次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2015年12月号

No. 164 院内配信の実現:利便性を高めたAZE VirtualPlace 雷神 FORMULA

岩永 秀幸(山口大学医学部附属病院放射線部)

はじめに

放射線画像を用いた三次元画像と言えば,CT検査のthin slice画像を用いた3D画像がよく知られている。現在,3D(MPR,MIP,VRを含む)画像は診断や手術支援に多く利用されており,なくてはならないものになっている。一般的に,AZE社製3Dワークステーション(以下,AZE-3DWS)を使用する場合,主に診療放射線技師が3D画像を作成する施設が多く,同時に放射線科診断医も読影の際に使用していると想像する。一方で,特定の診療科の医師から,自ら3D画像を作成したいとの意見もある。
当院では,AZE-3DWSを電子カルテ端末から利用できるようにし,作成したキー画像(DICOMセカンダリキャプチャ)を統合医用画像サーバ(PACS:DICOM準拠)に保存することができる機能を搭載して運用している。以下に,当院のAZE-3DWSの利用状況を述べる。

利用方法の変移

2015年3月に,電子カルテシステム(富士通社製「HOPE/EGMAIN-GX」)と統合医用画像サーバのリプレイスを行い,同時にAZE-3DWS「AZE VirtualPlace 雷神 FORMULA」をリプレイスした。
当院では,2006年10月からAZE-3DWSのスタンドアローン機を導入し,2009年9月にはネットワーク型にバーションアップして電子カルテ端末から利用できる環境を整えた。しかし,この時は電子カルテとAZE-3DWSの連携に技術的に難しい点があったため,電子カルテ端末に手動で利用者(医師や医療職など:以下,ユーザー)情報を入力することで,AZE-3DWSを利用できる運用を選択した。2015年のバージョンアップでは,電子カルテからの連携を強化するために,ユーザー情報に権限を設けることで,よりユーザーの利便性に特化したAZE-3DWSの運用を実現することができた。図1に,2015年のユーザー権限レベルを示す。

運用方法

2009年に導入したユーザー認証の仕組みは,電子カルテのユーザー情報をCSVファイルで夜間に受け取り,このCSVファイルを自動的にAZE-3DWSに登録することで利用できる仕組みである。ユーザーは,電子カルテ端末から電子カルテを立ち上げ,電子カルテ中にある“起動ボタン”をクリックし,さらに“ユーザーID”と“パスワード”を再度入力してAZE-3DWSを起動することができる。ここから目的の患者IDを入力することで,患者の画像データを利用できるようになる。使用できるまで3段階の手間がかかる欠点があった。また,登録するCSVファイルは電子カルテのユーザーすべての情報であり,当時の仕様ではユーザーの権限をUserとAdministratorの2つしか設定することができず,ひとつのUser権限のみの運用を余儀なくされた。そのため,診療放射線技師や一部の放射線科読影医のみが共有する固定のPower UesrのIDを特別に設定して運用する方法を選択した。しかしながら,User権限で利用する医師もAZE-3DWSで作成したキャプチャ画像を統合医用画像サーバに保存することができたため,利用を要望していた診療科の医師らには,最低限のサービスを提供することができたと考えている。
これらの提供サービスレベルをより的確に反映させるため,2015年のバージョンアップではユーザー権限をUser,Power User,Administratorの3段階に設定ができるようにシステムを構築した(図1)。3段階に権限を分ける大きな目的は,ユーザーが誤って操作するのを防止することにある。一般のユーザーは,User権限で可能なキャプチャ画像を保存する機能を利用できれば大きな問題はないと想像するが,画像を多く用いる医師や診療放射線技師は,キャプチャ画像を統合医用画像サーバに保存する以外にthin slice画像を検査装置(機器)に転送できるPower Userの権限が必要である。旧システムでは,固定のPower Userを共有する運用であったが,今回のシステムでは,個人を識別できることでセキュリティが強化できたと考えている。ユーザー情報のCSVファイルの取り込み方法は,2009年の方式を継承している。

図1 AZE VirtualPlace 雷神 FORMULAのユーザー権限レベル

図1 AZE VirtualPlace 雷神 FORMULAのユーザー権限レベル

 

また,今回の仕様では,ユーザーは電子カルテで患者カルテを開いてAZE-3DWSの“起動ボタン”をクリックすると,直近に検査したCT,MR画像がAZE-3DWSに存在する場合,自動的に患者を特定した画像リストが表示される。旧システムのように“利用者ID”と“パスワード”,目的の患者IDを手入力することがなくなり,1回のクリックで目的の画像リストが表示されることは,ユーザーにとって利便性が向上したと考えている(図2)。また,ビューワ(横河医療ソリューションズ社製「ShadeQuest/ViewR」)からもワンクリックでAZE-3DWSを起動することができるので,さらに利便性が向上したと考えている。
AZE-3DWSの保存実行容量は10TB程度であるため,当院の運用レベルでは3か月程度でthin sliceは消えてしまう。そのため,その後は3D画像を作成することができなくなるが,臨床的には,直近の画像が利用できれば急性期や手術のシミュレーションなどには十分だと考えている。3か月以前の画像を作成するには,大容量の画像サーバにthin sliceを恒久的に保存する必要がある。そこで当院では,このたびの統合医用画像サーバの更新に伴い,CT画像のthin sliceの院内配信を開始した。これにより,3か月を超えたCT,MR画像も必要に応じてAZE-3DWSにダウンロードできる環境も整えられた。過去検査のthin sliceの利用については,長期的に動向を観察し,膨大に増える画像データの蓄積について検討したいと考えている。

図2 AZE-3DWSの利用方法の変移

図2 AZE-3DWSの利用方法の変移

 

システム構成

当院のAZE-3DWSのシステム構成は,3台のサーバのクラスタ構成で運用している。2009年の時点では,1台は「AZE VirtualPlace Premium」(以下,Premium),2台は高速演算エンジン「FORMULA」が搭載されたサーバで構成され,FORMULAの2ライセンスはCT操作室固定とし,8ライセンスはフローティング(動的)ライセンスとして電子カルテで利用できるようにした。一方,Premiumの1ライセンスはCT操作室固定とし,4ライセンスをフローティングライセンスとして読影システムで利用できるようにしていた。
2015年からは,3台を高速演算エンジンFORMULAのクラスタ構成とし,1ライセンスのみCT操作室固定とし,14ライセンスをフローティングライセンスとして,電子カルテと放射線部および読影システムから利用できるよう環境を整えた(図3)。これによって,ライセンスを効率的に使用できるようになったと考えている。

図3 演算ユニットとライセンス数の構成図

図3 演算ユニットとライセンス数の構成図

 

おわりに

現在では,AZE-3DWSを手術室での手術支援画像やハイブリッド手術室での術前シミュレーション画像の作成,血管内インターベンション治療のガイド画像作成などに利用が進んでいる。
ユーザーは,基本的にわがままである。システムは,バージョンアップのたびに利便性が向上する必要がある。医療に貢献するためにも“進化”という2文字は重要と考えている。

【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace 雷神 FORMULA(AZE社製)

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