硬癌
a:造影超音波,b:Bモード画像
Aplio 500とPLT-704SBT使用

 

■PLT-1005BTを用いた乳房造影超音波の特徴

PLT-1005BTは,PLT-805ATと同じ58mmの広い視野幅で,高い感度と分解能を実現した新しいプローブである(図6)。
まず,基本となるBモード画像で,PLT-805AT とPLT-1005BTを比較してみた。正常乳腺では,14MHzの高周波数を持つPLT-1005BTの方が,浅い部分の感度はもちろんのこと,深部感度についても良好であった(図7)。
線維腺腫では,フォーカスの位置にかかわらずPLT-1005BTの方が深部感度が良く,腫瘍の内部や辺縁も高い視認性を示した(図8)。

図6 プローブの仕様と特徴

図6 プローブの仕様と特徴

 

図7 正常乳腺におけるPLT-805AT (a:9MHz)とPLT-1005BT(b:14MHz)の比較

図7 正常乳腺におけるPLT-805AT (a:9MHz)とPLT-1005BT(b:14MHz)の比較

 

図8 線維腺腫におけるPLT-805AT (a:9MHz)とPLT-1005BT(b:10MHz)の比較

図8 線維腺腫におけるPLT-805AT (a:9MHz)とPLT-1005BT(b:10MHz)の比較

 

●症例4:非浸潤性乳管癌(図9)

Aplio 500とPLT-1005BTを用いて,Bモード画像で低エコーとなっている領域をターゲットとして造影超音波を施行した。15秒過ぎくらいから造影剤が一気に流入し,ピークに達して,その後徐々に流出していく過程が,造影剤のバブルの1つ1つまで非常にクリアに確認できる。
造影剤の染影部分をトレースしてBモード画像に重ねると,低エコーに観察される部分を越えて造影剤が広がっていることがわかる。PLT-805AT(図10a)と比較してみると,やはりPLT-1005BT(図10b)の方が,造影感度や分解能が高いことが確認できた。

図9 症例4:非浸潤性乳管癌 a:造影超音波,b:Bモード画像 Aplio 500とPLT-1005BT使用

図9 症例4:非浸潤性乳管癌
a:造影超音波,b:Bモード画像
Aplio 500とPLT-1005BT使用

 

図10 症例4におけるPLT-805AT (a:5MHz)とPLT-1005BT(b:5MHz)の比較

図10 症例4におけるPLT-805AT (a:5MHz)とPLT-1005BT(b:5MHz)の比較

 

●症例5:嚢胞内腫瘤(乳管内乳頭腫)

PLT-805AT とPLT-1005BTを用いた造影超音波で,腫瘤基部の被膜に沿う血管から腫瘤内部へ造影剤が流入し,血流とともに流出血管の方へ抜けていく様子が,きわめてクリアに観察された(図11)。PLT-805AT(図11a)に比べてPLT-1005BT(図11b)の方が,病変基部にあたる囊胞の壁の血流がよりクリアにとらえられており,流出血管もより明瞭に描出されている。
超音波検査は生理検査として位置づけられるが,画像診断である以上,やはり画質は高ければ高いほどよい。Aplio 500は,診断の基礎となるBモード画像の画質が向上し,また,視野幅58mmの高周波プローブであるPLT-1005BTも,Bモード画像の感度と分解能が向上している。この両者の組み合わせが造影超音波の画質向上に寄与し,より高感度で高分解能の造影画像が得られるようになった。

図11 症例5:囊胞内腫瘤(乳管内乳頭腫) PLT-805AT(a:5MHz)とPLT-1005BT(b:5MHz)の比較

図11 症例5:囊胞内腫瘤(乳管内乳頭腫)
PLT-805AT(a:5MHz)とPLT-1005BT(b:5MHz)の比較

 

■造影超音波の定量化の試み

画像診断は定性的と言えるが,定量的に比較できる造影超音波も検討されている。Bモード画像にROIを設定し,横軸に時間,縦軸に輝度をとってtime intensity curveを描き,半定量的な評価を行う試みも行われている(図12)。
しかし,この方法は相対輝度を使っているため,症例間の比較は難しい。横軸に時間,縦軸にパワーをとって定量化する手法もあるが,やはり症例間の比較は難しい。同じ症例の病変部分と正常部分の比をとって比較することは可能だが,定量的に比較する場合は,病変部分と正常部分の両方が画面にとらえられていなければならない。すなわち,用いるプローブに広い視野幅が求められる。
また,造影信号の視認性向上や,それを定量化する時には,組織抑制の技術が必要となる。東芝メディカルシステムズで試作中の撮像モードを使うと,組織はかなり消えるようになってきている。この面でも,視認性向上のための工夫が進んでいることがうかがえる。

図12 造影超音波の定量化の試み

図12 造影超音波の定量化の試み

 

■乳房造影超音波の今後の展望

PLT-1005BTを用いたAplio 500による乳房造影超音波では,より高感度,高分解能の造影画像を,広い視野で得ることができる。
造影超音波を定量的で比較検討可能な検査にすることが,今後の課題の1つである。そのためには,まず,周囲乳腺内部の造影信号をより高感度にとらえることが必要である。第一歩として,組織抑制がより早期に実用化されるよう,撮像モードの技術改良が待たれる。
乳腺腫瘤における造影超音波は,良悪性の鑑別はもとより,腫瘍の広がり診断,2nd look超音波での血流評価,超音波ガイド下生検などへの応用が期待されている。さらに,薬物療法の効果判定や効果予測などについても,臨床応用されていくものと考えている。

 

金澤 真作

金澤 真作
1995年東邦大学医学部卒業。
99年同大大学院修了。現在は,東邦大学医療センター大森病院乳腺・内分泌外科勤務。

 

 

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