ziostation2のCT肺野・気管支測定をCOPDのインフォームド・コンセントに活用
気管支自動抽出、肺気腫ボリューム解析の定量的評価に有効利用
森谷浩史 センター長
財団法人大原綜合病院は、福島県福島市の本院と大原医療センター、大原健康クリニックなどを中心に、訪問看護ステーションや看護学校の運営、医学研究所の開設など幅広い医療を提供している。画像診断センターの森谷浩史氏は、今年4月からセンター長として赴任、グループ内施設の放射線科医、診療放射線技師を統括する役割を担いつつ、大原医療センターを中心に画像診断業務にあたっている。同センターでは、320列のADCTとザイオソフトのziostation2を導入して、地域の医療機関からの依頼検査を含めてオープンなスタイルで診療を行っている。同センターにおける画像診断の現状を、新たに導入されたziostation2のCT肺野・気管支測定の活用を含めて森谷センター長に取材した。
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320列ADCTを中心にした地域に開かれた画像診断センター |
320列のAquilion ONEを導入。森谷センター長(中央左)、
石橋敏幸院長代理(中央右)と放射線科スタッフ
大原医療センターは、病床数195床ながら循環器科、心臓血管外科、脳神経外科などを中心にPTCAや冠動脈バイパス術など高度で専門的な医療を提供する。画像診断機器は、320列のAquilion ONE(東芝メディカルシステムズ社製)のほか1.5T MRI、血管撮影装置などをそろえて診療を支えている。森谷センター長は、2003年から6年間、大原綜合病院に勤務後、仙台厚生病院を経て、今年4月、大原綜合病院グループの画像診断業務を統括する画像診断センターの責任者として赴任した。
「画像診断センターは、これまで本院と分院に分かれていた放射線技術部門の総合的なマネジメントやスタッフの交流を図ることがひとつの目的です。同時に、大原医療センターに導入された320列ADCTをグループ内ならびに地域での診療の中で運用していくことも重要な役割です」
画像診断センターのスタッフは、放射線科医が常勤2名、非常勤数名、診療放射線技師がグループ全体で19名となっている。
320列ADCTの検査件数は1日約30件だが、多い時には10件前後、地域の医療機関からの依頼検査を行っている。医療連携の現状を森谷センター長は次のように語る。
「画像診断センターでは、当初から地域の医療機関からの検査依頼を積極的に受け入れています。当院の方針として、検査だけでなくレポートも当日に作成し、患者さんに直接説明してお渡ししています。そのために、読影室のレイアウトを変更して、3D画像を含めてPACS端末を駆使して、患者さんへの説明を行っています。依頼検査には、当日や予約なしでも検査の空き時間を利用して、優先的に対応するようにしています。院内の検査が滞らないように、バックアップとして遠隔画像診断サービスも利用しています。
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PACS・レポートシステムと連携して、3Dを読影、患者説明に活用 |
ziostation2のCT肺野・気管支測定を診断・患者説明に活用
CT操作室のziostation2で3D画像を作成
同センターでは、ziostation2のネットワークタイプを導入し、VGRクライアントは放射線科内ではCT操作室と読影室兼患者説明室に、院内では脳神経外科の外来と総合医局に設置されている。3D画像は、冠動脈や大動脈瘤などの血管系についてはCT担当の技師が作成し、“ワークスペース”に保存して利用している。放射線科では、PACS、レポートシステム(INFINITT社製)を導入しているが、PACSからワンボタンでziostation2が起動し、3D画像の作成や、保存された3D画像を参照してレポート作成が可能な環境を整えている。
「3D画像は診断はもちろんですが、教育や患者さんへの説明でもわかりやすく、効果的な情報提供を可能にします。その意味で、ユーザーインターフェースが優れていて扱いやすく、必要な3Dデータが素早く作成可能なziostation2は、診療の最前線には必要不可欠と言えるでしょう」
同センターでは、ziostation2の最新のアプリケーションである「CT肺野・気管支測定」を導入して、胸部の呼吸器疾患の診療に活用している。同センターでは、人間ドックや肺がん検診の二次精密検査や、胸部の画像診断を専門とする森谷センター長への紹介などで呼吸器系疾患や肺がんの患者の受診が多い。COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、喫煙を主な原因として発症する慢性気管支炎、肺気腫などを合わせた肺の慢性疾患で、早期発見と予防の取り組みが重要である。
