ホーム ザイオソフトNew Horizon of 4D Imagingziostation2 CT/SPECT心臓フュージョンソフトの使用経験—虚血性心疾患のSPECT/CT融合画像診断 ziostation2 CT/SPECT心臓フュージョンソフトの使用経験 虚血性心疾患の画像診断では、64列以上のMultidetector-row CT(MDCT)および解析アプリケーションの進歩により、Coronary CT Angiography(CCTA)での冠動脈の詳細な把握や評価が可能になりつつある。一方で、Single Photon Emission Computed Tomography-Myocardial Perfusion Imaging(SPECT-MPI)は、虚血性心疾患の評価について豊富なエビデンスがあり、有意虚血の有無、予後予測などに有用である。しかし、どちらの診断法にも一長一短があるため、近年、CCTAとSPECT-MPIとの融合画像診断が脚光を浴びている。本稿では、ザイオソフト社製のワークステーションziostation2のアプリケーションである"CT/SPECT心臓フュージョン"ソフトについて、臨床例での使用経験を踏まえて紹介する。
近年、MDCTや解析アプリケーションの進歩で、CCTAによって、冠動脈の解剖学的走行、内腔の狭窄、冠動脈プラークの性状(脂肪、線維化、石灰化等)が詳細に把握できるようになった。カルシウムスコアによるリスクの層別化も期待されている。しかし、高度石灰化症例や不整脈、高心拍症例では血管の評価に限界もある。また、背景に糖尿病や慢性腎疾患等の血管障害のリスクを持つ患者では、主要冠動脈に異常が見られなくても、微小循環障害により、虚血が生じる場合があり、このような症例の評価はCCTAでは困難とされている。さらに、CCTAにて有意な冠動脈狭窄が指摘された症例のうち、明らかな血流異常を呈する症例は半数以下であるとの報告もある1)-3)。 これに対して、SPECT-MPI は虚血性心疾患において、有意虚血の有無、予後予測、治療方針の決定、治療効果判定等に多大なエビデンスを持っている。例えば、負荷SPECT-MPI検査にて得られる血流低下領域のスコアによる重症度判定は、検査1年後の心事故のリスクを層別化することができる4)。また、虚血症例の治療方針決定において、虚血領域の範囲の割合から、revascularizationとmedical therapyのどちらを選択するかを判定することが有用であるとされている5)。しかし、虚血の有無や程度が判定できたとしても、冠動脈の走行は個々で多様性があるため、SPECT-MPIのみでは責任血管を同定することは困難である。また、SPECT-MPIとCCTAの双方を加味して、いわゆるside by sideで診断したとしても、多枝病変や血管走行の複雑な症例、石灰化の強い症例、責任血管が分枝領域の症例等の場合では、責任血管を絞り込むことはできても、確定に至らない場合も多いと思われる6)。 これらの問題点を解決する方法として、SPECT-MPIとCCTAとの融合画像診断が脚光を浴びているが、当院ではziostation2のアプリケーションである、“CT/SPECT心臓フュージョン”を用いて診断を行っている。
このソフトウェアは、異なったメーカー間でのSPECT-MPIとCCTAから融合画像を作成することが可能である。当院のCCTAはフィリップス社製の64列MDCT装置で撮像されるが、SPECT-MPI はGE社、フィリップス社、シーメンス社製のガンマカメラで撮像され、いずれの装置で撮像された画像でも、融合画像を作成することが可能である。他院で撮像されたCCTAやSPECT-MPIも、オリジナル画像があれば同様である。 SPECT-MPI は通常呼吸下の加算像から得られるのに対して、CCTAは息止め下で、かつ、心電図同期によりある位相で得られた静止画像である。そのため、SPECT-MPIとCCTAから得られた心臓の大きさは異なり、融合画像を作成する際に座標軸を正確に位置合わせしたとしても、どうしてもズレが生じてしまう。そこでこのソフトウェアでは、CT画像から得られた心筋にカラーマッピングする際に、SPECT画像上の最大値のみを左心室の内腔中心から放射状に投影する放射変換法が採用されている(図1)。
作成されたCCTA像と、負荷時あるいは安静時のいずれか一方のSPECT-MPI 像の融合画像を作成すると、同時に他方の画像も一度に融合画像が作成されるため、短時間で画像処理を行うことができる。また、負荷時と安静時を同時に計算処理させることができるだけではなく、Reversibility(可逆性)のカラーマッピング像(図2)も表示させることができる。今後は、Washout mapの表示も予定されている。
SPECT-MPIにて有意虚血を指摘された症例において、冠動脈狭窄が多枝病変である場合、責任血管の同定において、しばしば判断が悩ましいことが経験される。図3の症例では、SPECT-MPIのBull's eye 表示にて、前壁および側壁基部に虚血が示唆されるが、CCTAとのside by sideの評価では責任血管を確定することは困難である。しかし、負荷時、安静時のSPECT-MPI/CCTA融合画像を比較することで、第2対角枝領域と前下行枝領域、および回旋枝領域の虚血であることが示唆される。Reversibility表示では、虚血領域と責任血管の関係を直感的に把握することができる。
また、SPECT-MPIによる虚血の評価において、ガンマ線の吸収減弱による影響(詳細は割愛する)により、正常血流領域においても、一見、血流が低下しているように見える場合があり、診断に苦慮するケースがある。そのために、近年、SPECT/CT装置による減弱補正を行った画像での診断の有用性が言われている。図4の症例は、高度石灰化、ステント挿入例であり、SPECT-MPIとCCTAとのside by sideの評価では責任血管の同定に苦慮し、融合画像が作成された。ここで問題視したいことは、吸収補正なしとありでの融合画像では、視覚的印象がずいぶん異なり、それぞれにおいて、負荷、安静時の画像のみで、虚血領域と責任血管を同様の結果として導き出せるかということである。これに対して、Reversibility表示の融合画像では、減弱補正の有無にかかわらず、同様の虚血領域を示しており、複雑な範囲の虚血症例でも容易に評価が可能となる。故に、虚血範囲と責任血管の同定に関しては、減弱補正ができないガンマカメラの施設においても十分可能になるものと考えられる。
これまで、CCTAとSPECT-MPIの融合画像診断は、限られた施設での特別な検査であった。しかし、ガンマカメラあるいはMDCTのいずれかしかない施設でも他の施設と連携により、ソフトウェア上で簡便に、かつ短時間で高精度な融合画像診断が可能となる。ziostation2では、わずか数クリックで融合画像を作成することができ、また、カラー表示も滑らかで、SPECT-MPIのBull's eye との比較も違和感がない。そのため、普段ワークステーションを触ることが少ない医師にもなじみやすい。無理に高価な撮影装置を設置しなくても高次医療施設と同等の診療を行うことが可能となる。融合画像診断が今後広く普及していくことで、より正確な虚血性心疾患の診断と治療に結びついていくことを期待したい。
◎略歴 (インナービジョン2011年9月号掲載) |
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