次世代の画像解析ソフトウェア(AZE)

2015年6月号

No.158 AZE VirtualPlace雷神Plusの使用経験と左室内腔3DCT画像の有用性

阿部 駿(JA秋田厚生連平鹿総合病院放射線科)

はじめに

当院は,2013年5月にDual Source CT「SOMATOM Definition Flash」(シーメンス社製)を新規に導入し,同時にワークステーション(以下,WS)もスタンドアローン型からクライアント・サーバ型「AZE VirtualPlace雷神Plus」(AZE社製:以下,雷神)に変更した。雷神は,本体とクライアントの合計5台をWSとして同時に使用可能で,CT室に2台,MRI室,一般撮影室,アンギオ室に各1台設置し,3D画像やMPR画像の作成,および医師が血管・心臓の解析に使用している。
本稿では,約2年間の雷神の使用経験と,AZE展2014で発表した「心室頻拍(VT)に対するカテーテルアブレーション術前左室内腔3DCT画像の有用性」について紹介する。

手術支援画像

AZE社のWSには自動抽出機能,マルチレイヤー処理,フュージョン機能などの多彩な機能があり,以前のWSと比べ,操作性・表示機能に優れ3D画像の作成が非常に簡便になった。それに伴い,従来の3D-CTA画像や整形外科の骨3D画像以外にも,手術支援画像の作成依頼をされるようになった。血管カテーテル治療では,完全閉塞病変の3D抽出による閉塞血管走行のナビゲーション,下大静脈(IVC)フィルタ留置術や心臓再同期療法(CRT)術前の3D画像による静脈の位置・形態の確認,また外科領域の肺・肝臓・食道では,病変や支配血管・脈管の3D構築などである(図1)。術前に目的の臓器や血管を個別に抽出し,さまざまな角度から観察できる手術支援画像を参照することで,術中の血管・臓器損傷のリスクを減らし,手術をより安全に行うことができる。そのため,術医からの評判も良く,作成依頼の件数が増加している。
クライアント・サーバ型WSの有用な面として,CT室にいなくてもクライアント端末で画像作成が可能なことが挙げられる。例えば,撮影で忙しいCT担当者が3D画像作成できない場合,一般撮影室の診療放射線技師(以下,技師)に依頼し,一般撮影室の技師が持ち場を離れることなく,クライアント端末で3D画像を作成できるようになった。3D画像作成による待ち時間の大幅な短縮が可能となり,技師にとっても効率の良い,迅速な画像提供ができる環境となった。それ以外の有用な面として,CT室以外でも検査の空き時間に3D画像の作成方法を互いに教え合ったり,難しい症例の画像作成を個々に練習できるので,あまりCTを担当しない技師も3D画像作成のスキルアップが可能となった。

図1 外科領域の手術支援画像

図1 外科領域の手術支援画像

 

VP Viewer

雷神には,フリーライセンス・フリーアクセスの“VP Viewer”が搭載されており,院内すべての電子カルテ端末が簡易的なWSとして使用できる。雷神で3D処理し作成したワークリストは,アンギオ室や手術室の電子カルテ端末でも起動でき,リアルタイムに任意の角度から3D画像を観察できる。主に術前シミュレーションや,アンギオにおけるアーム角度の決定や血管径・病変の長さの測定に使用されている。また,カンファレンスや手術室でWSを使いながら臨床医と症例について話し合うことで,腫瘍の位置や範囲,切除ラインなどの詳細な臨床的情報から,VR画像の色や強調したい部位などの細かい要望まで,臨床医が見たいポイントをしっかりと確認し,3D画像作成にフィードバックできるため,作業の質と効率を高めることができた。
救急外来でVP Viewerが有用だった症例を提示する(図2)。外傷性骨盤骨折症例で,造影CTにて出血を認め,緊急IVRで動脈塞栓術の適応となった。撮影された造影CT画像は平衡相のみであったが,逐次近似応用画像再構成法のSAFIREや3Dフィルタを使い,リージョングローイングで選択的に動脈のみを抽出することで,動脈相と同等の3D-CTA画像をIVR開始前の10分程度の時間で作成できた。IVR術前・術中に,塞栓する動脈や血管走行を3Dで視覚的に把握できたと術医から高い評価を得られ,非常に有用であった。

図2 IVRの術前3D-CTA画像とDSA画像

図2 IVRの術前3D-CTA画像とDSA画像

 

左室内腔3DCT画像の有用性

当院では,カテーテルアブレーション(以下,RFCA)を年間40例ほど行っており,心腔内の形態や周辺構造物の把握を目的に術前に心臓CTを行っている。左室内腔は乳頭筋や腱索,肉柱がある複雑な構造であり,左室の心室頻拍(VT)のRFCA術前には術中のリスクを減らすため,CTで三次元的形態を把握することが必要となる。
左室内腔3D画像の作成方法は,以下の通りである。まず,thin sliceデータを3Dアプリケーションで起動する。カット除去で骨や左室以外を除去し,乳頭筋と左室内腔のCT値差を利用して,物体抽出で乳頭筋にマスクのかかっていない左室内腔のVR画像のみを抽出し,別のレイヤーとして保存する。次に,左室内腔のVRマスク操作のエロージョンとリージョングローイングで,乳頭筋までマスクをかけレイヤーを保存する。それらのマルチレイヤーの画像間演算の引き算で,乳頭筋のみのVR画像を抽出する(図3)。左室内膜をわかりやすくするため,マスク操作のエロージョンでマスクを太くしたものと細くしたものを画像間演算で引き算して内腔の境界のマスクを抽出し,左室内膜のVR画像を作成する。右室,左室内膜,左室心筋のVR画像を半透明にし,乳頭筋のVR画像と合わせてマルチレイヤー表示することで,内膜・心筋・乳頭筋の形態を同時に把握できる(図4)。また,術中の透視画像に対応させた画像(図5 a)や,心筋の厚さや乳頭筋の位置を把握するため,左室心筋のVR画像を追加し(図5 b),ボリュームクリップを使って任意の方向からカットした画像(図5 c,d)も作成した。
乳頭筋を抽出した左室内腔3DCT画像は,術前に内腔構造や位置関係を容易に把握でき有用であったと,術医より高い評価を得ることができた。

図3 マスク操作と画像間演算による乳頭筋抽出

図3 マスク操作と画像間演算による乳頭筋抽出

 

図4 左室内腔3DCT画像の各レイヤー

図4 左室内腔3DCT画像の各レイヤー

 

図5 左室内腔3DCT画像

図5 左室内腔3DCT画像

 

まとめ

複雑な解剖や周囲構造物との位置関係を視覚的にわかりやすく描出可能な手術支援画像は,臨床の現場において必要不可欠なツールとなっている。雷神の導入により,臨床医が求める画像の提供が可能となった。3D画像の画質向上には,CT・MR画像の撮像条件の最適化とWSの操作技術の向上の両面に加え,3D画像を作成する技師が臨床医としっかりコミュニケーションを図り,臨床医が何を見たいのかを理解して作成することが非常に重要であると感じている。
撮像・画像作成にかかわる診療放射線技師の責務として,AZE社のソフトウェアや機能を積極的に活用し,より患者利益の高い画像を提供できるよう,日々努力していきたい。

【使用CT装置】
SOMATOM Definition Flash(シーメンス社製)
【使用ワークステーション】
AZE VirtualPlace雷神Plus(AZE社製)

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