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COPDの診断や患者説明に“CT肺野・気管支測定”を活用 |
同センターでは、COPDの診断を320列ADCTによるボリュームスキャンデータをもとに、ziostation2のCT肺野・気管支測定で解析を行っている。
当ソフトウェアでは、気管支の自動抽出と測定を行う“気管支解析”と、肺気腫の画像所見である低吸収領域(Low Attenuation Area:LAA)の面積・体積を計測する“低吸収領域ボリューム解析”の2つの機能がある。気管支解析では、目的までの気管支のパス作成がワンクリックで行え、CPR、ストレートビュー、短軸像で気管支の壁厚の計測などが可能だ。そのほか、気管支の平均内径、平均外径、平均壁厚、平均壁面積、平均内腔面積、WA%、T/D比の表示が行える。
肺気腫のボリューム解析では、肺のLAAの自動抽出とその割合の計算、ワンクリックでLAV(Low Attenuation Volume)とその割合を解析し、3D画像として領域ごとにカラー表示できる。
森谷センター長は、3Dワークステーション(WS)によるCOPD診断のポイントを次のように述べる。
「CTの3Dデータによる解析のメリットは、定量的な評価が可能になることです。従来は、画像から高度、中等度などの判断を主観的な印象でレポートしていましたが、肺野解析アプリケーションによる計測では、気管支の壁面積比やLAAの割合が客観的な数値で提示されます。ziostation2の肺野解析アプリケーションによって、精度の高い解析を迅速に行うことが可能になりました」
また、LAVをカラーで表示した画像は、受診者への説明で大きなインパクトがあると森谷センター長は言う。「ボリューム解析では、正常部分を緑、肺気腫の部分を青で表示します。客観的な数値も重要ですが、COPDの予防、治療には禁煙が第1歩ですので、自分の肺の状態を画像で確認できることは、大きな動機付けになるのではないでしょうか」
COPDのCTデータによる解析は、以前からWSを使って解析が可能だったが、作業には時間と手間がかかっていたと、森谷センター長は語る。
「気管支の抽出や肺のLAAの表示などは、以前から自分たちでWSを使って作成していました。3D画像は、手作業で作り込めば作成はできますが、時間がかかりすぎて日常臨床の中に取り入れることができません。ziostation2では、レポートを書いている間にバックグラウンドで自動的に抽出や解析が終了します。データの精度も高く、修正もほとんど必要ありません。3Dをルーチンの中に組み入れられることができるのが、大きなメリットだと言えるでしょう」
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診断や教育、患者説明などziostation2のさらなる進化に期待 |
同院では 、Aquilion ONEのダイナミックボリュームスキャンを行っているが、森谷センター長は動態撮影の解析にはziostation2の4D機能が優れていると評価する。
「肺がん症例で胸壁に近い部分の腫瘍に対して、呼吸下で連続撮影を行い、腫瘍が胸壁に癒着しているかどうかを判断します。この連続撮影のデータをziostation2では、4D機能で簡単に観察することができます。4Dでの比較やMPRのスライスを変えて観察することが容易に可能です」
森谷センター長は、以前から肺野領域における3D画像を診療に取り入れ、読影、教育、インフォームド・コンセントに活用している。今後のWSの発展については、小結節の自動診断にも期待を寄せる。
「CADは検診での活用に注目されていますが、読影医の先読みをして注意を促すというような役割にも利用できます。特に、放射線専門医の数が少ない場合など、一次読影の代わりをWSが行うようなところまで機能が向上してくれることを期待しています」
ziostation2の新たな肺野領域アプリケーションの活用が、今後ますます広がることが期待される。
(2011年9月13日取材)
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(インナービジョン2011年11月号掲載)
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