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クラウドとモバイル時代に解き放たれる3Dの無限の可能性

【月刊インナービジョンより転載】

■MRI心機能解析─MRIデータより心臓の動きと機能を評価する

心疾患死亡率は年々増加傾向にあり,そのため簡便かつ有用な診断技術へのニーズが高まっている。その中で,MRI診断技術は近年急速な進歩を遂げ,短時間で多岐に渡る心臓の検査が行えるようになり,心臓領域の画像診断において,MRIの果たす役割は大きく変化してきている。

●心臓MRI検査

心臓MRIでは,シネMRI,パーフュージョン,遅延造影,BB(Black Blood)法などの検査が行われている。シネMRIは,超音波検査やSPECT検査等と比べて観察範囲の制限がないこと,任意断面の観察が可能で再現性に優れていることなどから,多くの施設で一般的に撮像されている。シネMRIでは心電図同期法を使用し,左心室全体を約10スライス/20フェーズのデータ収集を行う。最近ではSteady State法を用いて撮像するため,血液と心筋の高いコントラストを得ることができる。
MR心筋パーフュージョンは,造影剤をボーラス静注した後の心筋ファーストパスをダイナミックMRIを用いて撮像する方法である。心筋血流分布の描出と冠動脈狭窄に伴う心筋虚血の観察ができ,心筋SPECTに代わる検査として注目されている。また,MR心筋パーフュージョンは空間分解能の点で心筋SPECTより優れており,心内膜下虚血や多肢病変も明瞭に描出されるという特徴がある。虚血心筋をさらに詳しく評価するためには,安静時の検査に加え,薬剤を投与した負荷検査も行われている。
遅延造影は,造影剤を投与してから10〜15分後にT1強調像を撮像し,梗塞領域を高信号に描出する方法である。これにより,心筋梗塞の部位と広がりを正確に診断することができる。これまでは梗塞病変を高解像度の画像として直接視覚化する方法がなかったため,心電図所見,超音波検査や心臓カテーテル検査における壁運動異常など,主に間接的な情報から心筋梗塞の部位や広がりの診断が行われてきた。生存心筋と壊死心筋の分布を正確に描出することで,梗塞後の局所心筋バイアビリティ(生存能)を直接的に把握できる。
最後に,BB法では血流信号を抑制し,組織の浮腫を高信号に描出することができる。BB法は高速SE法を使用するため,多くの施設のMR装置で撮像が可能である。

●心機能解析

心機能とは,血液を体内に循環させる左心室のポンプ機能を意味する。虚血性心疾患,特に心筋梗塞症例では,患者の予後を決める上で心機能の評価は重要である。例えば,EF(左室駆出率)の値が低下すると心臓のポンプとしての出力が低下し,全身に十分な血液を送り込めなくなる。実際の心機能としては,心臓全体を定量的に評価するEFのほか,EDV(左室拡張末期容積),ESV(左室収縮末期容積),SV(1回拍出量),CO(心拍出量),CI(心係数)がある。
局所心筋の評価としては,壁厚,壁運動,壁厚変化率等を示したBull's eye mapが一般的である。Bull's eye mapは心尖部の断面を円の中央に配置し,その外側へ同心円状に短軸断層像を順に並べ,心基部の断面を最外側に配置するように表示された画像である。例えば,Bull's eye mapで壁運動の低下している部分はレインボーカラーの青色,正常部位は赤色で示され,左心室全体を一目で相対的に評価することができる。さらに,心位相と左心室内腔の容積の関係を表したグラフにより,左心室のポンプ機能を評価することができ,速度に関する指標であるPFR(Peek Filing Rate),PER(Peek Ejection Rate)を算出することで,左心室の拡張能や収縮能などをより詳細に評価することもできる。
MRIによる心機能の評価は,CTやLVG(左心室造影),SPECTと比べても正確な値が得られると言われることから,ニーズは高い。

●心機能解析の問題点

心臓MRIは臨床的に有用であり,特にシネMRIは,多くの施設で撮像されていたにもかかわらず,ソフトウェアを使用して解析されることは多くはなかった。その理由として,従来の心機能解析のソフトウェアでは,心筋の内外膜側の輪郭を抽出したり修正することに時間を要し,煩雑な操作を必要としていたことが推察される。また,心筋内外膜側の輪郭トレースに関しても,操作者個人の影響を受けやすいことから,解析結果の再現性についても課題とされてきた。
心臓MRIが普及し,複数メーカーのMRI装置を使用する施設が増えている中で,各社でシーケンスの名称が異なることから,データの扱い難さにも直面している。

●最適なMR心機能解析とは

上記のような課題を解決し,効率良くさまざまな画像を観察したり,EFなどの心機能を簡単に解析するソフトウェアは,臨床の先生方からも強く求められているところである。
例えばZIOSTATION(ザイオソフト社製)では,煩雑な心筋輪郭のトレースを軽減するためにその精度を向上させるとともに,仮に意図しないトレースがなされた場合でも,自動的に補間処理を行うことで,修正作業の大幅な軽減を可能とした。
シネMRI,パーフュージョン,遅延造影,BB法などで同じスライス位置を比較観察することは有用であり,心臓MRI検査の大きな利点である。ZIOSTATIONのMR心機能解析のビューワはこれらの画像を並べて表示し,フリック(画像をスクロールする時にマウスで軽くはらう操作)することでストレスのない画像観察が行える(図1)。例えば,遅延造影で心筋壊死の部位や広がりを観察しながら,動画再生した短軸・長軸・4腔像で,壁運動の低下を確認するといった観察方法も有用である。新しく追加された「データ選択アシスタンス」機能では,複数シーケンスのデータを一度に読み込み,あらかじめDICOMタグの情報を登録しておくことで,次回から画像の種類,撮像断面を同じレイアウトで表示することができる。また,複数の異なる名称のシーケンスを登録できるため,異なるメーカーのMR装置で撮像されたデータの解析も可能となり,施設の運用内容に柔軟に合わせることができる。
解析結果については,高解像度ワイドモニタに最適化されたレイアウトを備えることで,心機能に関する値だけでなく,壁厚,壁運動,壁厚変化率など複数のBull's eye mapを1画面上に表示することが可能となった(図2)。例えば,動画で短軸画像の壁運動と,Bull's eye mapで壁運動や壁厚変化率などの局所機能を同時に観察することが可能である。解析結果を比較分析することは,読影効率の向上に繋がるものと期待できる。

図1 MR心機能解析のビューワ画面フリックすることで,ストレスのない画像観察が可能
図1 MR心機能解析のビューワ画面
フリックすることで,ストレスのない画像観察が可能

図2 MR心機能解析結果に最適化された表示レイアウト 複数のBull's eye mapを1画面上に表示可能
図2 MR心機能解析結果に最適化された表示レイアウト
複数のBull's eye mapを1画面上に表示可能

●さいごに

本稿では前編として,心臓MRI検査と心機能解析の概要を述べたが,後編ではMR心機能解析ソフトを実際に使用している先生にその有用性をご報告いただく予定である。 (次号に続く)

〔使用機器:ZIOSTATION (ザイオソフト社製)〕

(2009年7月号)

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