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取材報告

2010
伊藤春海先生の呼吸器画像診断学・2010年度公開授業が開催
―貴重な機会に多くの受講者が参集―

伊藤春海先生
伊藤春海先生

公開講義風景
公開講義風景

講義中の伊藤先生
講義中の伊藤先生

休憩時間中も熱心に自習する受講者
休憩時間中も熱心に自習する受講者

  呼吸器画像診断学の権威として著名な伊藤春海先生の公開授業が,2010年12月14日(火),福井大学医学部講義棟合併講義室にて行われた。伊藤先生は京都大学から1999年に当時の福井医科大学教授として着任され,医学科長,医学部長を歴任後,2007年には副学長,2008年からは福井大学名誉教授,特任教授として,呼吸器画像診断学教育に尽力されている。伊藤先生は京都大学時代の約30年間,呼吸器疾患の解剖・病理学的知見と放射線学的知見を統合させる研究に取り組み,呼吸器画像診断学の礎を築いた。その研究の初期段階で蓄積された肺標本の肉眼像,実体顕微鏡像,標本X線像等が基礎になり,世界に先駆けた肺HRCTの開発をもたらした。これに対して1984年のRSNAにおいて,当時日本からの研究に対しては珍しかったCum Laudeを受賞したことでもよく知られている。教授就任前の5年間は,自ら読影した症例の手術に全例立ち会われたのは放射線科医としては異例である。

  福井大学医学部では,すべての講義について学生による評価が行われている。2007年からは高い評価を受けた授業を学内外に公開する試みが開始された。なかでも伊藤先生による公開授業は評判が高く,学内はもちろん,学外からも医師,診療放射線技師,医師以外の大学教員,技術者などが自ら進んで聴講に訪れる。3回目となる今回は,学生が91名(うち5人は臨床実習中の5年次生),聴講者は20名を超え,講義室は盛況だった。

  今回の講義は,4年次生を対象にした選択コースである,「アドバンストコース9:画像診断−基礎から臨床へ〜呼吸器〜」だった。冒頭で,画像診断は福井大学を特徴付けるキーワードであるという説明がなされた。講義の進め方は,胸部写真の成り立ちを,体表解剖,骨性胸郭,肺と順を追って解説するという独特の構成からなり,標本像の観察は特に重視された。講義自体は昼休みを挟んで正味4時間半であったが,休憩時間には豊富な機材や資料(肺標本,骨標本,気管支・肺血管模型,3Dプラズマディスプレイ),さらにシャウカステン上の5枚の正常写真の前から人だかりが絶えることがなく,学習時間は実質上6時間に達していた。受講者全員にはカラーの配付資料が配られ,講義中は2面の投影画像と見比べながらメモを取り,休憩中は資料を片手に標本や胸部写真を見るという状況が終わりまで続いた。講義の終了直前には,学外の先生から講義の感想が述べられたが,その一人は福井医科大学の卒業生ということである。伊藤先生は,設営準備のため午前9時には講義室に入られ,後片付けを終了して退室されたのは午後5時を回っていた。

  伊藤先生は,画像医学教育の体系化にも熱意を持って取り組まれ,福井大学副学長時代に,ITを利用した先進的な画像医学教育の推進を図るプロジェクトを立ち上げた。平成20年度特別教育研究経費として,「統合的先進イメージングシステムによる革新的医学教育の展開」が採択され,わが国で初めてのITによる革新的な医学教育モデル事業が3年計画で開始された。解剖学・病理学・画像医学の相関関係を教育の基本として,福井大学が蓄積してきた画像医学の歴史や知見をベースに,IT技術を駆使した教育システムを構築することをめざしている。医学部の一部ですでに運用が開始され,2011年4月から医学部全体で本格的な利用が始まる予定という。まさに革新的な画像医学教育の効果に大きな期待が寄せられている。

●「統合的先進イメージングシステムによる革新的医学教育の展開」の詳細はこちら


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